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第21章 「数学は語学?」

「学問こそが最高の娯楽である」シリーズの第21章。このシリーズは毎週土曜日18時前後にアップします。

今回は数学の話です。

日本の大学は文系の学部では入試科目に数学が入っていないことが多いですよね。

なので「数学が嫌いだから」という理由で文系に進む人が結構多いように思います。

その誤解を少しでも解きたいというのが今回のエントリーの目的です。

1. 知らない単語

ちょっと昔話を。

私は地元の公立中学に通っていたのですが、正直、成績はあまりよくありませんでした。

というのも、中学生の当時はADHDを全開に発揮していたので、全然授業も聞かないし勉強もせず、日々ゲームしたり漫画読んだりして過ごしていたんです。

それでも、小3~小5の時期に進学塾に通っていた貯金があったので、なんとか学年で真ん中ぐらいの成績でした。

そんな状態の私でしたが、中学2年の冬休み明けの担任との進路相談のときに、さすがにこのままではヤバそうだと自覚して、親に頼んで地元の進学塾に通うことになりました。

進学塾はどこでもそうだと思うのですが、成績順でクラス分けされます。

当時の私の成績では、当然のように一番下のクラスでした。

そして、今でもわりと鮮明に覚えているのですが、初日の最初の授業が数学だったんです。

自分から塾に行きたいと言って通いだした私はやる気に燃えていたので、めずらしく結構真剣に聞いていたんですが・・・

さっそく、問題が生じました。

先生が何度も連呼している、とある単語の意味がわからないんですよね。

ヤバいな。

なんか、今まで聞いたことあるけど、この単語の意味がわからんな。

連呼してるってことは重要っぽいぞ。

このままでは全然話についていけそうにないので、意を決して質問しました。

「先生!」

「はい、なんですか?」

方程式ってなんですか?」

方程式を知らなかったんですよね。

中2の3学期です。

先生はキョトンとしているし、クラスは爆笑に包まれました。

普通はこんなに笑われたら、ショックをうけて委縮したりするんでしょうね。

しかし、この半年後には私の数学と理科の成績は塾内トップになっていました。

当時も思っていましたし、今でも断言できるのですが、そのとき私のことを笑った同級生たちの誰一人として、「方程式」の意味を正しく理解している人はいませんでした。

なんでこの話をしたのかというと、ここに「数学ができる・できない」の境界線があるからです。

2. 数学は数学語で考える

高学歴な人の中には、「数学は国語力が大事」という人がいます。

この意見には半分同意です。

ようするに、「読解力」が大事なんです。

でも、数学の読解力には国語力はあまり関係ありません。

必要なのは「数学語力」です。

たとえば、英単語と英文法がわかっていないのに、英語の文章を読んでも意味がわかるわけがないですよね。

それと同じで、数学の単語の意味と、数学の文法がわかっていなければ、数学はわかりません。

「数学がわからない」のは、単語と文法がわからないからです。

逆に言えば、最初はわけわかんなくて当たり前なんです。

外国語なんだから。

いきなりわかると思う方がおかしい。

単語と文法を1つずつ丁寧に身につけていくしかありません。

逆に、数学語を理解できるようになると、世界中の人と数学で会話ができるようになります。

現在では数学は世界共通言語なので、数式の意味はどこの国でも基本的に同じです。

3. 多層構造

中学から高校、高校から大学、あるいは学年が上がるだけでも、突然に数学がわからなくなることがあります。

これは、階層が深くなったと思ってください。

また英語で例えますが

I am sorry. (アイ アム ソーリー)

というフレーズは、中学英語のかなり最初の方で習いますよね。

意味は「ごめんなさい」です。

でも、本当は「ごめんなさい」だけではありません。

「sorry」には、「悲しい」とか「残念」「遺憾」という「哀」の感情が込めれれています。

つまり、「ご愁傷様です」とか「すごく残念だね」といった共感を示すフレーズとしても使えます。

こういう感覚は、より深く学んでいくうちに身についてきますよね。

逆に、最初からいきなり色んな意味を説明されても、ちょっとわけわかんなくなると思います。

数学も同じです。

最初は、あえて表層的な部分だけ習って、徐々に深いところに進んでいきます。

中学で習う関数

これは、高校で習う二次関数

の b = c =0 の条件のときなのですが、最初はそんなこと習いませんよね。

徐々に段階を踏んで単語や文法の使い方を覚えていくしかないんです。

方程式や因数分解という言葉の意味や使い方も、段階が進むとどんどん深くなっていきますが、浅いところから順番に慣れていけばちゃんと理解できるはずです。

ようするに慣れです。

できるようになるまでに「かかる時間」には多少、才能が影響しますが、できるかできないかには才能は関係ないです。

どんなに勉強しても一生英語ができない人なんて、基本的にはいないでしょう?

4. 文化と作法

外国語を学ぶときは、単語や文法を表面的に習うだけじゃなくて、文化もちゃんと学ばないとちゃんと意味がわからないですよね。

数学も同じような感覚で学びましょう。

数学の国には、独特の作法があります。

足し算や引き算よりも、掛け算や割り算の方を先に計算する。

なんでなん。

車が左側通行なのと同じです。

ルールなんですよ。

とりあえず、そういうものとして覚えましょう。

「習うより慣れろ」です。

そして、ルールには理由があります。

深いところを勉強しているうちに、なんでそういうルールになっているのか気づく瞬間があります。

5. 終わりに

偉そうに語りましたが、正直に言えば私も数学がめちゃめちゃ得意というわけではありません。

中学や高校では比較的数学が得意な方だった私でも、大学の数学はいまだにさっぱり理解できないことがたくさんあります。

なので、やっているうちにどこかでつまづくのは普通です。

最初から自転車を乗りこなせる人なんていないですよね。

でも、一度乗れるようになると、乗れなかったときが思い出せないぐらいに普通に使いこなせるようになりますよね。

数学なんて使う場面がないと思うかもしれません。

でも、数学ができるようになると、科学の読解力(リテラシー)が向上します。

世の中の色んな現象について、新たにわかることが色々と出てきます。

外国語学習と同じぐらいおすすめですよ。

以上です。


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