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喪主 その2

 ケイちゃんがもたもたしていると突然私のスマホが鳴った。
「あ、あのさ。明日なんだけどそっち行くわ」いつもこうだ。名乗りもせずにいきなり話し出して、「えっ、何よ急に言われても」切れる。母は言いたいことだけ言って切る。
「なになに。お母さん?」みんな慣れっこだからすぐにわかる。
「まったくいつもこうなんだ。明日こっちに来るって」私は吐き捨てるように言う。
「えーっ。お姉ちゃん、どうする?」
「とにかく来るなっていってもあのひとのことだもの来ちゃうよ」
「あたし仕事。明日残業」ケイちゃんは私は無関係と言いたげに言う。
「そんなぁ。ずるいよ。遅くてもいいから来てよ」アリスは半ばすがるように言う。
「アリスは来てくれるんだ。よかった」
「だっていつもお母さんのことお姉ちゃんに押し付けてばかりだから」
嫌なことからはすーっと身を引いて面倒に巻き込まれない才能の持ち主のケイちゃんとは違う。
アリスはちょっと気が弱くて優しい。
私たち三姉妹はみなそれぞれ違う。
長女の私は芯が強くて責任感があって頼り甲斐があると言われる。それは私以外のひとが私に望む長女としての役まわりであって実際の私とはほど遠い。

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