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1.命題採集(一巻14章)〈アリストテレス『トポス論』岩波新版 第一巻 46-50頁 読書録6〉

問答法的議論の種類

i..推論
→その中でいくつかのことが措定されることによって、それらの措定とは違う何かが必然的に、それらの措定を通じて、帰結するような議論(22頁)
ex.
「思考するものは存在する」と「私は思考する」という二つの措定から、「私は存在する」という、それら二つの措定とは別のものを帰結する議論。

→より強制力があり、争論家相手により効果的

ii.帰納
→個別から普遍に至る道筋
ex.
「最も有能な操舵手(そうだしゅ)は知識のあるものである」「最も有能な馭者(ぎょしゃ)は知識のあるものである」「最も有能な車の運転手は知識のあるものである」の三つから、どんな事柄も、知識のあるものが最も優れていると帰結する議論。

推論を十分に扱う為の四つの道具

問題(問答法的命題)
→議論がそれについてなされるもの

命題(問答法的命題)
→議論を構成するもの

→問題と命題は、先行の議論で、四つの述語様式(定義、固有性、類、付帯性)にもとづき区別された。

こうした問題と命題を通じて、推論を十分に扱う為の道具(※述語様式と違う)は以下の四つ。

1.前提命題

2.多義性
ex.
「望ましいものは、立派なものか、快いものか、有益なものかのいずれかである」

3.差異、種差
ex.
「感覚の知識との差異は、後者は失っても再び得ることができるが、前者はそれが不可能であることだ」

4.類似性
ex.
「健康的なものの健康に対する関係は、強健的なものの強健に対する関係と同様である」

この稿では、1.前提命題 の紹介に留める。

1.前提命題を得ること(第14章)

命題の区別に見合う仕方で、諸々の命題を採集する。

・全ての人の見解
・大多数の人の見解
・全ての知者たちの見解
・大多数の知者たちの見解
・最も著名な知者たちの見解
・学問や技術にもとづいた見解

・実際に一般的な考え(エンドクサ)である見解
ex1.
「同じ知識が互いに反対のものを対象とする」
論理的であることを知ることは、同時に、非論理的であることを知ることでもある。
ex2.
「我々は何かを受け容れることによって見るのであって、発出することによってではない」

・実際に一般的な考え(エンドクサ)に似た見解
ex1'.
「同じ感覚が互いに反対のものを対象とする」
視覚が明暗を、触覚が鋭鈍をetc
ex2'.
「我々は何かを受け容れることによって聞くのであって、発出することによってではない」
視覚(ある感覚)がそうだから聴覚(他の感覚)もそう

・一般的な考えのように現れるものとは反対の見解の、それの否定の形の命題

・命題と問題の三つの区分
i.品性に関わる命題
ex.
「両親と法律が食い違う場合には、両親の方に従うべきか」
ii.自然に関わる命題
ex.
「宇宙は永遠であるか否か」
iii.理(ことわり)、論理に関わる命題
ex.
「同じ知識が反対のものを対象とするか否か」

→前提命題を得るには、あらゆる命題をできるだけ普遍的に把握し(命題の主述各々の対置されるもの、反対のもの、関係的なもの等から)、その一つの命題を多くの命題にしなければならない

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