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どう伝えようか……

2023年12月下旬に胃がん告知を受けました。
さて、家族にどう伝えようか。
周囲の人たちは、どこまで伝えようか。
私の場合です。


家族へ

内視鏡検査で採取した病変の病理検査結果を聞きに行ったあと、
すぐに仕事先に移動しなければならなかったため、電話をする時間はなく。
でも、その日に結果が出ることは知らせていたので、
気にしているだろうと思い、母にはLINEで胃がんだったことだけを知らせました。
聞きたいことがいっぱいあるだろうけれども、仕事だから夜に電話すると加えて。

仕事を終えて自宅に向いながら、あーでもないこーでもないと
伝えるための言葉を探しました。
でも、見つからない。そして、間違いなく、電話口で泣かれる。
そしたら、こっちも泣いてしまう。
伝えなければいけないことも伝えられなくなる。

結局、電話はせずにLINEで、週明けに大学病院でさらなる検査をすること、
その結果が出ないことには治療方針もわからないこと、
合わせて今の自分の気持ちを送りました。

がんだとわかっても、ショックも恐怖も感じていないけれども、
ただただ両親に申し訳なく思っている、
心配をかけ、金銭的負担もかけることになるかもしれないことが
つらいし、本当に申し訳ない、ごめん、と。

それ以後も、連絡はLINEで。
通院のたびに、予測も推測も含めない、
その時点で明らかなことだけを知らせました。
母(我が家の連絡窓口は基本的に母)からは、
あれはどうなんだ、これはどうなんだといろいろな質問が飛んできますが、
知らせた以上のことは私にもわからないので、いつでも返答は
「わからん」「◯◯日の検査が終わってからわかると思う」くらいでした。

病名は知らせる?

家族にしても、友人にしても、仕事関係にしても、
病名を伝えることに迷いがありました。

「がん」って、言葉が重すぎる。

手術が決まっても、本人はいたって元気(正確には元気ではないのだが)。
胃がんの症状として列挙されているものの中で、該当するとすれば
みぞおちの痛みだけなんだけれども、最初に内視鏡検査を受けたクリニックで
胃酸を抑える薬を処方されていたので、それを感じてもおらず。

年末、実家に帰ったとき、顔を見るなり「どう?」と母にも父にも言われたけど、
「本人はなんでもないのに(実際にはなんでもないことはない)、
どう? どう? 言うな。気が滅入る」と言ったくらい。

病名を伝えた家族以外の人からの反応でも予想通りだったのが、
「脱毛」「吐き気」「嘔吐」を心配するものでした。
それ、主に抗がん剤の副作用です。
そんな誤解をいちいち解いていくのが……
めんどくせー!

いや、心配していただいているのはありがたいし、
その気持ちはとてもうれしいのだけれども。
でも、やっぱり「がん」という言葉が自分以外の人に与える重さが半端なく、
聞かされた方に心理的負担を負わせ、気も遣わせてしまうだろうし、
重さゆえに出てくる言葉にこっちもダメージを受けてしまうのです。

どこまで伝える?

2023年の春、新卒で入社した会社の同期が乳がんで亡くなりました。
彼女はもともと住んでいた関東を離れて関西に移住していたこともあり、
頻繁に会うこともなかったけど、上京するときには連絡をくれて、
一緒にランチしたり飲んだりする、比較的仲のいい同期でした。

でも、乳がんを患っていることも、
2022年の末には関東に戻ってきて自宅療養していることも知らず。
知らされたのは、亡くなってからでした。

そのときのことを思い出します。

私は、知らせてほしかったかな?

彼女を失うことに対する覚悟はできたかもしれないけれども、
彼女に対して何もできないことを歯痒く思っただろうな。
何かをしようとしても、拒否されたかもしれない。
お見舞いに行くといわれても、
衰えていく自分を見せたくないと、私なら思うだろうし、
顔をあわせても、どんな言葉をかければいいのか悩んだだろう。

知らせてほしかったかどうか、その結論は自分の中で未だ出ていないけど、
前にも書いたとおり、「がん」という言葉は、がんに罹ったことのない人、
身近にがんを患ったことのある人がいない人、知識がない人には重すぎる。

だから、友人にはいっさい伝えていません。
仕事関係も最低限にしています。

私ががんサバイバーであることは、知る人ぞ知る、です。


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