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組織成長の壁を突破し続ける創業メンタリティ

市場のニーズに事業の強みがマッチして、どんなにモメンタムが出ている組織であっても、成長するにしたがって徐々に規模と複雑性の重圧を受けて失速していく。

組織成長の壁を突破し続けるために何が必要なのか。

かつて、度重なる経営陣の交代で組織の複雑性が増して、倒産寸前まで追い込まれたAppleがスティーブ・ジョブズの復帰によって奇跡的な復活を遂げ、アメリカ初の1兆ドルの時価総額を記録した要因の一つは、創業メンタリティにあるとされています。


今回はベイン・アンド・カンパニーが調査結果に基づいて導き出した『創業メンタリティ』を参考に成長ステージに応じた壁と打ち手を考察します


成長企業の3つの壁

成長企業には下記の3つの壁が立ち塞がります。

①過重負荷(オーバーロード)

規模の拡大に応じて組織の機能不全と対外的な勢いの喪失が生じていく

ex)評価制度の粗による貢献意欲の低下
かつては全員一丸で会社業績を高めることに意欲を持っていたが、気付けば、各々が個人の評価を気にするようになり、評価されないと危惧する行動を避けるようになる

②失速(ストールアウト)

急速に成長するうちに組織が復雑化・階層化し、かつて組織にフォーカスと活力を与えていた明確な使命が見失われて、業績が伸び悩み、後発企業に追い上げられる

ex)ミドルマネジメントによる経営と現場の接続不全
かつては顧客に対する提供価値を高めるアイデアが現場で飛び交っていたが、予実管理が強くなっていく一方で、短期目線の会話が増えて、気付けば顧客にサービスが必要とされないケースが増えている

③急降下(フリーフォール)

そもそもの原因が特定できないまま、コア事業の成長が完全に止まり、ビジネスモデルが通用しなくなる

ex)現実の変化を軽視した事業計画による目標管理の形骸化
かつては高い成長率を誇っていたにも関わらず、目標未達が常態化して、非現実的とかんじる叱責が飛び交い、自社の未来を不安視をする声が散見される

これら3つの危機は、順調に成長してきた企業にとっても不意打ちのように多大なリスクとストレスを与えますが、これらは文化が起因しているため、予期可能であり、避けられる危機だとしていることが『創業メンタリティ』の重要な示唆です。

創業メンタリティ

立ち塞がる壁を越えるための創業メンタリティは下記の要素で構成されています。

(1)革新志向

①大胆な使命
Check)事業の目的は自社のミッションに沿っており、組織に活力を与えるものとして機能しているか?
Action)事業方針に込められる意義を共有する機会を定期的に設ける

②尖り
Check)自社の差別化要因となる強みに共通認識があり、維持向上できているか?
Action)顧客支援で他社と差別化される自社独自の提供価値を考え、日常業務で意識するためのワークを実施する

③無限の広がり
Check)市場の変化に適応するために、中長期視点で試行錯誤して強みを伸ばす経営努力をしているか?
Action)市場ニーズの変化を言語化して、現在3年後の自社の姿を見据えた事業開発/推進を行う

(2)現場へのこだわり

①絶えざる実験
Check)現場で自社の競争力を高めるためのチャレンジが行わられ、フィードバックが行われているか?
Action)顧客から感謝されたノウハウの共有機会を設ける

②現場への権限委譲
Check)特定領域の責任者を担うマネジメントを確保でき、活躍させることができているか?
Action)役割責任と権限が一致しているかをモニタリングする

③顧客支持獲得への執念
Check)ロイヤルクライアントが継続的に生まれているか?
Action)年度ごとの顧客リストの変化と理由を総括する

(3)オーナーマインド

①キャッシュ重視
Check)事業投資ができるように日頃からコスト意識が高いか?
Action)何のために経費を使うのか、いくらの利益を生むのか日常会話の基準を高める

②行動への衝動
Check)出る杭は打たれることを恐れた保守的文化に陥っていないか?
Action)実行責任の伴う改善起案を賞賛する

③反官僚主義
Check)非効率なレビュープロセスで意思決定が遅滞していないか?
Action)誰が何を目的にレビューする必要かあるのかレビュープロセスのそもそも論を交通整理する

事業/組織の規模が大きくなるにつれ、複雑性が増すことでオーバーロード、ストールアウトの危機が生じる確率は高まっていくため、対策として創業メンタリティを意識した組織づくりは持続的成長のための勝負となります。

著者の中でも注意されていますが、特に複雑性が増す組織の課題に、とにかく人を充てようと、質を疎かにした採用を急激に進めると、リスクが堆積されていきます。
創業メンタリティの伴う文化をつくるための採用と登用はウォーフォータレント時代の重要な組織戦略です。



また、組織構造はマネジメントとリーダーシップが活きる設計でなければ社内闘争が誘発されて目線が内向きになっていることにも注意が必要です。


成長し続ける企業の存在が経済を活性化させる

『創業メンタリティ』の日本版序文には、下記が日本の国力を高めるための突破口とされています。

日本では、雇用創出のエンジンとなり、グローバル市場を制し、持続的価値創造企業(SVC)としての地位を確立するような、創業者率いる企業が生まれなくなったのだ。
我々の言うSVCとは、急速に成長し、経済に大量の雇用を生み出し、大きな価値を持続的に創造する(売上と利益の成長率が5·5パーセント以上)革新的な企業を指す。



また、同書では、成長し続ける企業は、採用、育成、昇進、定着に多大な時間を投資して、ゼネラルマネジャーや社内のミニ創業者を育成していることが述べられています。



ウォーフォータレント時代で人の希少性は増していく一途だからこそ、組織の成長ステージが進むほどに、人と組織にこだわる企業が、人の力でさまざまな課題を解決することができ、成長し続けて、社会にインパクトを生み出していけるのではないでしょうか。

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