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自律とか成長とか

初めて「ジリツ」という言葉を意識したのは、たぶん中学生の頃だと思う。当時わたしは中高一貫の女子校に通っていた。それまでは校内のいたるところに「良妻賢母になろう」みたいな価値観がふんわり残っていたけど、徐々に「女性も活躍する時代」を意識したカリキュラムにシフトチェンジしていった。

そこで謳われたのが「ジリツ」だった。自立、ではなく、自律。教頭先生だったか校長先生だったかが登壇して、「自分で立つ、だけではなく、自分を律することのできる人間になってほしい」と話していた。単純に、いい言葉だなと思った。

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先日、祖母と祖母の妹と会う機会があった。親戚で集まるために、とある場所へ出かけるという。ともに80代、心配されるのは嫌だろうが、口には出さぬ心細さもあるはず。わたしは祖母宅の最寄駅から電車の乗り換えまでだけアテンドすることにした。

この用事のために上京してきた大叔母に会うのは、実に6年ぶり。身内の贔屓目もたぶんにあるものの、相変わらずしっかりとお化粧をしていて白髪もなく、若々しかった。ほぼ変わっていないといっていい。この6年で変わったのは、むしろわたしのほう。仕事を変え、ひとり暮らしもはじめた。

大叔母は、わたしを見て言うのだ。「さきちゃんはジリツしてて偉いね」と。きっと、久しぶりに会った姪孫を褒めるポイントを探し、自分の孫娘と比較して、1番に思いついた言葉だったのだと思う。つまり、深い意味はない。

でもその瞬間、ジリツについてふと考えてしまった。自分で稼いで、その中でなんとかやりくりをして、衣食住をまかなっている。たしかにこの状況は自立していると言ってよいかもしれない。だけど実際には、やめようと思っても夜更かしがやめられないし、早めに食べたいと思いながら夕飯もいつも21時を過ぎてしまう。朝は永遠に苦手だし、掃除も週に2回できればいいほうだ。

自分の足でギリギリ立ってはいるけれど、自分のことを律するまでには至っていない。大人として中途半端だなと思って、勝手に少し落ち込んだ。

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11月1日放送のドラマ「君の花になる」(TBS)の第3話もまた、「ジリツ」がひとつのテーマだった。本作は夢破れた元高校教師・仲町あす花が、アイドルグループ“8LOOM”が住む寮の寮母として、彼らの夢を応援していくというストーリー。ある日、解散の危機に瀕した8LOOMのもとへやって来た敏腕マネージャー(通称:鉄眼鏡)が、甲斐甲斐しく世話を焼くあす花が彼らの成長を妨げていると痛烈に非難したのだ。

結局のところ、8LOOMには8LOOMのペースがある、ということで、急な改革は行わないこととなった。ただ、それでも最後には、できることは自分でしようという姿勢にほんの少しだけシフトしていた。その背景にあったのは、あす花を少しでも楽にしてあげようという思いやり。あす花は寮母なのでお世話をすることが仕事ではあるものの、そのあたたかい感じがなんとも8LOOMらしいなと思った。ジリツは成長。でもこれが自分のためではなく誰かを思うことに起因するって素敵だ。

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あれよあれよという間に30代になり、日々の生活で成長なんてものを感じる機会はなくなった。それではダメだと、もちろん思っている。そして心のどこかで、成長を実感できないのは振り返りが足りないせいだと言い訳している。であるならば、気の向くままでいいからnoteを書いてみたらいいんじゃないか。そんなことを思っているうちに、すでに半年近く経った。…ああ、またわたしは自分を律せていない。

自律とか成長とか。そんな言葉に急き立てられるようにして、ようやく、ようやくnoteを書いてみた。これが日々の振り返りに繋がるのかわからないし、そもそも続くかどうかもわからないけど、まずは行動に移したことを褒めてあげようと思う。えらい。

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