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育児休暇、NZの場合。

先日、あるキャプテンと飛んでいて、こんなことがあった。

そのキャプテンは、昔、エアージャパン*で働いていて、ある日本人のFOと飛んだ時のことを話してくれたのだった。

*ANAが外国人契約パイロットを雇うために作った会社。全日空の社員ではないが、ANAのB767*を飛ばしている。B767と言えば、先日武漢へのチャーターもナナロクだったね。古い飛行機。

「タカ(仮名)ってやつと飛んだんだけどさ、その日、なんかそわそわしてて、どうしたのって聞いたら『今日、子供が生まれるんだ』って言うんだよ!信じられるか。お前は今こんなところで何をしているんだって叫んじゃったよ。」

NZの場合

別の日に、ある用事があって、マネージャ(パイロットの上司)訪ねた時のこと。

その女性マネージャは、つい最近出産をして復帰してきたばかりだった。夫もパイロットで、同じ会社で働いている。自然に子供の話になり、育児休暇はどうなっているのかと聞いたのだった。

「Primary Carerは、22週間、その配偶者は2週間の有給休暇が取れて、その後は無給になるけど1年間まで延長が認められているのよー。」

・Primary Carer(PC)とは、「主たる育児責任者」みたいな感じ。通常は母親がなるが、申請すれば父親でもいいし、事情と実態があれば祖父母もなれる。これにより、誰が22週間の休暇になるかが決まる。
・PCが取る22週間の休暇は、正確には有給休暇ではなく、国に給付金を申請する形になる。一定のキャップはあるので、稼ぎが多い人は、所得が下がることもある。
・反対に、配偶者の2週間は有給休暇として会社が給料を支払う。
・1年の休暇の延長は、PCの最初の22週間(5.5ヶ月)を差し引くので残りは6.5ヶ月。PCと配偶者がシェアしてもいい。
・1年間の育休を取っていなくなることを理由に、会社がその従業員を解雇することはできない。「そんなに休んだら席がなくなる」は法律で禁止されている。

法律に書かれていることで、休みを申請したら会社は必ずそれを受けねばならない。だから、事務的な調整はあるにせよ、休暇が取れないということは原則としてない。子供の誕生は、その人にとって最も大事なイベントだから、妻が出産している時に、自分が働いているなんてことは考えもしない。何しろ、首相が就任後いきなり育休をとる国だ。

でも、考えてみれば、至極当たり前のことではないだろうか。子供は、その人にとってはもちろん、国にとっても宝だ。子供がいなくなれば、その国は滅びる。そんなことは自明すぎるほど自明だから、子供を持つことは祝福されこそすれ、蔑まれることなど理屈が通らない。仕事?そんなのは周りの人が助ければいいだけだ。サポートが必要な仲間に手を差し伸べるために、チームで仕事をしているんだから。

働く国を選ぶ時代

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