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第17章 「いまさら放射能の話」

「学問こそが最高の娯楽である」シリーズの第17章。このシリーズは毎週土曜日18時前後にアップします。

今回はあえて、今更感ただよう放射能の話をしてみます。

1. 放射能と放射線

いまだに「放射能(ほうしゃのう)」と「放射線(ほうしゃせん)」の区別がついていない人が結構多くて驚きます。

「ホウシャノウ?なにそれおいしいの?」

という人が放射能を正しく理解していなくても、まあしょうがないと思うのですが

「放射能がコワイ!!」

とか言ってる人にかぎって知らなかったりするので、なんだかモヤっとしますよね。

いや、怖かったら、もうちょっとちゃんと調べようよ…。

彼を知り、己を知れば、百戦殆うからず

ですよ。

要するに、怖いと思うならちゃんと相手のことを勉強して知る努力をするべきです。

「放射能と放射線の違い」なんていうのは、放射能に関する初歩中の初歩です。

教科書で言うたら1ページ目、野球で言うたらキャッチボールです。

なんでダラダラとこんなことを言うのかというと

言葉の定義はとっても大事だからです。

自分が言葉の意味を正しく説明できるかどうかが、物事を理解しているかどうかの指標になるんですよね。

というわけで、あらためて

「放射能」というのは、物質が「放射線」を出す能力(性質)のことです。

簡単でしょ?

そして、放射能を持っていて放射線を出す物質を「放射性物質」と呼びます。

だから「放射能をあびる」というのはおかしいわけです。

あびるのは「放射線」の方。

あるいは「放射性物質」が飛んでくればあびることもあるかもしれませんが、「放射能」はあびません。

どうでもいいとか思ってたらダメですよ。

「窓をあけたら月光が差し込んできた」と言いたくて、「窓をあけたら月が入ってきた」って言ったらおかしいでしょ?

もう少し身近な例でいうと、ハンバーグとハンバーガーとか、エレベーターとエスカレーターとか、名前がよく似てるものほど間違えるとダサいですよね。

あえて言いましょう。

いまどき、放射線のことを放射能と言い間違ってる人はだいぶダサいです。

2. 放射能の単位「ベクレル」

ついでに単位もちゃんと覚えましょう。

放射能の単位が「ベクレル」、放射線のエネルギーが「電子ボルト」あるいは「ジュール(あまり使われない)」、単位質量の物質が放射線から吸収するエネルギーが「グレイ」、生物が吸収した放射線で受けるダメージを数値化した単位が「シーベルト」です。

まあ、急にこんないっぱい言われても覚えられないでしょうから、2個だけ覚えてください。

放射能の単位が「ベクレル(Bq)」で、生物が放射線から受けるダメージが「シーベルト(Sv)」です。

ベクレルの方は通常は100万倍を意味するメガ(M)をつけて、メガベクレル(MBq)とかいう単位で聞くことが多いでしょう。

シーベルトの方は、逆に1000分の1のミリシーベルト(mSv)や100万分の1のマイクロシーベルト(μSv)の形で聞くことが多いです。

3. なんでベクレルを使うのか

放射能の単位はベクレルだと言いましたが、ちょっと違和感を覚えた人がいたとしたら、勘がいい方です。

例えば、「放射性物質の量」を語るときに、500メガベクレルのセシウム137という言い方をしますよね。

セシウム137は放射性物質です。

なんで「放射性物質の量」に、「放射能の単位」であるベクレルを使うのか、意外と理解していない人も多いと思いますので、その説明をして今回は終わりにしましょう。

ベクレルってどんな単位なのかというと

物質中の放射性同位体が1秒間に何回壊変するか、という単位です。

少しやさしい言葉で言うと、「1秒間に何回放射線を出すの?」というのを数値化したのがベクレルです。

世の中には色んな種類の放射性同位体がありますが、東日本大震災のときに散々ニュースで出てきていくつか有名になったものがありますよね。

例えばセシウム137ヨウ素131

この2つはどちらも原子炉でウランの核分裂反応から生成される核種です。

これ、どっちの放射能が大きいと思いますか?

ヒントをあげましょう。

セシウム137の放射能の半減期は約30年、ヨウ素131の放射能の半減期は約8日です。

もうわかりますね。

放射能が大きいのは、「ヨウ素131」の方です。

え?

と思ったあなた、そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫です。

知らん人多いから。

放射性同位体は壊変して放射線を出すと、別の核種に変わります。

つまり、セシウム137もヨウ素131も、放射線を出すたびに数が減っていくわけです。

ということは、1秒間に放射線を出す回数(放射能)が多いほど、早くなくなりますよね。

その数が半分に減るまでの時間が「半減期」です。

当然、半分になるのに8日しかかからないヨウ素131の方が、1秒間に放射線を出す回数は圧倒的に多いです。

だから、同じ量のセシウム137とヨウ素131があったとしたら、ヨウ素131の方が1000倍以上放射能が大きいわけです。

ここまで説明すると、なんとなく気づく人もいると思います。

放射性物質の量は、重さ(質量)で言うよりも、その放射能で言った方が実用性があるんですよね。

セシウム137が〇〇キログラムとか言われても、ぶっちゃけヤバさがわかりません。

だから、ベクレルを使うんですよ。

1メガベクレルのセシウム137と、1メガベクレルのヨウ素131は、重さは1000倍以上違いますが、同じ放射能です。

どうでしょう?

話についてこれたかな?

今回は以上です。

それなりに反響があれば続きを書きますが、なさそうなら次回は別の話題にします(笑

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