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「彼女はキレイだった」ーあなたが私に気づくまで・・・・・(すべてネタバレ)補足版

<はじめに>

ちょっとしたボタンの掛け違いで、物事が思わぬ方向に進んでしまい、取り返しのつかない事態を引き起こすことが、人生にはある。これは、本当ならすぐ出会うはずだった主人公の二人が、ヒロインのちょっとしたためらいで叶わず、遠回りをしてヒーローがヒロインに気づくまでのお話。ヒロインの優しさが素敵です。

<ヒロイン キム・ヘジンと言う女性>

今までのドラマのヒロインと違って、完全無欠で美人のスーパーレディーではない。彼女は自分について次のように言っている。

「ある日こんなことを考えた。主人公はドラマの中だけに存在するわけじゃないって。現実でも主人公と脇役は分かれてる気がする。きっと私は“友人C”くらいかしら。もしくは、スポットライトとは無縁なただのエキストラかも」

彼女の風貌と言えば、チリチリ頭でソバカスだらけの赤いほっぺた。おしゃれにはとことん無頓着。黒のローファーに白ソックス姿を「マイケル・ジャクソン」に似ていると言って「ジャクソン」とあだ名されちゃってもいる。でも少女時代のヘジンは、美少女で聡明「超イケてる女の子」だったのに、思春期を境に今のようなヘジンに変貌してしまったらしい。

でも彼女の魅力は、限りなくみんなに優しく、思いやりがあって、献身的で、人が良くて、人を信じ安くて、駆け引きができなくて、能天気で、ちょっとドジで、不器用で、謙虚で、素直で・・・・・すっごく可愛いところだ。最後には、誰だって彼女を好きになってしまう、そんな温かい女性だ。そして他者の痛みを思って涙を流す女性でもある。

いつだって、みんなのために全力で動き回り、帰宅時のバスの中では、クタクタ、ヨレヨレでグルグル船を漕いで爆睡している。今まで見た韓国ドラマのヒロイン像とは対照的なこのヒロイン、一見全く目立たない地味な存在なのに、何故か見ている私を引きつけた(今まで見たドラマのヒロインの中で一番感情移入できた気がする❣️)

❤️こんな彼女に二人の男が恋をする。このうちの一人は、二度も彼女に恋をする

<ボタンの掛け違いで>

キム・ヘジンとチ・ソンジュンは幼なじみの同級生。過去のソンジュンは太っていて、さえない、いじめられっ子の男の子。ヘジンはそんなソンジュンをいつもかばい、励ましてくれたただ一人の友達。だからソンジュンは、家族とアメリカに移住しても、ヘジンが忘れられない初恋の人として心に残っている。別れる時、再会を願って、ルノワールの「田舎のダンス」のジグソーパズルの1ピースを手渡されたヘジン。それは隠し絵のような「のぞく女」のピースだった(今後の彼女の行末を暗示している。彼女はこの「のぞく女」の立場に身を置くことになってしまう)

手紙のやりとりがしばし続いたものの音信不通に。15年後、突然ソンジュンから帰国するとのメールが入る。会いに出かけるも、「超イケてる男」に変身していたソンジュンに気後れして会うことができなかったヘジンは、彼女の親友で美人の同居人ミン・ハリに身代わりを頼むことに。だから、当然ソンジュンは、ハリをヘジンだと信じている。

<運命のいたずらか、偶然か?>

そんな2人は、雑誌社の副編集長と部下という関係で働くことに。こんな偶然に動揺するヘジン。超かっこいい有能上司ソンジュンの元では、緊張のあまりドジばかり。叱責され、怒鳴られっぱなし。まともに名前も呼んでもらえない屈辱的な日々。終いには、彼にクビにされてしまう。本当は仕事ができるのに・・・・・。「彼と私の間にはマジックミラーがあるの」ヘジンには彼のことがよく見えているけど、ソンジュンには彼女のことは見えていない。「本当のヘジンは私なの」気づいて欲しい、いや今の自分は気づかれたくない。いつも揺れる思いで彼を眺めているヘジンである。あのパズルの女性のように。

ヘジンが自分の身分を明かせないまま時が過ぎるうち、身代わりになったハリが、ソンジュンに恋してしまう。ハリは、そんな自分に罪悪感を感じつつも自分の思いを止められない。ヘジンのフリをしてソンジュンに会いに行ってしまう。

<そんなヘジンに恋した男 キム・シニョク(キム記者とヘジンは呼んでいる)>

そんなヘジンの様子を見つめている男、同僚のキム記者。彼はドラマの最初から最後まで、ヘジンに寄り添い、かばい、守り、ヘジンがソンジュンに恋焦がれているのを承知の上で、彼女を愛している。このキム記者が、とっても存在感があって魅力的な男なのだ。このドラマの中で、パク・ソジュン演じたソンジュンよりずっと(🤭)カッコ良かったと思う。彼の振る舞いが心憎いのだ。ここぞと言うところで、いつもいい働きをする。恋路の邪魔もするけど。

キム記者は、ソンジュンがヘジンのことを意識し出していることに気づき、彼に挑むシーンがある(ソンジュンはハリが演じているヘジンと目の前のヘジンの間で葛藤している。目の前のヘジンにどんどん惹かれ始めている自分に罪の意識を感じて、ためらっていたのだ)

キム記者   「いったいどうしたんですか。理性的な人なのに。ヘジンさんの
        ことになると感情的になる。彼女が好きなんですか?」(中略)

       「ヘジンさんのことが好きなのでは?思考と感情が一致しない 
        時、人はためらうと最近聞きました。ためらっていますね」

ソンジュン  「いい加減にしろ。じゃあ君は?なぜ彼女に構う?」

キム記者   「好きなんです。僕は、、、キム・ヘジンが好きです。答え
        ましたよ。」

これはキム記者が、ためらっているソンジュンの背中を押したのだと思う。恋のライバルなのに。

故障車で出張に出かけてしまったヘジンの身を案じ、迎えに行ったのは、バイクでキム記者、車でソンジュン。一足先についたソンジュンはヘジンの無事を確認し思わず彼女を抱きしめる。ヘジンは、自分のことより雨の中を運転してきたソンジュンを気遣う。ソンジュンには雨の日に事故で母を亡くしたことのトラウマがあったから。

それを見つめるキム記者の姿が。彼にとっては残酷な光景だったろう。彼は事故を起こし、バイクが破損し、自身も怪我を負っていたが、「自分も助けに行った」とは最後まで言わない(ヘジンは、後になってそのことを知る。ヘジンはキム記者の思いを知るが故に、心苦しさを感じてもいる) 二人の男に愛されてるなんて・・・・・。もし、ソンジュンが初恋の相手ではなく、なんのしがらみもなく彼女の前にこの二人が現れたら、彼女はどっちを選ぶだろうか?

<残酷な現実>

この事故の日、ヘジンは真実を打ち明けようと思い直し、ソンジュンの住まいを訪ねる。玄関ホールで見たものは、ソンジュンと向き合ったハリの姿が。驚きのあまり、呆然自失のヘジン。どこをどうして来たのか、自分のいる場所さえわからない。そんなヘジンを向かえにきたのは、先ほどのオートバイ事故で傷を負ったキム記者だった。傷の治療中だったのに。

彼から「ハリを問い詰めるのか、ソンジュンに打ち明けるのか?」と問われ、ヘジンは「ハリからの説明を待つ」と答える。ヘジンは、自分がソンジュンに嘘をついたように、ハリにも訳があったはずだからと。そんなヘジンに「その友達は幸せ者だな。お前みたいに信じてくれる友達がいて。羨ましい。」とキム記者が言うと、ヘジンは、「ハリだから。私の友達のハリだから」と。

そして、キム記者も、別れ際にヘジンから「ソンジュンが好きだ。ソンジュンも同じ気持ちみたいです」とキッパリ言われてしまう。それでもヘジンを思って尽くすキム記者・・・・・。愛する人が目の前で、違う男にどんどん惹きつけられていく状況が、彼の心をどんなにか苦しめたことだろう。

<運命の日>

あの雨の中でソンジュンに抱きしめられて以来、ヘジンはソンジュンを異常に意識してしまい、緊張して、すごく気まずい思いをしている。そんな時、ソンジュンを訪ねる用事を頼まれ、彼の部屋に招かれる。極度に緊張しているヘジンに、ソンジュンが告白する。

「最初は君が目障りだった。でもいつからか君と一緒にいるのが楽しくなった。誰かに対して罪を作る気がして、わざと嫌おうとしたけれど昨日はっきりした。もう自分の気持ちを否定できない。君が気になるんだ。すごく。」

「困らせてごめん。別に何も望んでない。ただ気持ちを伝えたかった。・・・・・・・」「最初は君が知り合いと重なって気になり始めた。どうしてなのか、昔からの知り合いのような気もした。君の前では、不思議なほど素直になれた。無意識に自分をさらけ出せる。もっと話を聞いて欲しくなった」

その瞬間、長い間思い続けてきたヘジンの心が満たされた。一粒の涙がこぼれる。それでも自分があの昔のヘジンだとは言わなかった。潤んだ目で、

「目にゴミが入った」

とだけ。長い間胸にしまい込んだために言えなくなってしまったのか。ハリのことを思ってのことか。「思考と感情が一致しない時、人はためらう。そんな時は直感に従う」の言葉通り、ソンジュンは自分の感情に従った。

現実は残酷にできている。ハリが真実を打ち明ける予定だったその日、ソンジュンがハリの正体を知ってしまう。そして、とうとうソンジュンとヘジンは昔の同級生として再会を果たす。

<三角関係の話でもあるのに、こんなにも優しい>

*ヘジンとハリとソンジュン

ヘジンとソンジュンは再会を喜びあったが、ヘジンはハリがソンジュンを好きだということを知って、ソンジュンへの思いにふたをする。そんなヘジンを理解できないソンジュンに、彼女は思いを語る。

ヘジン   「ハリがあなたのこと大好きなの。一人で悩みながら私のフリをし
       て、会ってしまうほど大好きなのよ。今あなたの恋人になった
       ら、ハリが傷つく。私も心苦しい。ハリを傷つけてまであなた 
       の恋人にはなりたくはないの」(ハリはヘジンにとって家族同然に
       大切な人だからと)

ソンジュン  「すごいな、キム・ヘジン。昔より優しくなったんじゃないか?
        うれしいよ、やっぱり君だ」
(と、時が来るのを待つことに)

ハリはそんなヘジンに気づき、自分はもう大丈夫だから、ソンジュンを受け入れて彼の元へ行って欲しいとヘジンに言う。「私と会っていた時も彼の心はあなたを思っていたのだから」と。この言葉でヘジンはソンジュンを受け入れることを決意する。そして、ソンジュンの机の上にあったスケッチブックに、たくさんの自分のデッサンを発見した時、彼の自分への思いを知り涙する。

*ソンジュンとヘジン

それ以降のソンジュンは人が変わったように明るくなった。ヘジンの存在の大きさが分かる。「もうあなたを一人にしない」と言ったヘジンの言葉が、今まで孤独に耐えてきた彼をどれほど勇気づけたか。

ヘジンの家族の温もりも寂しかった少年時代の傷心を癒やしてくれたはずだ。第13話ヘジンの実家で食事をしていた時の彼の表情が気になった。ヘジンの両親に厚くもてなされ、とても戸惑った表情をした。このことに触れた会話はなかったけれど、ここで敢えてソンジュンにこのような表情をさせたのはなぜなのだろうか。

恐らくソンジュンには、母を12歳で亡くして以来、こんなにも温かい団欒を体験することがなかったのではないか。叔母さんが母親代わりと言っても、母を亡くした喪失感、寂しさをずっと抱えて生きてきたであろうから(雨の日の事故のトラウマに苦しみながら)。だからそんな自分がこんなにも温かく迎え入れられ、家族同様に扱われて、ヘジンの家族の優しさに触れたことで、ついぞなかった体験に戸惑いを感じたのではないか。そんなソンジュンの心を描きたかったのかな、なんて考えた。

また湖でのピクニックで、ヘジンがいなくなった時にもソンジュンは同じように不安に駆られた表情をした。ここでも、彼の失うことへの恐れと不安が思わず表情に出たのだろうか。ヘジンが戻ってきた時、半分怒った様子だった。その思いが、プロポーズすることを決意させたのではないだろうか。もう彼女を2度と失いたくないと!彼はここで告白している、15年間ずっとヘジンを思い続けてきたこと。これからもずっとヘジンのそばにいたいこと(韓国のドラマはすごい!15年間一途に1人の女性を思い続ける男性という設定が成り立つなんて・・・我々にはちょっとファンタジーの世界だ)

ヘジンは温かい環境ですくすくと育った「やさしい子」だ。あの子供の頃のヘジンもそうだったように、どこまでも優しいヘジンに再会した時、ソンジュンはやっと心の安寧を得たのであろう。そんな彼に「この家族の一員になれるのがうれしいよ」と言わせている。

ヘジンを別の人物だと思っていた時でさえ、彼の寂しい心の琴線に触れたのは、子供の時の記憶にあったヘジンの優しさを蘇らせる目の前のヘジンのやさしさだった。だから「なつかしさ」を感じていたのだろう。あんなに目障りだった彼女が彼の心を捉えて離さなくなっていったのだろう。あの時のソンジュンは、笑顔になるまいと尊大に振る舞い、ヘジンに対しても横柄であった。

そんなひどい仕打ちにもめげず、ヘジンは優しかった。その優しさが彼の心を溶かしたのだろう。それにしても、「おい、管理」と呼んでいた頃のソンジュンは、嫌な男だった。よくヘジンは耐えたと思う。「辛い思いをさせた」とソンジュンは言っていたが・・・。あのロケに行った時がターニングポイントでしょうね。少年ソンジュンは、屈折していないいい子そうだったから。本人も言っているように素直になれたのでしょうね。

一方、ヘジンもソンジュンの「チャンスの神様」の話に触発され、自分の進みたい方向に歩き出す。

*ヘジンとキム記者

廃刊の危機にある雑誌の一位奪還の使命をおびて派遣されたソンジュン。孤軍奮闘するあまり過労で倒れる。病院に向かおうとしているヘジンの前に、キム記者の運転する車が止まる。早く乗れと促すキム記者に、

ヘジン  「ソンジュンの所へ行くので乗れません」(そんなヘジンを車に押し込
      み、病院に運ぶ。が、ヘジンはソンジュンが心配なのに去り難
      く、涙を浮かべてキム記者に詫びる)

     「私ってひどい女ですよね。キム記者はすごくいい人なのに。いつも
      優しくしてくれて、一緒にいるとすごく楽しくて、私の大事な..... 
       (言葉にならない)

キム記者 「ジャクソンこそ優しいな・・・・・ためらってくれてありがとう」

ヘジンの心はソンジュンにあるのを承知の上で、こんなにも彼女に優しくできるなんて。よく「愛は与えるものだ」と言うけれど、ここまでできるものなのだろうか。ヘジンもソンジュンも知らないところで、キム記者の果たした役割は大きい。この人の献身があってこそ、二人はあの日の同級生として再会できたのだ。

三角関係のドラマは嫌いだけど、今まで見たドラマの後味の悪い三角関係と違い、憎み合い、奪い合い、おとしめ合うことがなかった。あくまでも他者を思いやり優しく、最後には良き友として関係を昇華させた。キム記者のヘジンに言った最後の言葉 :

「俺はお前が大好きだ。性別なんて関係なく、人としてキム・ヘジンが大好きだった。ありがとう。お前のおかげで、本当に楽しかった。」

これぞ「恋愛の美学だ👏👏」と思う。恋に敗れた男に、ここまで言わせるほど、ヘジンと言う女性は誠実に人に向き合う人なんだと思う。

究極の愛は、キム記者からのヘジンとソンジュンへの贈り物「雑誌の一位奪還」キム記者の自身に関わるスクープ記事を独断で掲載し奇跡を起こした(この人、正体を明かさない超有名な作家だった)。でも、これはヘジンへの贈り物だろう。万策尽き廃刊を覚悟したソンジュンに膝枕をして、眠るソンジュンに語りかける。

「かわいそうに。すごくかわいそう。・・・・・本当にお疲れ様」

とボロボロ涙を流すヘジンを見てしまったキム記者からの贈り物だったと思う。自分のこれまでの生き方を投げ打っても、ヘジンの悲しみを取り除いてあげたかったのだろう。そして出版した自身の本の最後には、「親友ジャクソンに捧ぐ」の献辞が・・・・・。

最後に

ヒロインは、冒頭の自身の描写に対して、以下のように締め括っている。

でも今はこう思う。自分を脇役にしてたのは自分自身なんじゃないかって。簡単に何かをあきらめ、現状に甘んじて主役になるチャンスを逃して来たのは、自分自身なんじゃないかって・・・・・

だからこのドラマ、甘いラブストーリーの要素だけではない。ヘジンはーハリもそうだけど、自分を再認識・再発見して、自己実現して行くストーリーでもあるのだ。ソンジュンも母を失った喪失感・トラウマの苦悩が、愛する人に再会し、愛されることで心の傷が癒やされるという再生の話でもあるかも・・・・。

      



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