精神的文化と物質経済の統合へ

「ダグラスは単にマクロ経済的合理性の視点でベーシックインカムを提示をしたのではありません。彼は雇用による所得、働かざるもの食うべからずという思想を正当化している人間観、労働観からの転換を主張しました。これが大変面白いユニークなものです。彼は技術者として生産と労働の現場を直に体験し、よく知っていました。そして自分の体験を踏まえて、生産はほとんど道具とプロセスの問題で、人間の個々の労働が生産に果たす役割は極めて小さいと言っています。近代の労働価値説は生産の現場を知らない人間が考えたものです。社会が文明化して労働分業の体制が確立すると生産は道具とプロセスが中心になってくる。ダグラスはロック以来の労働価値説を現場で働いたエンジニアとして簡単に片付けてしまいました」


「富の生産は文明が蓄積してきたその遺産を土台にしてなされていることを指摘しています。富の生産は、過去の人類文明の遺産の蓄積に依拠し、それにほんの少し新しいものを付け加えているに過ぎない。そういう意味ではすべての人間は、古代以来の文明の遺産の相続人であり遺産の正当な相続人として配当をもらう権利がある。ベーシックインカムは文明の継承者の名誉ある権利です。これによって文化の論理と歴史の論理と経済の論理が統一されることになる。人間は文化を持ち、歴史がある。それ故に経済があるわけです。このようにダグラスの経済思想は、精神的文化と物質的経済の二元論を突破してしまっています」

我々人類はここまで来てることをみんな自覚しよう。人類ってすごい。こんな古い世界に縛られてる場合じゃない。

関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたのか』


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