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詩「デッドエンドの冒険」

 中心の歌

 あるいは歩いていく 死んだ魚たちが
 ら行で立ち止まって 形容詞と助詞の区別さえつかずに
 仮死の祭典だ 亡霊どもが呻きながらぞろぞろと這いずり回る
 中心の歌は彼方には響かない 圏論の可能性について
 四六時中考えている ぼくと君の可能性よりも
 靴下を履かないで じろじろと見られている
 
 偉そう

 夜ってだけで偉そうにするな
 気持ちが悪い
 朝ってだけで偉そうにするな
 吐き気がする
 ポエトリーリーディングみたいな言葉しか吐き出せなくなったら
 人類の半数が死滅する
 絵文字の中身は空っぽで ハッシュタグの意味さえわからなくなって
 私は記号になる
 記号も偉そうだ
 偉そうだけど仕方がない
 とりあえず夜は偉そうだ
 吐き気がする

 点字 もしかすると

 盲目の人がエレベーターに乗っている
 魂にだけ聴こえる旋律を奏でている
 私は林檎を齧る
 意味って空虚だね
 マイナスから発火する感情装置
 もしかすると彼女は目が見えないのではなく
 見ようとしないだけではないか
 
  Reborn
 
 デラシネの時
 私は彷徨う
 言葉の森を
 狩人になって ネズミたちが齧ったリンゴを
 時のナイフで ばらばらにして
 いつか生まれ変われる時が来るさ
 いつか君が云ったね
 君とは誰だ? 抽象的なメタファーなのか
 それとも実在する対象なのか
 それすらわからない
 私は皮を剥く
 意味で甘すぎるリンゴの


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