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おれはパイロットに向いているのか問題

訓練の進捗がうまく行かなかったり、何かミスを続けてしたりすると、悪魔がささやいてくるものだ。

「おれって、パイロット向いてないのかな。」

誰でも、一度は経験する、のかな?知らんけど、私はずっとそういう感じだった。

向き、不向きとは何か

結論から言えば、向き不向きを考えることは、時間の無駄だ。なぜなら、向いているかどうかは、文脈に依存する、極めて主観的であいまいな概念だから。ある価値観のもとでは、高く評価されるものが、別の価値観のもとでは低く評価されることもある。

例を出そう。

雲や視程が悪いときでも着陸できるようにするのが計器進入(ILSとかVORとかRNAVとかいろいろ種類がある)で、通常は進入してきた方向と同じ向きに着陸する。まぁ、当たり前だ。ところが、風向きやその他の条件によっては、そこからサークリングと言って、着陸する手前で滑走路の横を飛び去り、ぐるっと回って反対向きに降りることがある。ぐるっとまわるからサークリングアプローチという。上から見ると、こんな感じ。

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天気が悪くて走路が見えない状態でも、サークリングアプローチは可能だが、地表にぶつからないように下がっていい高度の限界が決まっている。これをMDHという。

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つまり、雲がMDHすれすれちょい上にないと、サークリングアプローチは成功しない。滑走路が見えないからだ。これはサークリングに限らず、どの計器進入方式でも、MDHより下に雲がべったりと張っていたら、原則としてアプローチしてはいけないことになっている。

逆に言えば、MDHより雲が上なら、成功の確率は高くなる。とはいえ、サークリングアプローチの難易度は高い。地表近くを、目隠しして、新幹線の最高速度に匹敵するような速度でぶっ飛ぶのだ。特に、雲が低くてMDH付近で飛行機をコントロールしなければならない場合、パイロットへのワークロードは大変なものだ。

だから、サークリングは操縦技量の巧拙が出やすい「お題」だともいえる。タイプレーティングでも、サクッとやる人もいれば、苦労する人もいる。苦労する人(私のことですね)は、訓練中にその巧拙を見せつけられると、自分の下手さに失望して、悪魔のささやきに耳を貸してしまうのだ。

「おれ、向いてないのかな。。。」

どっちがいいパイロットか

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