「価格メカニズムによって需要と供給は均衡する」という経済学の嘘

大学時代に理科系専攻過程から文転し、文学部社会学科に進みました。

その時に初めて参加したゼミで価格はどのうようにか決定されるかというテーマを振り当てられました。

すべてのモノ、サービスの価格=原価+利益となる。つまりモノ、サービスの生産において仕入れ価格<販売価格となるプロセスが続くことになるが、それでは循環するシステムとして破綻するのではないかと考えて、わけがわからなくなりました。結局、そこで期待されていたことは、ゼミのテキストであった指導教官の本の中の価格の章において説明されていた、従来の価格には自然環境破壊などの外部コストが含まれていなかったがこれからはその外部コストも算出して価格に含めなければならないということだったことが、当日、わかりました。

それはその通りだとは思いましたが、自分の価格に関する疑問はその後もずっと解消されませんでした。

ダグラスの『社会信用論』においてやっと自分の疑問が解消しました。

「(1)  小売 価格 の 総和 は、 製造 から 販売 に いたる 工程 と 異なる、 まったく 別 次元 の 工程 によって 作り出さ れ た 購買力 によって 買い 支え られる か、 あるいは 値崩れ する かの どちら かで ある。 これ は 貯蓄 と いわ れる もの によって 悪化 する が、 現時点 において は 貯蓄 とは 無関係 で ある。   ヨーロッパ や アメリカ では、 この 事実 を 説明 する ため に 多大 な 努力 が 費やさ れ、 理論 提唱 や 説明 も なさ れ て き た が、 最近 まで その 正し さが 認め られる こと は なかっ た。 アメリカ で 出版 さ れ た H. B. ヘイスティングス の“ Costs and Profits”( 1923) の 序文 には こう 書か れ て いる。  
「 会計 ルール に 則っ て 分析 する と、 工業 品 の 小売 価格 水準 は、 所得 から 得 られる 購買力 を はるか に 上回っ て いる。」  
つまり、 財務 や 事業 の あり方 の 結果 として、 不況 が 繰り返さ れ て いる という こと だ。  
「 言うまでもない が、 現代 の 経済 問題 について、 その 核心 部分 に 迫っ て いく ため には、 新しい アプローチ 方法 が 重要 と なる。」

(2)  銀行 融資 を通して、 賃金 給与 にも、 配当 にも、 そして 過去 の 売り上げ にも 関係 の ない 購買力 や 通貨 が 創造 さ れ て いる。 銀行 融資 が なさ れ なけれ ば、 現行 の ビジネス システム は 瞬時 に 崩壊 する。  
この 手法 を 続け て いく と、 産業 そのもの が 銀行 の 抵当 に 落ち て しまう。 いかなる 場合 において も、 世の中 の 購買力 の 大部分 を 創出 し たり 崩壊 さ せ たり できる よう な 途方 も ない 権力 を、 無責任 な 私人 に 授ける べき では ない。 当たり前 すぎる ほどに 健全 で 公正 な 良識 と いえる が、 この よう な 良識 的 考察 が 批評 の 域 を 出る こと が ない 限り、 現行 システム に 抜本的 改革 が もたらさ れる 可能性 は 低い。」

クリフォード・H・ダグラス. 社会信用論 (Kindle の位置No.1121-1141). Kindle 版.


需要と供給は価格というメカニズムを通しては均衡しない

銀行の貸し出しによる購買力の恣意的な供給で「需要と供給は価格というメカニズムを通して均衡している」ように見えている


とダグラスは語っていると理解しました。

そしてこの説明にぼくは納得します。

現在の負債貨幣システムは、本来、需要と供給の調整を行う経済の公共インフラであるべきお金を、私的動機で恣意的に創造したり、破壊したりしています。

また負債貨幣、利子付き貨幣であるために、GDPの無限成長がデフォルトで組み込まれたシステムです。

その負債貨幣システムの問題を解決するために、戦前、提案されたのがシカゴ大学経済学者から提案された「シカゴプラン」であり、ノーベル化学賞受賞者フレデリック・ソディや米経済学会会長アーヴィン・フィッシャーから提案された「100%マネー」であり、それを現代に蘇らせた山口薫アンカラ社会科学大学教授の「公共貨幣」です。

公共貨幣論では触れられていない負債貨幣システム内の需要と供給の問題についても、ダグラスは論じていています。

ダグラスの語る「公共貨幣」と「国民配当」によって、次の経済システムをデザインできるのではないかと考えています。

関曠野さんの以下の講演録も、ダグラスの社会信用論に依拠して、公共貨幣と国民配当によってお金の公共化と民主化を行うことについて論じています。
http://bijp.net/sc

僕自身、ダグラスの社会信用論を勉強中なので、順次、紹介していきたいと思います。

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