【ポケモンSV ゼロの秘宝】DLC後編『藍の円盤』の考察
本記事は、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のDLC『ゼロの秘宝 後編・藍の円盤』の考察を目的とした記事です。
記事の流れとしては、キャラクター、ストーリー、ポケモンの順番で考察していきます。なお、スター団のイベントについてはこの記事では扱いません。
スクショましましかつ多めの記事です。あと、長いですので目次から興味のある項目へ飛ぶことをオススメします。
以上、前置き終わり。
本編どうぞ。
■キャラクター│ブルーベリー学園とブルベリーグ
1. シアノ
『後編・藍の円盤』はクラベル校長からの電話から始まる。ブルーベリー学園の校長・シアノから交換留学生として主人公をブルーベリー学園へ迎えたい、との話を受け、アカデミーの校長室に集まるよう伝えられる。
そうして向かった先の校長室……ではなくエントランスホールで出会うのがブルーベリー学園のシアノ校長先生である。
彼は主人公が交換留学生として指名された理由をゼイユから推薦されたからであると語る。
そして、舞台はブルーベリー学園へと移る。
冒険の舞台となるブルーベリー学園はエントランス以外の学園のほとんどが海中に沈んでいる海中学園である。何故海中にあるのかというと、海底で運用している資源開発プラントに併設されているからであるらしい。
また、ブルーベリー学園の学校名の由来は、ブルーベリーの花言葉『実りある人生』からとったそう。
ちなみにシアノ校長とクラベル校長の関係は大学院時代の先輩、後輩であるらしい。シアノのクラベルの呼び方「ベルちゃん」や、クラベルのシアノに対する態度や、敬語などからおそらくシアノが先輩であると思われる。
他にも小ネタとして、ブルーベリー学園は地下鉄と海中エレベーターを経由して登校するらしい。
この地下鉄とはブルーベリー学園がイッシュ地方にあることからおそらくバトルサブウェイであると思われる。
これは全て妄想だが、主人公はパルデアから飛行機でフキヨセシティまで行き、ライモンシティからバトルサブウェイのブルーベリー学園行きの地下鉄に乗って、学園まで来ているのではないだろうか?
また、海中エレベーターと言えば『ブラック2・ホワイト2』から登場したマリンチューブを彷彿とさせる。おそらくブルーベリー学園の建設にマリンチューブで培ったノウハウや技術は大いに役立っただろう。
そして、驚くべきことにシアノ曰く、ブルーベリー学園はテラスタルのメカニズムを制御できるシステムを発明した、とのこと。
主人公とタロが勝負した後、場所はブルーベリー学園内部のテラリウムドームへと移る。
テラリウムドームはポケモンが過ごしやすい環境が人工的に作られており、壁や天井をプロジェクターで映しているため、海の中とは思えないくらい鮮明に空を再現している。
テラリウムドームはキューブ状の物質で4つのエリアに区切られ、それぞれが
亜熱帯のサバンナエリア
南国のコーストエリア
渓谷のキャニオンエリア
雪国のポーラエリア
と、多彩な自然環境が作られ、エリアごとに生息するポケモンも異なる。
そして、パルデアやキタカミの里と同じ様に、ここテラリウムドームでも野生のテラスタルしたポケモンや結晶が生成される。
その理由こそ、テラリウムドームの中心に吊り下げられたテラリウムコアである。この中にはパルデアで採れた"とある物質"が溶け込んだ液体が入っており、ここからテラスタルのエネルギーを照射している。ドームでテラスタル要素が活発な理由がこれである。
ちなみに"とある物質"とはブライア曰く、パルデアの土やてらす池の水である。
また、テラリウムドームの設計をしたのはシアノであり、すんごいお金がかかったらしい。
2. ブルベリーグ
・タロ
桃太郎だの、黒幕だのネット上で色々と言われていた彼女であったが、実際はそんなことはなかった……が、しかし、まことしやかに囁かれていたとある説はまさかの的中するという驚きの展開が待ち受けていた。
その説とはタロ=ヤーコンの娘説である。
根拠として挙げられていたのは、
・両方芋の名前
・髪飾りがヤーコンの帽子っぽい
基本的にこの2つだったので、個人的には与太話だと思っていた。しかし、タロの父はイッシュのジムリーダーであり、タロがドリュウズを手持ちに入れていることで、タロ=ヤーコンの娘説はほぼ的中した。
"ほぼ"といったのは出身地がヤーコンのジムがあるホドモエシティではなく、ライモンシティであるからである。
・ カキツバタ
ゼイユからの呼び方がやたらと多い男。
以下、ゼイユによるカキツバタののしり集。
やたらゼイユからムカつくやつと言われているが、一体カキツバタはゼイユ相手になにをやらかしたのだろうか?
人の懐にいつのまにか入り込み主導権を握るタイプであろうカキツバタと適度な距離を保ちたいタイプであろうゼイユは、単純に性格の面で相性が悪いというのもあるだろう。だが、それにしたって信用なさすぎではないだろうか?
ブルーベリー学園の受付の人からも発言の信憑性を疑われているので、もしかするとカキツバタは日常的にウソを付く癖があるのかもしれない。
だが、それはそれとしてカキツバタとゼイユの間に何があったのだろうか、気になる……。
ストーリーでは、スグリの暴走を止めるため、主人公をブルベリーグに引き込み、主人公にスグリを負かしてもらおうとする。
普段はあらゆることに対して無気力で面倒臭がりであるが、部内やスグリ個人の問題に関してはものすごく入れ込んで行動していた印象があるので、ひょうひょうとしていても実はスグリに対して内心めちゃくちゃ怒っていたのではないだろうか。だからこそ、主人公がスグリを負かした後、意地の悪い言動をしたのかもしれない。
また、3回留年している理由について、本編では特に語られていないが、特別講師のハッサクとカキツバタの会話から推測することができる。
会話から、カキツバタの祖父はどうやらソウリュウシティのジムリーダー・シャガであることがわかる。実際、カキツバタはソウリュウシティ出身であるとマップ説明文には書かれている。
だが、シャガといえばアイリスを後継者に選んでおり、アイリスからは「おじーちゃん」と呼ばれていたりする(『ブラック2・ホワイト2』より「おもいでリンク」を参照)。
なにか後継者争いのようなものがここから垣間見えるような気がするが、もしあったとしたらそれはカキツバタにとって辛いものかもしれない。実の孫であるカキツバタを差し置いて、竜の里から連れてきた見ず知らずの少女が後継者に選ばれ、そして彼女は最終的にイッシュのチャンピオンとなる。
カキツバタとアイリスの年齢差はわからないがアイリスが年下だとしたら、カキツバタは才能というものをまじまじと見せつけられることになっただろう。それこそ無気力になってしまうくらいに。
・アカマツ
近年のポケモンで稀に見る真っ直ぐで素直な性格の子であった。
スグリと主人公の因縁、そしてカキツバタの企みに対して、「そーゆーの! マジで めんどくさい! 言いたいこと あるなら 直接言えっての! やれっての!」と言い放ち、これでもかと真っ直ぐな性格の発言をする。
細かいことを考えるのが苦手なようで、戦いたいから戦う、勝ちたいから勝たせてもらう、と発言し、ひたすらに素直な一面を見せる。
しかし、そうは言いつつも意中の相手にはそうはいかないようで、タロに対しては話したいことを話せない様子(こういうところがかわいい)。
これは余談だが、アカマツと戦うサバンナスクエアはフライパンの形をしており、鍋部分の下にはテラピースほのおが落ちている。
・ネリネ
見た目によらず、スグリが大好きな子。
ゼイユの弟だから気にかけてるのかな……と思いきや、自分がスグリを救いたいという。
ポケモンの強さは思いの強さといい、スグリへの気持ちで負けた事を悔しがる。
機械的な言動であるのに自分ではスグリを救えない、想いの強さで負けてるとわかった時の「くやしいな」と言う言葉は凄く感情的で、スグリを思う気持ちが一際輝いていた。
そんな救いたい気持ちをネリネは主人公へと託す。
スグリが主人公に負けたときもネリネはスグリを案じていた。
一人だけスグリのことを見るネリネ。
この娘、スグリのこと大好きなのでは?
自分でもよく分かっていないだけでめちゃくちゃスグリのこと好きなのではないだろうか?
友達の弟だからと言うには気持ちが大きすぎる気がしてならない。
さらにはエンディング後、以前のスグリに戻ったことが嬉しすぎて飛べる丸薬を作りすぎるというドジを踏んでしまう。
ここまでをまとめると、ゼイユの弟だから気にかけてるのかな……と思いきや、自分がスグリを救いたいと言うし、スグリへの気持ちで負けた事を悔しがるし、スグリ敗北時に一人だけスグリの事を見ているし、スグリが元に戻って嬉しさのあまり丸薬を作り過ぎるドジを踏む子である。
やはり、自分でもよく分かってないだけでこの子、めちゃくちゃスグリのことが好きなのではないか……?
アギャッスさんっていうのがかわいい。
■ストーリー│謎多き「ゼロの秘宝」を巡る冒険
1. 打倒スグリ ―ブルーベリー学園篇―
ブルーベリー学園でのストーリーは一言で言うと「スグリが挫折する話」であった。
カキツバタにブルベリーグに誘われ、四天王を撃破し、チャンピオン・スグリを倒すというのが、大体のあらすじである。
ストーリー中で注目したいのが、カキツバタに誘われて食堂に行き、主人公、四天王、チャンピオンが一堂に会する場面と、主人公がスグリを倒す場面である。
まず、食堂の場面から。
カキツバタから食堂に誘われ、ブルベリーグへ参加することを承諾すると、四天王の3人とチャンピオンがやってくる。
どうやらカキツバタは話がある、とスグリを呼び出していたようで、メシでもどうよ、とスグリを食事に誘うが、スグリはくだらないと一蹴する。
(スグリがカキツバタを見下していて、日常的にこのようなことをカキツバタに言っているということが分かるシーン)
カキツバタはスグリの煽りにひょうひょうと返し、スグリが大好きな友達が隣にいることで煽り返す。(ここの主人公の表情、悪意の欠片もなくニコニコしていて眩しい)
主人公がいることに驚くスグリに対して、交換留学で来ていることを告げるカキツバタ。そして、その確認をタロに聞くスグリ。(スグリがカキツバタの言うことをまったく信用していないことがよく分かるシーン)
さっき煽られたことを根に持ったのか、さらに主人公との仲を強調してスグリを煽り返すカキツバタ。
ここまでの会話の流れでスグリからわかることは
カキツバタを信用していないどころか見下している。
主人公も再会には驚くが自分に対する前科(ゼイユと一緒に鬼さまと合ったことなどから仲間外れにされたこと)があるから信用していない。
タロには一定の信頼を置いてる。
各キャラへの接し方からこれらのことが推察できる。交換留学のことをこの場に本人がいるにもかかわらず、タロに確認を取るあたり未だにスグリは主人公のことを「嘘吐き」だと思っていると考えられる。一方で、タロには一定の信頼を寄せているようで、すぐにタロに確認を取っている。
次に主人公がスグリを倒す場面。
主人公がスグリを打ち負かすと、スグリは現実を受け入れられない様子を見せる。
観衆はスグリが負けたことで興味を失い去っていき、スグリは頭を抱え、動悸・息切れを起こす。
(観衆が去っていくところがネモとのラストバトルと対比になっている)
アカマツが素直な感想を言い、タロに空気読んでと咎められると、カキツバタがスグリへと近付いて行く。
そして、耳元へ近付き、「元チャンピオン」と囁く。
(先述した通り、実はスグリに対して内心めちゃくちゃ怒っていたからこそのこの言動なのではないだろうか。スグリに日常的に煽られていたカキツバタからの意匠返しであり、因果応報でもあり、目を覚まさせるための一言でもあるのだろう)
カキツバタは主人公にチャンピオンになったお祝い品としてマスターボールを渡した後、スグリに勝ちにこだわりすぎて自分の首を絞めていると諭す。
「……けない」と呟くスグリに「はい?」と聞き返すカキツバタ。今度こそ勝つと呟くスグリに主人公は声をかけるか、かけないかの2択を迫られる。
(この2択は個人的にストーリーが分岐するのではないかと思うほどの圧というか、重要度を感じた。ポケモンだから一本筋のストーリーだろうとは思いつつもこの分岐には底しれぬ圧力を感じ、しばらくSwitchを置いてしまった)
「声をかける」を選択した場合、スグリは泣き出すことになる。(主人公もこれには困り顔である)
2. 踏み出す勇気を ―エリアゼロ篇―
エリアゼロでのストーリーは一言でいうなら「スグリが一歩踏み出す話」である。
ブライア先生のエリアゼロ探索に同行し、スグリとゼイユと一緒にエリアゼロの最深部・ゼロの大空洞を冒険するというのが大体のあらすじである。
ストーリー中で注目したいのは、やはりゼロの秘宝・テラパゴス戦である。
ブライアの指示でスグリがテラパゴスをテラスタルするとテラパゴスが暴走し、戦闘になる。
テラパゴスが暴走し、現実を受け入れられない様子を見せるスグリ。
テラスタルエネルギーを吸収したり、バリアを再展開するなど圧倒的な強さを見せるテラパゴス。
そして、テラパゴスの猛攻に耐えきれず、ゼイユのヤバソチャがやられてしまう。
うなだれるスグリに発破をかけるゼイユだが、無力感に苛まれ、一歩を踏み出すことができないスグリ。
バリアを突破するためテラスタルするも、またもやテラパゴスにテラスタルのエネルギーを吸収され、テラスタルが解除されてしまう。
ヤバソチャがやられ、一対一となり、主人公が窮地に追い込まれる中、再びスグリに発破をかけるゼイユ。
うなだれるスグリに主人公が声をかける。
そうして、やっと一歩を踏み出したスグリ。
(目にハイライトが戻る演出は、正気に戻ったことを表現すると同時に、はじめて会った時のスグリが帰ってきたことを暗示させる小粋な演出である)
これには主人公も頷きをもって返す。
スグリが繰り出すのはエースであるカミツオロチ。
特性「かんろなミツ」でテラパゴスの回避率を下げ、技「みずあめボム」で素早さを下げ、技「ドラゴンエール」で味方の急所率を上げる。
(このシーンには万感の想いが込められているように感じた。主人公に勝つために血のにじむような努力をしたスグリが主人公のサポートをし、主人公を勝たせる選択をした瞬間である)
主人公と一緒に並び立ち、困難を乗り越えたスグリは主人公にテラパゴスを託す決断をする。
主人公がテラパゴスを捕まえ、一件落着すると、主人公に憧れていたと、スグリは素直な気持ちを吐露する。
一歩を踏み出し、主人公と共に並び立つことで、主人公への憧れを諦めることができたのだった。
思えば、スグリはオーガポンにも憧れを抱いていた。しかし、某漫画のセリフを引用するに「憧れは、理解から最も遠い感情」である。彼はずっと「憧れ」という感情に振り回されてきたのだ。
実際、『藍の円盤』ではスグリは主人公に憧れを押し付けている場面が多々見られた。
例えば、主人公がブルベリーグにエントリーする場面。
「俺とやるまで負けたら許さない」
この一言は、主人公への強い憧れと劣等感が入り混じったスグリの精神状態を表す一言である。
おそらくは、弱かった自分が血のにじむような努力をして四天王に負けることなくチャンピオンになれたのだから、その自分が憧れる主人公に同じことが出来ないはずがない、と思っているのだろう。
これはまさしく憧れ、理想の押し付けであるが、主人公は主人公であるがゆえにその憧れをやすやすと飛び越えてしまうのだ。
他にも四天王を全員倒した際のセリフにも憧れの押し付けが見られた。
だからこそ、その憧れを諦めることができたスグリからの「友達に…… なってくれる?」にはなんの憂いもなく頷くことができた。
『ゼロの秘宝』とは、ゼロからやり直すスグリとの友情だったのである。
結局のところスグリに必要だったのは「強くなって特別になること」ではなく、「一歩踏み出すこと」だったのかもしれない。
3. てらす池のイベント
エンディング後、テラパゴスを連れて、てらす池へ行くと衝撃的なイベントが発生する。
テラパゴスが不意にボールから飛び出し、辺りを霧に包む。
すると、そこにいたのはなんと、生前のフトゥー博士であった。
ボールから飛び出したミライドンを見た博士はミライドンのことを「テツノオロチ」と呼ぶ。
(第3観測ユニットの手記(右)から「ミライドン」の命名をしたのはフトゥー博士であるため、博士が転移してきた元の時間はミライドンの転移に成功するより前であることがわかる)
博士は状況から自らが未来に転移したことを悟る。
(ちなみに、この場面は『スカーレット』版だと「私/僕」と「君たち」が逆になり、「過去の存在なのだな」になっている)
だが、時空の可能性は無数に存在することからこの出会いが地続きの過去・未来ではない可能性を指摘する。
(実際、後述するが地続きの過去・未来ではないということが博士への質問で分かるようになっている)
博士からの提案でお互いに質問をし合うことに。
▼「どうしてここに?」を選択した場合
秘密のラボでデータを分析していたら転移していたと語る博士。結晶ポケモンの影響か、はたまた博士と主人公の因果によるものか……。
(博士の語る秘密のラボや結晶ポケモンとは、おそらくゼロラボとテラパゴスのことであり、博士が転移してきた元の時間は第1観測ユニットの手記(左)に書かれている仮称■■■を研究していた時期であると思われる。また、テラパゴスのことを「テラスタルポケモン」ではなく「結晶ポケモン」と呼んでいることから、「テラスタル」を発見する直前であると考えられる)
▼「どんな研究を?」を選択した場合
異なる時間軸のポケモンを捕まえて現代へと呼び出す……そんな夢のような装置を作ろうと計画しているらしい。幼少期に読んだバイオレットブックに心を掴まれたと語る博士。だが、研究に行き詰まっており、主人公との会話から解決の糸口を探ろうと必死であるようだ。
(フトゥーAIもタイムマシンについて同じことを言っているため、「夢のような装置」とはタイムマシンのことである。また、時系列的にタイムマシンを作る前であることがわかる)
▼「家族は……?」を選択した場合
プライベートに興味があるのが意外だったのか驚く博士だが、子供がひとりいることを教えてくれる。子供は家でさみしい思いをしているだろうと語る。
(ペパーに家でさみしい思いをさせたことがフトゥーの後悔であることが博士AI撃破後のフトゥー?とペパーの会話からわかる。おそらくはこのフトゥー?は生前のフトゥーの意思であるのだろうと思われる)
(しかしながら、子供がいるというのは上記の『「テラスタル」を発見する直前であると考えられる』とする考察と時系列的に矛盾する(第3観測ユニットの手記(右)は第1観測ユニットの手記(左)よりも後の出来事を記しているため)。つまり、転移してきた博士は必ずしも本編と同じ時系列順に行動しているわけではないことがわかる。
これがおそらく「地続きの過去・未来ではない」ということの意味であると思われる。本編の博士は、ミライドンの転移と同時期に子供を授かった世界線であるが、転移してきた博士はもっと前に授かった世界線である。要するに、この現象は無数にある並行世界の過去の一つと繋がった状態であると言える)
次は博士から質問することになり、この場所はどこなのかを聞かれ、「てらす池」と回答すると文献で読んだことがあると語る。
次の質問「ミライドンはなんなんだ?」に「大事な存在」と答えると、野暮なことを言ったなと引き下がってくれる。
すると博士は主人公が見慣れない本を持っていることに気付き、その本・ゼロの秘宝を見せてもらおうとする。
(博士がテラパゴスの名前を知っているということは上記の考察「博士が転移してきた元の時間は第1観測ユニットの手記(左)に書かれている仮称■■■を研究していた時期であると思われる」と矛盾する。
博士はテラパゴスのことを仮称■■■と呼んでいたはずであり、そもそも「テラパゴス」という名前も知らなかったと思われる(「テラパゴス」という名前はブライアの持つオリジナルのスカーレット/バイオレットブックでのみ確認できるため))
ゼロの秘宝の著者・ブライアとは何者であるかを聞かれ、「ヘザーの子孫」と答えると血は争えないようだとひとり納得する。
ゼロの秘宝に研究者心を掻き立てられるようで、じっくりと読ませてもらおうとするが、霧が深くなりタイムリミットが近付いていることに気付く。
貴重な本を無償でもらうのは心苦しいと、博士はバイオレットブックとの交換を申し出る。
そうして本を交換すると、しみじみとひさしぶりに家に帰って読書するのもわるくないと語る。
(バイオレットブックを受け取る際、妙なのがNEWとなっていることだ。タイムマシンを止めるためのエリアゼロの冒険の途中、ペパーから同じものを主人公は受け取っていたはずであり、NEWなはずがないのである。これは明らかな矛盾点である。
また、交換したバイオレットブックはペパーが秘伝スパイスを探すために持ち歩いていたものであり、タイムマシンを止めるためのキーでもあったため、上記の時系列と矛盾する。よって、元の時代に戻った博士は本編ストーリーとは別の道筋を辿る可能性が高い)
そして、「ボン・ボヤージュ」の一言とともに霧の中に消えていった。
以上がてらす池のイベントの全容である。
そして、この現象のことを書き記していると思われるメモがゼロの大空洞に存在する。
上記のイベントから、「秘宝」はテラパゴス、「東方の地」はキタカミの里、「池」はてらす池、「子供」は主人公、「白い本」はゼロの秘宝であることがわかる。また、……に続く言葉はおそらく「交換してもらった」か「見せてもらった」のどちらかであると思われる。
そして、このメモの存在は博士が元々いた並行世界がこちらの世界と地続きの過去・未来であることの証拠となる。しかし、先述した通り、博士は地続きの過去・未来ではないと述べており、このメモが存在することと矛盾する。
そこで、てらす池のイベントにおける矛盾点とゼロの大空洞のメモ、そしてエリアゼロのストーリーから一つの仮説が立てられる。
それは、SV本編とDLC『ゼロの秘宝』はあおのディスクを起点に、世界線が分岐したのではないか、というものである。
まず、ブライアはタイムマシンのある部屋のことを「用途不明の謎の部屋」と呼んでいることから、オモダカからタイムマシンの話は聞かされていなかったと推測される。実際、オモダカはブライアに対してタイムマシンのことを「多少ぼやかしてお伝えしている」と述べている。
また、ゼロの秘宝はブライア視点で書かれている。
したがって、ブライアの書いたゼロの秘宝にはタイムマシン周りの話は書かれていなかったと思われる。よって、てらす池で本を交換し、元の時代に戻った博士はタイムマシンを自分が完成させることを知らなかったと考えられる。
そこで、もう1つ仮説を立てる。
それは、元の時代に戻った博士はタイムマシンを作らなかったのではないか、というものである。
あおのディスクを入れるまではタイムマシンを作ろうとしたルート(SV本編ルート)、入れた後は研究途中でてらす池に繋がり、白い本を手に入れてテラパゴスの力を知って利用しようとしたルート(ゼロの秘宝ルート)。
端的に、SV本編ルートをα世界線、ゼロの秘宝ルートをβ世界線とここでは呼ぶことにする。
β世界線でタイムマシンを作らなかったとする証拠として、タイムマシンのある部屋に行くことができないことが挙げられる。エレベーターの行き先はゼロの大空洞に変更され、もうタイムマシンの部屋には行くことができなくなっている。
また、てらす池のイベント終了後、オープニングに強制的にもどり、机の上にスカーレット/バイオレットブックが置かれるが、これはタイムマシンを止めるエリアゼロの冒険自体がなかったことになっていることの暗示ではないかとも考えられる。
さらに、スカーレット/バイオレットブックを博士から受け取った際にNEWと表示される矛盾点について、これもタイムマシンを止めるエリアゼロの冒険自体がなかったことになっていると考えれば辻褄があう。ペパーにスカーレット/バイオレットブックを渡されたことがなかったことになっているためにNEWと表示されたと解釈できる。
対して、α世界線は単体で完結した世界線であり、ゼロの秘宝で起こる全ての事象は何も関係ない、そもそも起きなかった世界線である。メタ的に言うなら私たちプレイヤーがDLC『ゼロの秘宝』をプレイしなかった世界線である。この世界線では博士は本編ストーリーの通り、タイムマシンを完成させる。
そして、あおのディスクは、昔エリアゼロ研究者から出資者に渡されたという謎のディスクである。
上記の仮説の文脈で解釈するなら、あおのディスクとは、DLC『ゼロの秘宝』のゲームデータそのものであると解釈できる。SV本編にDLC『ゼロの秘宝』=あおのディスクを入れることでα世界線からβ世界線へと世界線が変動し、タイムマシンからゼロの大空洞へエレベーターの行き先は固定される。
説の疑問点としては、β世界線においても観測ユニットの手記は依然として存在し、内容も本編とは変わっていないことが挙げられる。手記にはタイムマシンを作り、ポケモンの転移に成功したことが記載されており、タイムマシンを作らなかったとする仮説とは矛盾する。
ちなみに、スカーレット/バイオレットブックの「謎の記憶」のページに書いてある現象はてらす池のイベントの現象と同じものであると考えられる。おそらくはヘザーが円盤のポケモン(テラパゴス)と邂逅した際、テラパゴスがヘザーを異なる時代のどこかへ転移させたことによって起きた現象であると思われる。
(これは推測だが、「テラパゴスが近くにいること」が転移の条件としてあるのではないだろうか?
てらす池での現象では主人公側、博士側どちらもテラパゴスが近くに存在していた。「謎の記憶」におけるヘザーの転移も円盤のポケモンと邂逅した際に発生している。つまり、ヘザーが転移した先にもテラパゴスが近くにいたと推察され、ヘザーが出会った人物とはオーリム/フトゥー博士またはそのAIである可能性が高い)
また、てらす池のイベント後、ペパーに話しかけると次のような反応が見られる。
■ポケモン│過去と未来を繋ぎゼロにする
1. パラドックスポケモン
その起源や正体についてネット上で様々な説が提唱されたパラドックスポケモンであるが、『藍の円盤』を経た結論としては、「並行世界の過去や未来からやってきたポケモン」である。
上記のてらす池のイベントにてテラパゴスによって過去と未来が繋がる現象が発生した。このことから、これと同じ現象が並行世界の過去や未来にいるパラドックスポケモンたちに起きたと考えられる。博士は「時空の可能性は無数に存在する」と述べており、並行世界の存在を示唆している。
これは楽園防衛プログラム戦におけるミライドンのステータスである。
「時間と空間をこえてはるばるやってきたようだ」とあるが、これはまさしくパラドックスポケモンを言い表しており、おそらくは全てのパラドックスポケモンはミライドンのように時間と空間をこえてはるばるやってきたと思われる。
つまり、パラドックスポケモンとはテラパゴスの時空を繋ぐ能力によって並行世界からこちらの世界に転移させられたポケモンであると考えられる。
おそらく並行世界ではパラドックスポケモンは普通のポケモンであり、何匹も存在していたのだろう。
しかし、疑問点も存在する。
それは何故コライドン/ミライドンだけ2匹しか転移できなかったのかという疑問である。
オーリム/フトゥーAI曰く、他のポケモンはたくさん転移できたが、コライドン/ミライドンの種族だけは2匹しか転移できなかった、とされる。
これは数多ある並行世界の過去・未来にわたっても2匹しかいないということなのか、はたまた、なにか理由があって2匹だけしか転移できなかったのか。
博士が作り上げたタイムマシンとはおそらく、時間制限をなくした時空転移装置であると思われる。てらす池の転移の場合、時間制限があったが、タイムマシンは延長もしくは無期限の転移を可能とする装置であると考えられる。
また、上述した通り、転移にはテラパゴスの近くにいることが条件であると思われ、その条件をテラスタルの力を使い、テラパゴスを介さず、転移することに成功したのがタイムマシンであると思われる。
2. テラパゴス
ゼロの大空洞の「概要とステラ」には、テラパゴスこそがゼロの秘宝であると記述されており、その体は、結晶体となり外敵から身を守っており、目覚めるには時間が必要と考察されている。
アカデミーの授業「歴史(1) 大穴の財宝伝説」ではレホール先生曰く、「大穴の奥底にはこの世のすべてのものより価値がある財宝」が眠ると信じられていたとされており、おそらくはゼロの秘宝(テラパゴス)こそが「この世のすべてのものより価値がある財宝」であると思われる。
続く「概要とステラ」には、テラパゴスの影響か大空洞内にてすべてのタイプを宿したテラスタルが確認されることが記述されている。博士はそれをステラと呼ぶ。
テラスタイプ: ステラのテラスタルはテラスタルジュエルが通常とは異なり、放射状の王冠を冠し、その上にテラパゴス(ノーマルフォルム)を象った宝石が乗っかり、さらにその上にテラスタルマークが浮かぶ。そして、その周囲を18枚のタイプ結晶が公転している。
ポケモンシリーズにおいて、すべてのタイプを宿したものといえば、『LEGENDS アルセウス』より登場したレジェンドプレートである。
レジェンドプレートに刻まれた十字型の星はテラパゴスの足や尻尾の突起の形と似ていることから、何らかの関連がありそうである。プレートも甲羅もあらゆるタイプの力を宿しているため、タイプの力を統合すると最終的にこの形に行き着くのではないだろうか?
ちなみにテラパゴス(ステラフォルム)の攻撃モーションがゼロの秘宝のタイトルロゴの後ろにある六角形が集合したマークと同じ配置をしている。
次に「ゼロの大空洞」について。
ゼロの大空洞が形成されたのは地層から推察するに約200万年前であり、空洞ができる直前まで無数のなにかが穴を埋め尽くしていた形跡があるとされる。
アカデミーの授業「歴史(1) 大穴の財宝伝説」ではレホール先生曰く、「『パルデアの大穴』とその中である『エリアゼロ』は地層や成分から100万年以上も前から存在すると研究されている」ようである。
この提示された年数の関係から、ゼロの大空洞が形成された後に、パルデアの大穴が形成されたと見るべきだろう。空洞ができる直前まで無数のなにかが穴を埋め尽くしていた形跡があるとされているが、何が埋め尽くしていたのかは不明である。
続く、「ゼロの大空洞」には、陥没の深さは約1000mであり、何度も陥没を繰り返した跡があると記述されている。原因は地殻活動や雨水、地下水による侵食であると推測され、最後に最大の崩落が起きた後は現在まで地形は安定しているようである。
この陥没があったからこそパルデアの大穴が形成されたと考えられる。陥没は崩落を繰り返し、地表の標高を次第に下げていき、現在の大穴を形成するに至ったと思われる。
また、テラパゴス(ノーマルフォルム)の図鑑説明に興味深い記述がある。なんでも古代のパルデアで暮らしていたが、地殻変動に巻き込まれ、絶滅したと考えられていたという。
地殻変動に巻き込まれるような場所といえばゼロの大空洞である。おそらくは古代のテラパゴスたちはゼロの大空洞を住処としていたが、地殻変動により絶滅の危機に瀕したと思われる。
もしかすると空洞ができる直前まで穴を埋め尽くしていた無数のなにかとは、テラパゴスの亡骸なのかもしれない(だからエリアゼロには巨大な結晶があるのだろうか?)。
仮称■■■やスカーレット/バイオレットブックの記述からわかっていたことだが、テラパゴスはテラスタルの大元のポケモンである。
六角形が多層的に組み込まれたテラパゴスの殻の構造がエネルギーを硬い結晶へと変化させる。この現象を博士はテラスタルと呼んだ。
次にテラパゴス(ステラフォルム)の図鑑説明を見ていこう。
図鑑説明に登場する古い探検記とはおそらくスカーレット/バイオレットブックのことであろう。
そして、そこに掲載されている挿絵はテラパゴス(ステラフォルム)を表していると思われ、横から見た姿と概ね一致する。
『スカーレット』版では古代人が考えた世界に似ていると記述されており、古代人とテラパゴスには何らかの接点があったことが示唆されている。
ポケモン世界だけでなく、私達の世界にも亀が大地を背負っていると考える神話や伝説は多く見られる。
例えば、中国神話等に登場する霊亀やインド神話のアクーパーラなど、亀は大地を背負いがちである。
▼世界亀のまとめ記事
おそらくはこれら神話や伝説がテラパゴス(ステラフォルム)のモチーフであると考えられる。
最後にテラパゴス(ステラフォルム)の特性に注目したい。
この特性は、コライドンの特性「ひひいろのこどう」とミライドンの特性「ハドロンエンジン」を狙い撃ったかのように無力化する効果を持っており、コライドンとミライドンと何らかの関連が疑われる。
「ゼロフォーミング (英: Teraform Zero)」という名前はテラフォーミング(英: terraforming「地球を作り出す」の意)をもじったネーミングであると考えられ、おそらくは場のエネルギーを吸収する様を表していると思われる。
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