トヨタカップの明星チャルメラ カップ麺 醤油味

「#サッカーの忘れられないシーン」のタグでサッカーの忘れらないシーンや試合を募っているのを見付けたが、私はサッカーは詳しくなく中継も日本代表戦程度しか見ない。私にとって「スポーツ観戦＝野球」であり、プロ野球(NPB・独立リーグ)だけでなく、社会人野球、大学野球等幅広いジャンルを観戦するマニアだ。だからこのテーマに寄稿すること自体間違っているのかもしれない。
　だが一つ、サッカーで個人的に忘れられぬシーンがあるので書くことにした。それはトヨタカップであった出来事。

　トヨタカップはサッカー好きなら誰もが知ってる今では伝説的な試合。欧州と南米のナンバーワンチームが戦う世界一のクラブチーム決定戦。1960年から実施されホーム・アウエー方式で試合を開催すると年々ファンが白熱し乱闘・暴動が激化したため、1980年～2004年は中立国として日本、国立競技場(旧国立、正式名称「国立霞ヶ丘競技場」　途中から横浜国際総合競技場へ開催地は変更)で毎年12月頃1試合開催され、冠スポンサーがトヨタ自動車であるため「トヨタカップ」と呼ばれていた。※ここで説明するまでも無くサッカー好きなら有名な試合だろうが‥

　子供の頃から自身は野球ファンでサッカーのことはマンガ「キャプテン翼」の知識程度しか持ち合わせていなかったが、ほぼ毎年観戦していた。これを今、サッカーマニアに話すと絶叫され「ふざけんなよ！」「豚に真珠だ！」「何も知らずに行くなんて贅沢すぎる！」と説教を受けることもある。何故毎年観戦できたかのか説明すると、父親の仕事関係者にトヨタ勤務の人がいたためコネで入場できたため。だからJリーグが始まる前から世界一のサッカーのプレーを見ることができた。プレーの細かい動き・フォーメーションなど無知な私には全く理解できなかったが「とにかくパス・ドリブル・シュート、選手の動き全てが速い！」と感じたもの。あと、ほぼ毎年観戦していたなら、当時の世界有数のプレーヤーを眼下で眺めていたはず。ジーコ、プラティニ、ベッカム、カーン、ジタン等、他にもいるだろうが、全くプレーが記憶にない。それもそのはず、サッカーの選手や強豪チームの知識はおろか名前すら知らないまま毎年観戦していたのだから。ACミラン、サンパウロFC、ユベントスなど今ならニュースのスポーツコーナーでさえ超強豪チーム名が出てくるが、当時は本当に知らなかった‥　今思えば真のガチファンの方々に糾弾されても仕方がない。まったくもって恥ずかしい話。

　でもトヨタカップには忘れられないシーンはある。
　それはスタジアムグルメ、明星チャルメラのカップ麺を食べたこと。

　私の記憶だとトヨタカップは開催当初は土曜日か日曜日の12～13時頃にキックオフだった（途中から平日ナイトゲームへ変更）。いつも家族揃って観戦していたので母親が作った弁当持参で国立競技場へ向かい試合前に座席で食べ終えるのが常だったが、試合後半になると子供であった私と姉はお腹が減り始め「おやつが食べたい」と親に頼むとお金を貰えたので売店へ直行し買っていたのがカップ麺。それも明星チャルメラのカップ麺 醤油味。店にはこのカップ麺一種類しかなく、いつもこれを買い、姉と二人で分け合い毎年食べていた。このおやつは恒例行事のようなものだった。

　試合は12月で初冬を迎え暖かいジャンバーを着ても身体が冷え込む状況。そこにスープを飲むと体の中から暖かくなるのを感じた。あと味も普段家で食べるより、サッカーの試合中にスタンドで食べるカップ麺は非日常感のせいか美味しく感じ、特にスープの香りが余計に食欲をそそって別物の食べ物に感じた。
　あと、おやつにカップラーメンを食べるなんて子供にとっては特別感があった。当時のカップラーメンは安くて150円程度で今のようデフレ・食品の低価格化前の時代。子供でお小遣いを貰ってたが、1,000円未満の金額なので易々とは買えない代物だった。そして子供にとってはカップラーメン1杯は「おやつ」ではなく「主食」の量。普段家でおやつにカップラーメンを食べたら晩ご飯が食べられず母親から怒られるので絶対食べなかった。だが、家族揃ってサッカー観戦という行事の日、姉と分け合うためか、母親の前で堂々食べても怒られなかった。普段なら背徳的行為を公認されるとは何ともいえぬ優越感があった。

　トヨタカップで明星チャルメラのカップ麺を食べてたのは試合がデーゲームの時だけでナイトゲームとなってから食べなくなった。だから食べたのは実質5回程度かもしれない。でも子供にとって非日常・特別・背徳的行為は食べた明星チャルメラは今でも忘れられない。
　今でもそれを食べようとお湯を注ぎ3分経ち蓋を開けた時に流れ出る香りで一気に国立競技場で試合中の選手達がプレーする光景が目に浮かんでくる。　

　本当に忘れらない、トヨタカップと明星チャルメラカップ麺 醤油味
　今でも姉と子供の頃にトヨタカップを観戦した思い出話をするとお互い口から出る第一声は決まっている。

「あの時食べた明星チャルメラは美味しかったね」