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映画をよむ

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観た映画について、考えたことを書いています。
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記事一覧

何かになれなくても生きる意味がある、映画『あん』を観て

昨日、映画『あん』を観た。 不自由さの中で生きる人々の物語。切なく、美しい人の姿が描かれていた。 生きる意味とは? 働く意味とは? 映画を観る中で、そんな問いが何度も浮かんできた。 序盤から、いくつかの疑問を抱えながら映画を観た。 とくえさん(樹木希林)は、なぜ時給600円のどら焼き屋で働こうと思ったのだろう。 70歳を過ぎて、立ち仕事で思いものを運ばなければならない時もある。 最初は、孤独なのかな、と見ていた。旦那さんが亡くなって、独りぼっちで…。人間、社会と

運命なんてないんじゃないか、『この世界の片隅に』を観て

昨日、『この世界の片隅に』を観た。 優しく包み込んでくれるような温かみのある作品。 最も印象に残ったのは、主人公すずの義姉けいこさん。 「私は好いた人にはよ死なれた。店も疎開で壊された。子どもとも会えんくなった。ほいでも、自分が選んだ道の果てじゃけえ。その点あんたは、周りの言いなりに知らん家に嫁にきて、言いなりに働かされてさぞやつまらん人生じゃろう思うわ。」 物語終盤の、けいこさんの台詞。 最初に登場した時、けいこさんは少し嫌な人だ。弟の嫁であるすずさんに嫌味を言っ

映画『劇場』、人間の弱さが表現された行定監督の最高傑作

1、作品概要作品名:『劇場』 監督:行定勲 原作:又吉直樹 製作国:日本 上映時間:136分 製作年:2020年 7/17に公開された映画『劇場』を鑑賞しました! 映画館と、AmazonPrimeの同時公開は非常に新鮮ですよね。この映画、元々は全国280館で公開予定が、コロナの影響で20館に縮小されたそう。とはいえ、本当にいい映画だったので多くの人に届いてほしいと願っています。 『劇場』は、私がここ最近観た映画の中で最も心に残る作品となりました。本当に、本当に、良かった

『アス』、張り巡らされた伏線が凄かった!

1、作品概要作品名:『アス』 監督:ジョーダン・ピール 脚本:ジョーダン・ピール 製作国:アメリカ 上映時間:116分 製作年:2019年 『ゲット・アウト』でアカデミー賞を受賞した、ジョーダン・ピール監督の『アス』を鑑賞しました。 ドキドキする展開で目が離せませんでした! 『ゲット・アウト』を観た経験から、どんな伏線があるのだろうと考えながら観るのが非常に楽しかったです。 今回の記事では気になった伏線について書いていきます。ネタバレ含みますので、ご注意下さい! まず

「人生に必然はない」、映画『マグノリア』が教えてくれること

1、作品概要作品名:『マグノリア』 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 脚本:ポール・トーマス・アンダーソン 製作国:アメリカ 上映時間:187分 製作年:1999年 友人がオールタイムベストと言っていたことから、映画『マグノリア』を鑑賞しました! 始めは全くつながりのない状態から、「誰かと誰か」がつながっていく9人の群像劇。そして、大量の蛙が空から降ってくるとんでも展開。情報量が多すぎて、1度観ただけでは掴みきれていない点もあると思いますが、友人がオールタイムベストと

物語が二転、三転、100年前のどんでん返し映画『カリガリ博士』が面白い!

作品名:『カリガリ博士』 監督:ロベルト・ウィーネ 脚本:ハンス・ヤノヴィッツ、カール・マイヤー 出演者:コンラート・ファイト、ヴェルナー・クラウス他 製作国:ドイツ 上映時間:67分 製作年:1919年    後世のホラー映画に多大なる影響を与えたといわれる、ホラー映画の祖『カリガリ博士』を鑑賞しました! 100年前に製作されたドイツ表現主義の代表作、100年も前の作品とは思えないぐらいに凝られていて、素晴らしかったです。 まずはあらすじを… あらすじ:物語は、若者