同系を意識したラクドスミッドレンジ調整録

1.デッキ選択と方向性の決定
 チャンピオンズカップという大型大会が開催されると聞いて久しぶりに紙のやる気を出したものの、パイオニアの手持ちはボロスヒロイックのみ。安定性の低いデッキで長丁場を戦い抜くことに不安を感じていたため、別のデッキも用意することを決めました。
 最初に用意したのは当時使用者の多かったイゼットフェニックス。ある程度触ってみましたが展開にムラがあることとプレイング難度の高さが気になったため、他のデッキにも手を付けることにしました。
 次に目をつけたのが同じく数を増やしていたラクドスミッドレンジでした。晴れる屋の記事(https://article.hareruyamtg.com/article/64276/を参考に回してみたところ、元々求めていた安定性とデッキパワーの高さを感じたため本格的に調整することに。
 その後も同デッキの使用者は増え続けていたため、自然と同系に強い構成を意識するようになりました。同系対策として採用率の高かった《絶望招来》以外にも決め手となるカードを探していたところ《熱烈の神ハゾレト》を発見。手札が増えにくいデッキのため条件を満たしやすく、対同系のサイドプランとして入れられる《真っ白》を逆手に取れることも好印象でした。その他のカードとして《砕骨の巨人/踏みつけ》で死なない2マナ域であり、デッキの安定性をさらに向上させる《マグマの媒介者》を採用した構成でひとまず店舗予選を突破することができました。
 その後も調整を重ね、追加の同系対策かつ苦手意識のあったラクドスサクリファイスに対して飛行で攻めるプランが取れる《領事の旗艦、スカイソブリン》をサイドに2枚採用してプレミアム予選に参加。権利獲得目前で敗北したものの、この時点では調整内容に手応えを感じていました。

2.『団結のドミナリア』リリースに伴う構成の変化
 そしてエリア予選が幕を開ける直前、『団結のドミナリア』がリリースされます。カードリストを確認した感想としては強力なカードはほとんどが4マナ以降の重いカードであり、パイオニアへの影響は少ないのではと感じていました。ただ1枚、《ヴェールのリリアナ》を除いては。
 《ヴェールのリリアナ》は言わずと知れた強力なプレインズウォーカーですが、自分としてはメタゲーム上において同系以外で有効な相手が少なく、元々3マナ域が厚いラクドスミッドレンジにおいて採用されるかどうかは好みによるのではないか、程度の認識でした。
 しかし、その認識はすぐに改められることになります。同系において強い影響力を持つ他にも、苦手なデッキに対しても手札を攻めることで相性を改善できる《ヴェールのリリアナ》は瞬く間にラクドスミッドレンジの主軸となりました。
 相性の良い《しつこい負け犬》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》の増量に始まり、プラス能力によって土地が伸びにくくなった影響による5マナ域の減少、先置きして牽制となる《勢団の銀行破り》の採用など、ラクドスミッドレンジの構成は《ヴェールのリリアナ》ありきの方向で進んでいきます。
 自分の構成も大きく影響を受けました。《絶望招来》以上に採用率の高いリリアナを前に《熱烈の神ハゾレト》の採用を一旦諦めることになり、どのようなプランで戦いたいのかも曖昧なままの構築でエリア予選を迎え、不甲斐ない成績のまま初週を終了してしまいました。
 初週での惨敗を踏まえ、自らの構築について見直しを図ることにします。エリア予選を通過したラクドスミッドレンジのリストを見る限り、メインボードには4~5枚ほどのフリースロットが存在し、サイドボードに至ってはプレイヤーによってかなりの違いがあるようでした。このメインボードのフリースロットとサイドボードについて再考し、新環境に適応したリストの作成を目指します。
 こうして練り直した構成で次週のエリア予選に参加。5-1-1の成績でチャンピオンズカップ本戦への出場権を獲得することができました。

3.デッキリストと各カードの解説
エリア予選を通過したデッキのリストと、採用したカードの解説を行います。

メインボード
サイドボード

①《熱烈の神ハゾレト》の採用
 《ヴェールのリリアナ》で対処されてしまうため一度は採用を見送ったカードですが、同カードのプラス能力によってむしろ戦闘可能となる条件を満たしやすく、速攻によってプレインウォーカーの処理をしやすい点から改めて採用を決めました。
②《墓地の侵入者》の採用枚数
 団結のドミナリア以降のリストでは《ヴェールのリリアナ》の加入に伴い他の3マナ域、特に《墓地の侵入者》の枚数が削られる傾向があります。自分も同系対決において強力な《ヴェールのリリアナ》を4枚投入し、《墓地の侵入者》を削る構成などを試してみましたが、《熱烈の神ハゾレト》を採用する以上速やかにライフを削るアグロ寄りのプランで動きたいこと、自分の構成では全体的に墓地対策が弱めであることを考えてこちらを4枚採用にしました。
 このカードに《ヴェールのリリアナ》を使わせることで、《熱烈の神ハゾレト》を生き残らせやすくしたいという狙いもあります。
③《強迫》のメイン採用
 アグロ寄りのプランを取りたいなら《しつこい負け犬》の方が良いかと思いましたが、《ヴェールのリリアナ》や《鏡割りの寓話》といった対処に手こずるカードをなるべく場に出される前に落としておきたいと考え、サイドボードとの兼ね合いもあってメインに1枚採用しました。
④土地構成の変更
 以前までは呪文土地を含めた25枚でしたが、5マナ域の採用枚数を1枚まで減らすことにしたため24枚に変更。安定性の高さを最大限保つために《硫黄泉》も1枚採用しました。
⑤《コラガンの命令》の2枚採用
アーティファクト対策としては《削剥》と散らして1枚ずつ採用されるのが一般的ですが、同系においてマイナス能力から起動したプレインズウォーカーを損なく処理できるなど汎用性が高く、こちらを優先することにしました。墓地対策が少なめなことと合わさって、パルへリオンに対しては少々ガードを下げた構成ではあります。
⑥《命散らしのゾンビ》の採用
 緑信心対策として元々は《絶滅の契機》を多めに取るなどしていましたが、後ろ向き過ぎるためこちらを採用してみました。緑信心だけではなく人間、バントスピリット、5Cニヴ、白青系コントロール(最近は《夢さらい》が減少傾向にありますが、代わりに増え始めている《太陽の勇者、エルズペス》を含むトークン類にブロックされず、最低でも手札の確認はできるためプランを組み立てやすい)などにも入れられるためかなり気に入っています。相手のドロー後に《キキジキの鏡像》でコピーするソフトロックも強力。
⑦《魔女の復讐》の採用
 想定されるビートダウンがほぼ部族デッキであるため採用。エリア予選のバブルマッチではバントスピリット相手に決め手となりました。
⑧《屍呆症》の採用
 コンボデッキに対する悪あがき。通れば致命傷となり得るため悪くないかなと感じていますが、《真っ白》の枠をこちらに変えているため墓地対策が薄くなっているのは懸念事項です。
 《反逆の先導者、チャンドラ》の減少と合わせて白青系コントールに有効なカードが減っていますが、そちらに対する勝率は現状変わっていないように思えます。

4.対同系のサイドボードについて
 ラクドスミッドレンジを使う何人かに聞いてみましたが、減らすカードは主に《税血の収穫者》か《思考囲い》が多いようです。
 《思考囲い》を減らす人はモダンのジャンド同系のように消耗戦からのトップ勝負となるゲームプランをイメージしているかと思います。
 実際そうなることも多いのですが、自分としては《鏡割りの寓話》や《ヴェールのリリアナ》を始めとしたアドバンテージを取られるカードを着地前に落としておきたいこと、後半引いた手札破壊も《鏡割りの寓話》や血トークンによる入れ替えが可能なことから手札破壊は減らさず、《砕骨の巨人/踏みつけ》や《ヴェールのリリアナ》などで損をしやすい《税血の収穫者》の方を減らしています。
 自分は現状《税血の収穫者》を2枚と《死の飢えのタイタン、クロクサ》を抜き、《コラガンの命令》を2枚、《領事の旗艦、スカイソブリン》を入れています。《税血の収穫者》を2枚残しているのは手札破壊を減らさない関係で血トークンも多少必要と感じたためです。
 《真っ白》もアドバンテージが取れるカードですが、元々3マナ域が多いことと(自分の場合《コラガンの命令》を2枚入れているので尚更)、3マナ以降のカードは場に強く干渉するものが多く展開の遅れに繋がること、手札の消耗が激しく効果が薄い状況も多いことなどから入れていません。
 その他、相手が《しつこい負け犬》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》を多めに採用しているなら《未認可霊柩車》も入れるなど、相手に合わせて対応していくことも重要だと思います。


 今後は《黙示録、シェオルドレッド》や《勢団の銀行破り》など採用を見送ったカードについても試しながら、チャンピオンズカップ本戦に向けて調整を続けていきます。

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