A都市計画制度 1-都市計画区域
今回から日本の都市計画制度について記述します。前回は持論を述べさせて頂きましたが、一般的な都市計画の意味はひとまず以上のようにお考えください。都市計画法と照合させつつ国土交通省の資料に沿う形で述べます。
土地利用基本計画
まず大前提として、都市計画が適用される都市計画区域(今回の話題)は日本全域ではありません。その背後には国土利用計画法第9条にて規定される土地利用基本計画が存在します。この法律では都道府県は区域を次の5つに定める必要があるとしています(五地域区分)。
都市地域:(都市計画区域のこと。後述)
農業地域:農用地として利用する土地
森林地域:林業振興&森林機能の維持増進を図る地域 Ex.高尾山山頂
自然公園地域:自然の風景の保護及び利用を図る地域 Ex.知床国立公園
自然保全地域:自然環境の保全を図る必要のある地域 Ex.白神山地
(白地地域:上記のいずれにも属さない地域)
例えば、東京都の場合(2020.11時点)には内訳は以下の通りです。
何と割合の合計は100%を超えています!というのは複数の地域に重複するエリアがあるためです(Ex.東京都の4.6%は都市地域&自然公園地域が重複)。重複地域については、土地利用の優先順位が存在します。基本的には自然>農業>都市のイメージでいいでしょう。
都市計画区域
前述の都市地域のことです。都市地域の中では開発(建物を建てる等)が原則認められます(逆に農業地域など他地域では原則認められません)。行政の縦割りの典型ですが(だから五地域区分の重複が発生)、都市計画法は都市地域内に効力を持つ法律で、他の地域にはそれぞれの法律が存在します。そして、都市地域はさらに市街化区域と市街化調整区域に分けられ(区域区分/通称:線引き)、その一部を商業用にする等を定めた用途地域が指定されます。これは次回以降詳しく述べます。
先程の東京都の場合は約8割が都市計画区域に該当しますが(下図)、日本全体では都市計画区域は国土面積の25%強です。一方、この中に日本の人口の約95%が暮らしています。
2023年3月時点で、全国の都市計画区域数は997です。そして都市計画は、都市計画区域に対応します。すなわち、都市計画区域1つに対して、この地域はこうするべきだ!という将来像を示す都市計画案(都市計画区域マスタープラン)が1つ存在します。例えば、東京都の🔸🔹都市計画区域は⭕️⭕️なエリアだから🔺🔺型の都市構造を目指す…のような感じです。都道府県が決定する区域なので広域的な観点からの計画になります。自治体ごとに1つの都市計画区域が一般的ですが、東京都の調布都市計画区域(調布市全域+狛江市全域)のように複数自治体をカバーする区域も多数あります。逆に、合併市町村では1自治体に複数の都市計画区域が設定されることもあります。町村のうち、都市化が進んでいない自治体(人口1万人未満&都市的就業者50%未満など)には都市計画区域がそもそも存在しません。
では、都市計画区域の範囲はどのように決定されるの?という疑問があるかと思うので、ざっくり説明します。フローとしては、対象地域の人口・土地利用状況や産業を考慮しつつ、関係市町村での意見を踏まえ、都道府県と国土交通省の協議の下で最終的に決定されます。ただし、実態は自治体単位で決定されることが多いので先程述べたような形になっています。
準都市計画区域
都市計画区域外ではあるが、既に建築物が建てられているor建設が見込まれる地域で、土地利用を整備しなければ開発・保全に支障が生じる地域を準都市計画区域といいます(都市計画法第5条の2)。つまり、都市計画法の範囲外の影響によって都市化が進み、規制が必要になった地域です。こちらも都市計画区域同様に都道府県が指定します。用途地域など、都市計画地域における規制強化系の地域地区を定めることも可能です。なお、規制系の制度なので市街地再開発等のように、規制を緩和する開発は不可です。比較的新しい制度のため、2023年3月時点では準都市計画区域は全国にわずか47です(約半数が福岡県)。具体例としては新しい高速道路のIC付近(Ex.愛知県の新城長篠準都市計画区域←新東名)や観光地(Ex.北海道のニセコ準都市計画区域←スキー)が多い傾向にあります。
こうした地域は開発圧力(業者の、その土地での事業意欲)が高く、放置すると市街地が勝手に広がってしまう(スプロールする)ことが背景にあるようです。一方、都市計画区域に移行した準都市計画区域もあります。
次回は都市計画区域内における区域区分について紹介します。
参考資料
令和5年都市計画現況調査
国土交通省 土地利用基本計画制度について
令和2年東京都土地利用基本計画書
都市計画法
都市計画法施行令
新城市
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