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案ずるがよりも産むが易し【父親版】

「子供を産みたいけれど、いつ産もう・・」

20代後半から30代、就職して数年立った女性。そこそこ責任ある仕事を任せられるようになり、仕事が楽しくなってきたところ。もしくは、将来のためにキャリアを築いていきたいところ。

そんな時に、多くの女性が持つであろう悩みが、出産時期だ。妊娠すると、産前産後休暇から、育児休暇を含めて、1−2年の仕事のブランクができてしまうので。

そんな悩みに対して、よくかけられる助言がある。

「案ずるがより産むが易し」

子供なんて産んでみないとわからないから、産んじゃいなよ。仕事やキャリアも、産んでみてなんとかすればいいじゃない。

ということである。

前置きが長くなったけれど、「案ずるがより産むが易し」。この言葉は女性だけではなく男性にも贈られるべきだと思う。

💫

夫と結婚してすぐに子供が欲しかった私。けれど、彼は子供は欲しくないと言い続けた。一応、「まだ欲しくない」というニュアンスだったけれど。

彼は、職場にいる4児の父親が日々大変にしているから、父親になりたいとは思えないと言っていた。冗談めかしてだけれど、「子供が生まれたらもう自由はなくなる。人生の終わり。」なーんて言っていたのだ。

そんな彼を数年かけて説得した。子供は自分の負担にしかならないとガチガチに固まっていた彼の固定観念を、ゆっくりゆっくり溶かしていく作業。

その間実母と義母も巻き込んだし、「どうして子供が欲しいのか・どうして今なのか」をまとめてプレゼンテーションしたくらいである。

最終的には、彼もやっと子供を持つことにほんの少しだけ前向きになった。私・実母・義母に丸め込まれた、という方が近いのかもしれないけれど。

⭐️

そこそこ長めの妊活期間、その割にはそこそこ安定した妊娠期間を経て、私は息子を出産した。

息子には、そこそことは言い難い重めの心臓病がある。

生まれる前からお腹の中にいる息子には心臓病があるとは聞いていたけれど、その病名は比較的軽めのものだったし、胎児エコーをしてくれた先生たちも、そんな雰囲気を出していた。

だから心臓に病気があるとは知っていたけれど、そこまで大きく不安にならないようにしていた私たち。

息子が生まれてみたら、当初言われていたのよりもずしんと重めの病名を告げられた。人工心肺を用いた長時間の手術を受けなければ、息子は生きられない。もちろん、命を脅かす高いリスクが付いてくる。

この話を心臓外科医から聞いた時、夫は、泣いた。

「前は、子供は欲しくないと思っていたけれど、今は違うのに・・」

この時、息子は生後数日だったけれど、既に夫には、息子の父親としての気持ちが確立していたんだと思う。

🌟

幸運なことに、息子の心臓手術は成功。多くの医師や看護師の助けをへて、息子の命は繋がった。そして、生まれてから2ヶ月半という長い長い入院期間を経て、息子は夫のいる自宅へ帰ってきた。

コロナウィルスの影響で、入院中、ほとんど息子に会えなかった夫。息子が自宅に帰ってきてからの、息子への溺愛ぶりが、何ていうか、一言で言うとヤバイ。

愛おしいものを見つめる、とろけるような目をして、息子をあやしている。こんな愛に溢れた目、私に向けられたこと、あったかなあ?

息子が大声で泣き始めると、在宅勤務で働いている部屋から飛び出してきて、息子を私から奪って、抱っこする。息子を泣き止ませるのは、私よりも夫の方がもう数段レベルが上だ。

そして、仕事が終わると、すぐに息子のところへやってきて、息子とイチャイチャし始める。この時は、唯一自分の時間を取れるありがたい時間なのであるが、二人の蜜月ぶりを見ると、時々ちょっと妬いちゃう私。

今日、こんな夫の姿をまえに、数年前に「子供はいらない」と言っていた夫のことを思い出した。ああ、頑張って子供が欲しいと説得してよかったな。プレゼンまでしたかいがあったな、と。

そう、夫こそ「案ずるがよりも産むが易し」だったのだ。男の人も、女の人と同様、考えすぎず、子供を産み育てることに前向きになって欲しいな。




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