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ラジオとノイズ 第3のリベロ Vol.35

♪小さい頃はこの世界に 
 生きてるのはあたしだけなのかもと 
 不安になった時に必ず 
 「違うよ」とノイズ混じりに叱られた

aikoの曲はよく聴いたことが無かったが、最近知ったこの「ラジオ」には惹かれた。2011年にリリースされたベストアルバムの初回盤の特典として収録されていた楽曲で、今月はじめ12年以上を経て配信リリースが決まったという。ノイズ混じりというフレーズを、若い人たちは理解できるのだろうか。私が暮らしていた団地では、ラジカセのアンテナをどんな風に伸ばしてみてもFMの電波はきれいに届かず、もっぱら合わせていたAM1179・MBSラジオの「ヤンタンはなまるリクエスト」も、若かりし頃の上泉アナや西アナの声がたびたびノイズ混じりに聴こえた。

小中学校の頃は、寝室にテレビが無いのが不満だった。当時から内向的だった私はリビングでぼんやり過ごすことが多く、テレビばかり視聴していた。寝室にあったら絶対に勉強しないからと、わが子の自制心の不足を重々承知の両親は頑なに2台目のテレビを置いてくれなかったが、とかく抜け道を探すのが怠け者というものだ。寝室に移動しても親の目論見どおり勉強することもなく、眠りにつくまでの時間、テレビに代わる友はラジオだった。  

大人になって自室に待望のテレビを備えてからというもの、ラジオを聴く習慣は永らく途絶えていた。きっかけとは思いがけず訪れるものなのか、行きつけの理髪店で耳に入ったガールズバンドの歌をもう一度聴きたくなり、今さらradikoのアプリをインストールすることに。金曜19時台のFM802、DJが女性だったことを手がかりに番組表から当たりをつけ、板東さえかの「Poppin’FLAG!!!」を再生してみた。そのバンドの名はサバシスター、曲は「マイベストラブ!」だった。

「こいのうた」のGO!GO!7188を思い出す歌声から想像したよりメンバーはずっと若く、まだあどけない顔立ちだとわかった。月曜から木曜の21時以降に連日「ROCK KIDS 802」を届けているのは、オチケンこと落合健太郎。ごく短期間で続々と新たな情報をもたらしてくれたラジオはさらに、素人にも天才とわかる若きアーティストを教えてくれた。今月の邦楽ヘビーローテーションナンバー、「ラララさよなら永遠に」を手がける森大翔のギターと声は、いま私の脳裏でも再生が止まらない。

ジャニーズに続いてはタカラヅカか、華やかな舞台の裏で横行していた陰険な加虐の実態。羽生結弦は誹謗中傷や過剰取材を苦にスピード離婚を発表、ファンでも何でも無い私でさえ気の毒になる。スマホを介して聴くラジオの音は劇的にクリアになったが、世間から聴こえてくるのはうんざりするほどのノイズだ。せめて1日の最後くらい、寝床につくまでぼんやり過ごしていたい。何年もラジオを忘れていたけれど、それは不安や憂鬱をひとときでも紛らわせてくれる友だった。

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