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ひらめいた 桃の 思い出を 味わって。


こんばんは。 noteさん。

南からやってきた風は、遠くにいるのに、こちらまで声が聞こえてきます。
揺れる緑のカーテンは、影をつくるその時を今日も静かに待っていました。



渇きはじめた、この季節に、
あちらこちらの、お店に並んでいる、
かわいい色に、惹かれてしまいます。。

甘くて、トロっとしていて、
ジューシーな、桃。

見かけたときには、そのすがたを、よくよく吟味して、
自信たっぷりに、アピールしてくれた、
熟れごろものが、我が家にやってきます。

それなのに、
冷蔵庫に入れた、まま。
なかなか、食べない、という、矛盾。

お楽しみはあとまで取っておく、っていう、
幼い頃からの、しあわせ倍増の、
おめでたい思い込みが、
こんなところで邪魔をして、
美味しい曲線は、わたしの口に入るまでに、
すっかり下がってしまっています。


今年も、相変わらずの、
そんな、かんじで。

冷蔵庫の中に、
しわしわで、茶色の、ブチ模様。

今日こそは、もう限界だ、そう思ったので、
柔らかくなってしまった、その実を、
やっと、切ることにしました。

ひとくち食べてみたら、
うーん、イマイチ。
甘くもなくて。
手に取った時に想像していた、桃色の時間が、
全然見えなくなっていて、とても残念でした。


モッタイなかったなあって思いながら、
もう一口。
そこで、、ひらめいてしまいました。


懐かしい、あの味。

大人、になってから、初めて食べた、
まさかの、組み合わせ。


桃のパスタ。



高校時代の、仲間と集まって、
ちょっと遠くまで出掛けた、
あの子がオススメしてくれた、お店で、
社会にでたばかりの、初々しさの中で食べた、
あの感じ、を思い出しました。

好奇心いっぱいの、ワクワクした気持ちを、
フォークに巻いて。

果物はそのまま食べたほうが美味しいって、
そう思っていた、思い込みは、
あっ、という間に、塗り替えられていました。

照りつける太陽が、力を奪っていくほどの、
とても、暑かった、日、で。

さっぱりとした酸味のあるソースに、
冷たく、つるりと絡まって、
噛むたびに、桃の香りが弾けて、
甘い果汁が、広がっていきました。

慣れ親しんだ、いつもの、ではなくて、
今までにない、まさかの、ことでも、
その素材のいいとこが混ざり合ったら、
素晴らしい、もの、になっていて。

過去からきた、驚きも、新鮮さも、
受け入れて、楽しめるほどの、
余裕がある、大人、になれた気がして、
とても嬉しかったんです。

これまでの、当たり前にこだわらずに、
新しいものに、たくさん出逢ってみようって、
そんな未来、を描いた、ひと皿でした。



あの味とともに感じた、
自由な、しあわせ、の記憶を、
再現してみたくなりました。

材料はあるもの、で。
分量も、適当で。

遠すぎる、細い道をたどって、
導き出した、かすかな感覚、のままに、
なんとか、うまく出来上がりました。


時間を越えて、わたしのもとに戻ってきた、
甘酸っぱくて、ももいろの香りがする、
夏の初めの、思い出の味が、
あの頃の、わたし、に、
また逢わせてくれたような、そんな気がしました。



遅いくらいの、旬を飲み込んだ、わたしにも、
熱い、夏が、
始まりそうです。




追伸。
画面の、向こうの、燃える炎に、
冷え切っていた、こころが、
少しずつ、溶かされていきます。
だから、ここから声を、贈ります。



 最後まで、読んでくださって、ありがとうございます。。