見出し画像

人間への解像度が高いドラマ・漫画『作りたい女と食べたい女/ゆざきさかおみ』

人に対しての解像度が高い人間になりたいと思うばかりだ。
人間に対しての眼差しが優しい作品を観たり読んだりするたびにその思いが強くなる。

ここ2~3週間観ていた「作りたい女と食べたい女」、通称「つくたべ」である。
これはもともと漫画の作品なのだが、この度NHKでドラマとして放送されたのだ。作品名は知っていたけど、まだ読んでいなかったのでドラマ視聴にあたって読んでみた。まだ3巻しか発売していないというのにドラマ化とは、すごい人気である。

料理を作るという行為が大好きだが、作っても食べきれない。
そんな「作りたい女」である野本ユキ。
そんな彼女がストレスからうっかり食べきれないほどの料理を作る。
そんなとき2つ隣の部屋に住む春日さんのことを思い出し、勇気を出して夕食に誘い―…?

これが「つくたべ」のあらすじである。この「作りたい女」である野本さんと「食べたい女」である春日さんが一緒にご飯を作り食べることを通じて心を通わせ、想いが膨らんでいくという話だ。
好きで作っている料理の出来を勝手にジャッジされ、挙句の果てには「良いお嫁さんになる」と宣う会社の同僚。当たり前のようにご飯を少なく盛られる定食屋。
女性に生まれてくるとこれらあたりの経験はひと通り済ませてるんではないだろうか。
またイベントごとになると一緒に過ごす恋人はいないのかとしつこく聞いてくる人たち。
こういう色んな「当然の前提」に息苦しさを感じている描写がたくさんあって、私はすごく慰められるのだ。そういうつもりでやってるんじゃねえ!とかなんで女ってだけで料理ができるとすぐ嫁とかに結び付けられるんだ!みたいな怒りを一緒になって怒って悲しんでくれるような作品である。

ドラマの出来もすごくよくて、野本さんが春日さんへの気持ちに気づくところなんかはこれぞ胸キュン、これぞときめきと拳を握った。
「つくたべ」に出てくる野本さんと春日さんは、知り合って距離を縮めていくなかで自分のなかにはななかった相手の考えなんかを否定することはまずない。
互いのことだけではなく、他の人にもそれらを持ち込まない。
これはドラマ化の範囲よりもずっと先の漫画のエピソードなのだが野本さんと春日さんの間に空いた部屋に人が入る。
これが「食べたくない女」こと南雲さんである。
作ること食べることが大好きな二人が食べることがあまり好きじゃないん南雲さんを尊重した行動をするところがめちゃくちゃに好きなのだ。
こういう人間への解像度が高い、自分とは違う考えや行動をする人でそれらが世の中でいうところのマイノリティ側に属するようなことであっても「あ、そうなんですね」と存在を否定せず受け入れるところが人間への解像度(多種多様な人がいて当然である)が高い。
相手のことを好きになるとは。家族とは。
それは限定的なものではなく、そのあたたかさは色んな人が手にして良くて、手にできるものだと「つくたべ」は発し続けている。そのメッセージ性も大好きだ。
原作もドラマもとっても素敵だった。自分のフィルターや定規を通すことなく相手のことを受け入れることができたら、自分との違いにもっと寛容になれる人が増えたら。そう思わずにいられない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?