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ハーフタイム 第3のリベロ Vol.24

2022年が、暮れてゆく。最近は、テレビ好きなどという呼び名も時代錯誤になった感があるが、40も目前のパラサイトシングルには、この時期に欠かさず視聴してきた番組が複数ある。関西地方では「よしもと楽屋ニュース」が来週28日に放送される一方、「クリスマスの約束」は見送り。私にとってクリスマスイブは父を亡くした日、賑やかな世間と同調できないなか、テレビで小田和正の歌声が聴ける貴重な機会は、美しいレクイエムのような、優しい灯火のような存在だけに寂しい。今年も相変わらず、私はテレビを通して年の瀬を実感している。

私のような内向的な人間にも、時として、"座りしまま"でハードな一日が訪れる。直近の例が先の日曜日で、夜は「M-1グランプリ」のあとにワールドカップの決勝戦を控えるというのに、昼間は上司の誘いを受けて甲子園ボウルへ出かけた。現地観戦は最近4年間で3度目。私にとっては宴席より楽しめる忘年会のようで、後先のことは度外視すると決めた。今季は互いにディフェンスチームが強力な関学大と早大の対戦は、第2クォーターまで得点はフィールドゴールのみ。寒風のもと、ロースコアのままハーフタイムを迎えた。本場NFLはハーフタイムショーも桁違いで、第50回の記念大会ではコールドプレイに続いてブルーノ・マーズが登場、そこへビヨンセまで加わった豪華絢爛な共演は、異ジャンルが融合した意外性も相まって、7年近く経ついまも記憶に新しい。

甲子園で関学大の5連覇を見届けたあとは近所の「雅屋」でそばを啜り、「カーベ・カイザー」でシュトレンを持ち帰り、家に着けばワールドカップに備えて仮眠をとるはずだった。冷えた身体をシャワーだけで温めた頃、ちょうど真空ジェシカが登場し、密かに応援していたカベポスターはすでに出番を終えていた。録画で見るはずの「M-1グランプリ」だったが、生放送の魅力には抗えず、仮眠の予定は断念。ウエストランドが優勝を決めた頃にはすっかり眠気も削がれ、日にちをまたいでワールドカップ決勝のキックオフまで起き続けたら、PK戦にもつれる歴史的な激闘が待っていた。床に就いた頃には、5時半のアラームが鳴るまで2時間未満。社会人としては、完全なる選択ミスだ。加齢のせいか疲労が抜けず、いつにも増してぼんやりとした頭で1週間を過ごす羽目になった。

こんな調子で生きてきた私には、満55歳になれば退職したい願望がある。就職16年目の今年は、32年を予定する職歴の半分に達したことになる。この年末年始は、いわば後半戦を控えたハーフタイム。同僚のなかには九州一周旅行など豪勢な予定を控えた者もいるというのに、私は今年も寝正月だ。多少の贅沢なら許されるだろうかと、父の命日も19回を数えた明くる日、クリスマスの今日は、母と地元のレストランへ出かけることにした。1919年築の洋館をリニューアルして15周年という「ル・アン」には、歩いても30分あまり。スーパーボウルのようにはいかず、九州一周は出来なくとも、オマール海老のローストに心まで満腹のハーフタイムショーだった。

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