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ダイエットで自分は変わる(26)監獄の誕生

面倒だ。
真の野生であれば祈ったり葉っぱを燃やしたりなど何かしら呪術的な力で治癒してしまうはずであるが、現代の日本では何か身体的な問題が出れば病院で処置するのが一般的である。僕も若くないのでちょっとしたことのため一泊入院で手術することになった。ふだんは医療保険を払うだけで使う機会もなく、ちょうどよかったのかもしれない。人生で初の入院を経験する。

主治医からは一泊2食の(よりによって)ごはん食1900kcalの処方が出ていたが、アニマリストであることを説明(アニマリストということばは遣っていない、当然だが)し、了解を得た。というか、おまえいろいろと段取り悪いぞ、と心に思いながら学生だったころの彼を思い出そうとしていたが記憶になかった。結局、執刀は彼の上司が担当することになり、安心はしたものの少し残念な気持ちも残った。

病院は一日2食のアニマリスト、という想定ははなからないらしく、栄養管理士から看護師、会計事務員にまで知れ渡るのに半日も要することはなかった。こんなことは、かつて国際線で気まぐれにオーダーしたある宗教的制限食のせいで、当局に徹底監視される事態を味わった以来である(本物のエージェントというのを初めて見た)。

ただ僕は「ごはん」そのものよりもプラスチックの容器で供される食事を想像しただけで食欲が失せていたのだ。時節がら食中毒のリスクを避けて欲しいとの要請を受けて、水道水ではなくペットボトルの水、パックされた豆乳・鶏肉など、パーケージ済みの食品をメインに持ち込み、生ものは素焼きナッツとプロセスチーズだけにした。もしも長期に入院となったら対応できないだろう。アニマリストが閉じこめられたら、それは死に直結する。やはり身体を大切にして病気に罹らないことが何よりも重要である。

アニマリストです、と窓口で伝えるだけですんなり通る社会を目指して。

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