第32章 「微分・積分は実は皆できている」
こんにちは。
今日は皆が大好き、物心ついたころから当たり前のようにできてる微分・積分の話です。
なんでやねん!できひんわ!
と思った人のために、実は皆、自分で気づいてないだけで、微分・積分は当たり前のようにできてるんやでってことをお伝えするために今回の記事を書くことにした。
書こうと思ったのはこのツイートがきっかけです。
1. いきなり「速さ」の話
さて、突然ですが、「速さ」ってどうやって求めるかわかりますか?
「はじき」でしたっけ?
「速さ」=「距離」÷「時間」
って習いますよね。
これね、ほんまは嘘なんですよ。
まあ、嘘でもないんですが不正確です。
ちょっと冷静に考えてほしいんですよね。
たぶん皆さん、日常的に「速い」とか「遅い」とか感じることって色々あると思うんです。
人が走ってるのを見て「速い」って思うことありますよね?
実際に目の前にいない人が速いか遅いかを判断するときは、例えば50m何秒で走れるとか、そういう数値を聞いて考えることが多いと思います。
50mのタイム6秒って聞いたら、一般的には「速いな」と思いますよね。
ちなみに50m走の最速タイムはウサイン・ボルトの5秒47らしいです。
日本記録は北京五輪のリレーで銅メダルのメンバーの1人の朝原選手が2002年に出した5秒75が今でも破られていないっぽいです。
50mという「距離」を短い「時間」で走るから「速い」。
やっぱり「速さ」=「距離」÷「時間」であってるやん。
と思ったあなた。
じゃあ、実際に目の前で超足速い人が走ってるのを見て、50m走り切るのをじっと見て何秒かかるかな?とか考えてから判断してますか?
そんなわけないですよね。
速いかどうかなんて、一瞬見たらわかります。
一瞬で、「あ、速っ!!」って思います。
はい、これが「微分」です。
2. 「速さ」は「距離」の微分
「速さ」は「距離」を「時間」で微分したものです。
微分というのは変化の度合いを求めることなんです。
この場合の変化というのは、「位置」の変化です。
物が移動するというのは、位置が変化するということです。
その位置の変化の大きさがこの場合の「距離」です。
人間は、というか視覚を持った動物はすべて目で見えるものの位置の変化を瞬時に時間微分して、「動いている」「止まっている」の判断をしてるんです。
さらにそれが「速い」か「遅い」かの判断もできます。
これは、ものすごく短い時間、「微小な時間変化」の間に位置がどれだけ変化したかを頭の中で測って、文字通り瞬時に判定しています。
速さが知覚できるということは、微分ができているということです。
さて、人間は「速さ」だけじゃなくて「加速度」も知覚することができます。
速さが大きくなることを「加速」、遅くなることを「減速」と言ったりしますが、「加速」と「減速」の度合いをひっくるめて「加速度」と言います。
この「加速度」は「速度」を「時間」で微分したものです。
物体が「加速している」、「減速している」というのを知覚できるのは、ものすごく短い時間、「微小な時間変化」の間に「速度」がどれだけ変化したかを頭の中で測って、判定しています。
実は「速さ」に比べると、「加速度」を判定するのはちょっと難しく、時間もかかります。
これは「速度」の変化は「位置」の変化よりも気づきにくいからです。
でも、急激に速度が変わるような、大きな「加速度」はさすがに一瞬で判定できますよね。
3. 積分は未来予測に使う
ここまでで、皆が普通に普段から「微分できている」ことは理解してもらえたと思います。
それでは「積分」はどうでしょうか?
さすがに積分ややってないで。
と思うかもしれませんが、積分もやってるんですよね。
道を歩いていて、こっちに向かっている人とか物とかがあったとして、このまま行くとぶつかりそうとか、それはどれぐらい後かとか予測できますよね。
これが積分です。
「速度」=「位置の時間変化」を見て、未来の「ある時間」における「位置」を予測する。
これはまぎれもない積分なんです。
「変化の度合い」を求めるのが「微分」ですが、この「変化の度合い」を積み重ねたトータルの変化量を計算するのが「積分」です。
これもまあ、一瞬で判断してますよね。
むしろ、一瞬で判断できないと結構危ないです。
モタモタしてるとぶつかりますからね。
道端で無駄に人に肩ぶつけてくる人いるじゃないですか?
ああいう人は「積分できひん人」です。
稀にしかいません。
4. 五感は微分・積分
ここまで、速度とか位置とか加速度とか、物理っぽい言葉ばかりで解説しましたが、それだけじゃありません。
時間で変化しないものでも、曲がっている、傾いている、という判断ができるのは微分です。
物を触って、凸凹しているとかを知覚するのも微分です。
実は人間の感覚、「五感」は全部微分で成り立っています。
色の変化、温度の変化、空気の振動、音の変化、形の変化、鼻の粘膜や舌の上で起きる化学変化、電気的変化、こういうものを微分で知覚しています。
で、微分で知覚した「変化の度合い」から積分して未来を予測して、危ないかどうかを判断してるわけです。
少しわかりやすい例を出しますと、嗅覚ってすぐに鈍るじゃないですか?
あれは変化しなくなるからです。
鼻の粘膜に「臭いのもと」がある程度くっつくと、それ以上は状況が変化しなくなります。
そうすると、人間の感覚は鈍るんですよね。
嗅覚以外でも、似たような感覚の鈍化は起こりますが、これは「変化の度合い」と深くかかわっています。
5. なんでわざわざ習うの?
微分と積分、皆できていることはわかったと思います。
ではなぜ、わざわざ数学で習うのか。
できてるならええやんと。
強いて言えば、もっと正確に理解したいからです。
正確に理解して、正確に予測したいからです。
これまで、人間は速いか遅いかが一瞬で判断できるという話をしましたが、実際に、正確に、どれだけ速いのかはさすがにわかりません。
積分で未来予測ができると言いましたが、さすがに完璧にぴったし予測はできません。
こういうことを数式に落とし込んで、正確に計算して予測できるようにした学問の1つが微分積分学なわけです。
乗り物の自動運転とか、ロケットの軌道や必要な燃料の計算、建物の構造と強度、あらゆるところで微分積分が使われています。
皆の便利な生活は微分積分に支えられているわけです。
微分積分学は面白いですよ。
6. 終わりに
実は細かいことをいうと、数学的にはスイッチのオンオフのようは急激な変化、デジタルな変化というのは「微分できない」のですが、今回の話ではあえて無視しました。ご容赦ください。
以上です。
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