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活版印刷のすべて(わたし調べ) 第2話

活版印刷ってなに?

活版印刷とは、金属製の活字を組んで原稿を作り、その活字にインキを乗せて、圧力をかけて押し当てて印刷するアナログ的な手法です。

活版印刷は、印刷技術としては「凸版印刷(とっぱんいんさつ)」というジャンルの一種で、凸凹した図案の凸の部分にインキを乗せて印刷します。小学校の図工の授業でやった版画や、さつまいもを彫って作る芋判なども印刷原理としては一緒ですが、活版印刷は、ひとつひとつ独立した活字(文字)を組み合わせて一つの原稿を作るのが特徴です。活字が独立しているので、違う原稿でも同じ活字を使うことができ、活字を組み合わせれば、色々な原稿や作品を作成することができるのです。

活字

歴史的には活版印刷が普及することで、大量に同じ文章が世の中に出回るようになり、聖職者や富裕層だけが持っていた知識が、広く一般庶民に知れ渡るようになりました。これがルターの宗教革命や、後の産業革命に繋がっていくのですが、このお話はまた別の特集で。

印刷技術が1980年代からデジタルに移行するにつれて、活版印刷は主流を奪われてしまいましたが、当時は新聞や雑誌など、あらゆる印刷物に使用されていて、情報や娯楽に深く結びついていました。わたしは、よく古本屋さんを物色しますが、そこで見る昔の活版印刷で刷られた本を開くと、その活字の美しさで本を買ってしまうことがしばしばあります。量産時に時折発生する墨溜まりやかすれ、少しだけ生まれるムラなど、実にアナログ的で味わい深く、活版印刷に惹かれる魅力でもあります。(もちろん、きれいに刷られたものが正しい印刷だと思いますが、想定できない仕上がりになるのも、アナログならではだと思っています。)

活版で刷られた本

まだ活字を集められていないので、いまのわたしは主に、自分で起こしたデザインを樹脂版や亜鉛版などの版型にして印刷しています。(活版印刷とは活字を用いた印刷のことなので、厳密にいうとわたしの手法は活版印刷ではなく、凸版印刷の部類に入ります。)


いまは、印圧の凸凹した手触り感が活版の魅力だと思われる方が多いかもしれませんが、当時は活版印刷かどうなのかわからないくらい、滑らかでフラットな刷り上がりが美しいとされていて、裏にぼこっとした活字の跡が出てしまうのは、よくないことだとされていました。しかし、印刷の主流がデジタルになった現代では、物理的な手触り感が人気なのもわかる気がします。(analographicでは、そんな印刷のご要望にも添いたいと考えています。)そして、金属に圧力をかけて印刷することでできる、エッジが立った力強い活字の並びが、なによりの魅力だと思います。

活版印刷の基本原理がわかったところで、次回はそのプロセスについてです。


つづく


長いのに読んでくれてありがとうございます。