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ヨシタケシンスケの絵本ー忘れていたあの頃の自分を思い出すための絵本だ、と思う!

なんだろう、この不思議なというか、懐かしいというか、すごく納得してしまう感覚。ホッとため息を出したあとのような気分。何故か心が穏やかになった。

「おしっこちょっぴりもれたろう」に出てくるエピソードは、全て思い当たることばかりだ。「シャツのタグがチクチクして嫌だったこと」「上着を着たら下着の袖がくちゃくちゃに持ち上がってしまったこと」「歯にほうれん草が引っかかって取れなかったこと」そして何より「鼻くそがピロピロと奥に引っかかってでてこなかったこと」などなど。こんな些細な、でも誰もが経験したことのある出来事ー記憶の底に埋もれてしまっていたことーが、よみがえる。とっても些細なことなのだけれど、ついぞ忘れていたこと。この本が思い出させてくれた。

最後は、おじいちゃんに行き着いて、おじいちゃんも「おしっこちょっぴりもれたろう」なんだとわかって、老人の生にまで触れている。

「あんなに、あんなに」は、子育てをした人ならみんな思い当たることばかりだ。「あんなに◯◯だったのに、もうこんな」って。何度感じたことだろう。そして、そんな自分も確かに老いていることを自覚する。子育て中の大変さ、怒り、喜び、つらさ、そして成長した我が子への感慨。愛おしいと思うと同時に感じる一抹の寂しさ。あんなに早く大人になって欲しいと思っていたのに、今は「大きくならないで〜」と思っている自分がいる。読み終わったら、ちょっぴりしんみりしてしまいました。

ヨシタケさんの言葉(2022年6月11日 朝日新聞 be on Saturday から)

ずっと子供目線 ー「大人って偉いな、まじめだなって思います。自分も年齢的には大人なんですが、ずっと子供の目線で世の中を見ている。とはいえ大人の事情も分かるから、それを子供に向けて翻訳することができると思っています。『いつか分かると思うけど、今はそう言われたらむかつくよね』って。」

(世の中の不安定さに対して・・・)
「こういう時世では、どんどん決めていく人、断言する人が注目されるのは分かるんですけど、ことが起きている最中に答えを出すのは難しいはずで、まだよく分からないですと言ってくれる人がいたら僕は救われるだろうな、と思います。すぐ結論を出すべきことと、先送りしたほうがいいことを判断できる力が大事なはずで、急ぎすぎちゃだめだって」

「ただ正論だけ言っても誰も聞かないし、人は正論を言うのは好きだけど、言われるのは嫌なんですね。だから相手の言葉に翻訳する準備ができてはじめて言えることなんでしょう」

これって、エンパシーEmpathyですよね。相手が理解できるように伝えられるということは、相手を理解する能力があるからできることなのだから。ヨシタケさんは、他者の靴をはいてみる人なのです。

 *Empathyとは、他者の感情や経験を理解する能力、例えそれが嫌いな人であ
  っても、理解できるということである。ちなみに日本語の共感は、同じ感情
  を持つ人に対する同調の感情Sympathyである。

ヨシタケさんのような生き方に惹かれます。自分にはできないだろうなと思うけど、この人の作品に触れることで心の安らぎが得られます。ベストセラーということは、多くの人がそんなホッコリする気持ちになりたいと思っているということなのでしょうね。

「あんなに、あんなに」は、4人の子育てに四苦八苦しながらも、みんなが大きくなっちゃうと嘆いている長女に贈ろう。そして「おしっこちょっぴりもれたろう」は、息子のお漏らしに悩まされている次女に贈ろうと思う。

追記 本を読んだ長女の言葉「泣けてきた」・・・・・。



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