トマトジュース

「このトマトジュースは一瓶で三千円もするんだよ」

妹からの北海道土産は重そうなガラスの瓶に入っていた。傾けるとドロリと濃厚なジュースだ。

「私が人生で飲んだ中で最高のトマトジュースだったよ」
「へぇー、そうなんだ」

そう答えながら、私の「自分史上最高」のトマトジュースって何だったかな、と考えていた。

昨年の春、祖父と初めて飛行機に乗った。祖父はこれまで旅といえば自身が運転する車ばかりで、飛行機は初めての経験だった。

「おじいちゃん、飲み物色々あるよ。コーヒーとかも貰えるけど、おじいちゃんの好きなトマトジュースもあるよ」
「じゃあ、トマトジュースで」

紙コップに入ったそれを受け取って飲むと「なかなかうまいな」と一言。

私は隣でコーヒーを飲みながら、私もトマトジュースにすれば良かったかな‥と思ったんだった。

自分史上最高のトマトジュースは、まだ飲んでなかったのかも。またおじいちゃんを誘って飛行機に乗ろう。その時は私もトマトジュースを頼まなくちゃ。三千円のトマトジュースにはかなわないよ、と言う人がいても。

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