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NFTのキャラクターをデザインする①

初めまして。あんぽんたん(ampontant)というキャラクターのNFTコレクションを運営している、君(きみ)と申します。
キャラクターデザインについて私が語るのも烏滸がましいのですが、あんぽんたん をデザインするうえで色々な試行錯誤があったため、自分が振り返るためにも文章として残そうと思い執筆に至りました。

指の上で眠るあんぽんたん

この記事では、NFTについての解説は割愛します。
NFTについてある程度の知識があり、これからプロジェクトを始める方新しくキャラクターのコレクションを始める方キャラクターデザインの依頼を考えている方を読者に想定した記事です。
また、NFTの中でも”ジェネラティブPFP”と呼んでいるジャンルのキャラクターデザインについて記していきます。

ジェネラティブPFP
NFTにおいて、"ジェネラティブ"が指すものは2つあります。1つは、ジェネラティブアートやクリエイティブコーディングと呼ばれる、プログラミングで作品を動的に生成(ジェネレイト)する従来のジェネラティブです。
もう1つは、素体とパーツをプログラミングによって組み合わせることで大量に画像を生成したNFTコレクションを指して呼ぶジェネラティブです。
ここでは、従来のジェネラティブと明確に区別するため、後者のジェネラティブのことをジェネラティブPFPと呼びます。(主にPFPとして使用されることを想定したコレクションが多いため)

制約と基準を整理する

キャラクターを考える前に、まず整理しておかなければならない情報があります。それが制約基準です。
ジェネラティブPFPであるからには、ジェネラティブ(組み合わせで大量に生成)の制約とPFPとしての制約を無視することはできません。

制約
・大量に生成するため、バリエーションを出さなければならない
・PFPで使用される際、画面上での表示が小さい

この制約は、発行数や優先度によってどの程度意識するかが変わってきます。そこで定めておきたいことが、自分の中の基準です。

基準
・画面上の縮小表示か、タップされたりSNSに投稿されたりした際の拡大表示かのどちらで映えるデザインにしたいか
・キャラクターのアイデアやインパクトで勝負したいのか、画力の高さや描き込み量で勝負したいのか

この基準は、この先のキャラクターデザインの過程で何を選択するかの判断材料として使用するので、度々立ち返ってみてください。一貫性のある選択をすることで、キャラクターの強度が増し、狙いに近いデザインに仕上がっていきます
前置きが長くなってしまいましたが、いよいよキャラクターの考案です。

アイデアはいろんな方向性から考える

guru guru

いきなりキャラクターを考えようとしても、すぐに「これだ!」と思えるアイデアが降りてくることはほとんどありません。色んなアプローチを試しながら、魅力的なキャラクターとの出会いを待ちましょう。
私の場合は、下記のようなアプローチをとって考えています。

  • 名前から考える

  • モチーフから考える

  • 特徴から考える

  • メインカラーから考える

  • 大きさから考える

  • 設定から考える

  • シルエットから考える

もちろん、一つの起点から考えても、複数の起点から考えても構いません。場合によっては、プロジェクトのカラーが決まっていたり、モチーフがある程度限定されていたりもあると思いますので、それぞれの条件と組み合わせながら楽しく考えてみましょう。

また、絵柄や情報量から理想のキャラクター像を思い浮かべることもイメージを膨らませることに役立ちます。PintarestやGoogleでキャラクターを検索し、画像を一覧にまとめて方向性を考えるのも一つの手です。

検索した画像をfigmaに貼り付けて方向性を考えていました

あんぽんたん の場合は、設定からキャラクターが生まれました。砂漠に生息する、"身体が水分で構成されたアヒルのような妖精"が当初の設定です。

ジェネラティブPFP用にデザインする

キャラクターを新規で考案せず、もともと自分が描いてきたキャラクターを使う方も少なくはないでしょう。あんぽんたん も、私が何年も前からラクガキ程度に描いていたキャラクターなので、新しくデザインしたものではありません。
ただし、既にあるキャラクターがジェネラティブPFPに向いているとは限らないので注意してください。

当初、NFT用に新しくキャラクターをつくるつもりでいたのですが、それは あんぽんたん がジェネラティブPFP向きではないと考えていたからです。

ラフ案

大量に生成することを考えたとき、服装のバリエーションが出ない(服を着せるつもりがなかった)、色のパターンに限りがある(単色で考えていたため)、素体のインパクトが弱いなどなど、採用に踏み切れない理由がいくつもありました。

その時は、あんぽんたん のキャラクター設定を忠実に守ることを前提としていたために視野が狭くなっていましたが、思い切ってジェネラティブPFP用にリデザインしていくことで最終的に採用に至っております。

具体的には、当初の設定にこだわらずバリエーションの出しやすさを優先する面積が大きい箇所で色を変更できる部分(影)をつくる、の2つを実施しました。

代表的な1体を決める

ジェネラティブPFPでは、バリエーション違いのキャラクターを大量に生成します。バリエーションの魅力は、その豊富さに起因するものと考えることもできますが、あくまで素体に魅力があってのことであると言っても過言ではありません。
カービィのコピー能力や、イーブイの進化を例にあげると分かりやすいですが、素体がプレーンでデザインが確立しているからこそ、バリエーションに夢が膨らむものです。

先のラフでは、あんぽんたん を代表するメイン素体は水色のものでした。これは、あんぽんたん の初期設定が「身体が水分で構成されている」としていた名残りからなのと、アヒルやヒヨコのキャラクターにありがちな黄色では個性がなくなってしまうと考えていたからです。(黄色にした結果、チョコボ・チキンラーメンのひよこちゃん・ポケモンのコダックに似てると言われることがあります)
しかし、水色ではパッと見たときの印象が弱く、キャラクターを並べてもどこかぼんやりとしたイメージが拭えませんでした。

そこで、ロゴマークを先に考えることで、テーマカラーや、アイコンとして見せるフォルムをどこにするかを整理することにしました。

結果的に、色によるインパクトを高めるため黄色を選択し、そのうえでありきたりなカラーリングにならないよう素体の色と影の色のコントラストを上げた あんぽんたん のデザインにつながっています。

試行錯誤を経て今のデザインに落ち着きました

『あんぽんたん といえばこの子だよね』と思ってもらえる1体がいることで、バリエーション違いの魅力が増幅します。大量に生成することを想定しつつ、同時にブランドの顔となる1体を用意することはジェネラティブPFPのクオリティの底上げりなりますし、アートワークやグッズ展開などが非常にやりやすくなるはずです。

バリエーションの出し方を考える

あんぽんたん は、ロゴマークでも用いているように"ツノがあるアヒル"であることがアイデンティティです。従って、この基本フォルムを崩さずにバリエーションを増やすべきだと考えていました。
ところが、他のキャラクターとのコラボレーションなどを想定してバリエーションを考えると、どうしても基本フォルムのみでは限界があります。早々にイレギュラーなフォルムを許容し、何を固定フォーマットとするかを見直すことにしました。

クチバシ部分に鼻をつけることでアヒル感が消える

偶然の産物ですが、ツノを別の動物の耳に変更することに加え、クチバシ上に鼻をつけることでアヒルらしさが払拭され、他の動物らしさが顕著に表れることを発見しました。アヒルであることがアイデンティティだと考えていたので鼻をつけることを許容できるまでにかなり悩みましたが、結果的に良い判断だったと思います。
ジェネラティブPFPではコレクションの統一感が求められる一方で、コレクション内での差別化ができているかがクオリティに影響します。統一感については、同一のキャラクターを使用したり、構図を合わせたり、カラーパレットを決めることでまとめることができますが、コレクション内の差別化は非常に難しいところです。この点に関しては、次回以降の記事でまとめていく予定です。

発明だと思えるフォーマットにする

最後になりますが、ジェネラティブPFPをつくるうえで私が一番大事だと感じている部分です。これは第三者にも分かる形で取り入れる必要はなく、自分の中だけで完結すれば充分です。あんぽんたん においては、先に紹介している、アヒルの基本フォルムを維持しながら耳と鼻で全く別の動物にできることが発明だと思っています。
これは、構図であったり、特定のアクセサリーであったり、特徴のあるスタイリングや絵柄でもなんでも良いです。とにかく、これだけは誰もやっていない、自分が生み出したものだと自信を持って言える要素があると、コレクション全体としての強度がぐっと上がると感じています。

あんぽんたん 自体は、プログラムで動的に組み合わせているわけではなく、一つ一つ手作業で作っているコレクションです。ただし、レイヤー構造や基本フォルムはジェネラティブPFPを意識しており、準備中の次コレクションではプログラムでの大量生成を検討しています。

全体を通して表層的な話が多かったのですが、少しでもキャラクターデザインについて参考になるところがあれば嬉しいです。また、絵柄の選択や、PFPとしての強度を上げるために意識したことなど、ここでは書ききれなかったことがまだまだありますので、それは次回以降書き留めようと思います。


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