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AMNグループCTOが語る、ソリューションの未来とこれからの組織に必要なこと【前編:事業編】

今回は、アジャイルメディア・ネットワーク(以下 AMN)の代表取締役社長(2020年11月当時は取締役CTO)である荒木さんと、2019年にグループ入りした、パーソナライズド動画ソリューション「PRISM」を提供するクリエジャパン(以下 クリエ)のCTOである中沢さんの二人に話を聞きました。
前編は【事業編】として、基幹システムを開発・運用する上での課題や、今後のシステムの方向性についてなどを語ってもらいました。
技術部が考えるAMNグループの未来は、どのようなものなのでしょうか?

■アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
『世界中の“好き”を加速する』をビジョンに、ファンと企業/ブランドの会話やコミュニケーションを支援する事業を展開しています。製品/サービスのマーケティング活動をファンと共に推進する「アンバサダープログラム®」や、リテールマーケティング基盤「CATAPULT(カタパルト)」、パーソナライズド動画生成の特許テクノロジー「PRISM」、D2C/SMBサクセスを支援する「DIGITAL PANDA」事業を日本及び海外で展開しています。
URL: https://agilemedia.jp/
■株式会社クリエ・ジャパン
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社の子会社である株式会社クリエ・ジャパンは、顧客一人ひとりのデータに合わせて動画を最適化できるパーソナライズド動画ソリューション「PRISM」(特許取得技術)により、動画を活用したOne to Oneマーケティングの実現など、企業の顧客コミュニケーションを支援しています。
URL: https://crea-japan.com/

■ほかに類を見ないユニークなシステム

荒木:AMNの基幹システムであるAmbassador Platform(アンバサダープラットフォーム:以下AP)は 、ブランドについて積極的に関わり発言・推奨する熱量の高いユーザーを「アンバサダー」として定義した上で、アンバサダーの募集・発見・コミュニケーション・効果測定をワンストップで行えるシステムです。
APではアンバサダーとして登録したユーザーとコミュニケーションをとったり、アンバサダーのSNS上での発言を各種API(Application Programming Interface:アプリケーション・ソフトウェアを構築および統合するために使われるツール、定義、プロトコル)を使用して収集し、分析を行ったり、マーケティングに活用可能なレポートを作成したりすることができます。

APにはVer.1とVer.2があり、Ver.1がシステムとして古くなってきたことから、Ver.2はリニューアル版として2018年から開発を始めました。
アンバサダーの登録が数万人レベルのブランドは幾つも存在し、そのSNS上での発言は数百万にもなります。こうした大規模データを扱うことから、Ver.2はサーバーレス技術を活用してインフラ管理を容易にすると同時に、スケール可能なシステムにしました。

―クリエ・ジャパンのパーソナライズド動画ソリューション「PRISM」のシステムの特徴は?

中沢:PRISM( プリズム: https://www.pr-ism.jp/ )は、顧客一人ひとりのデータに合わせて最適化した動画を、一度に大量に作り分けることのできるソリューションです。
特徴としてはまず、「MP4」という世界で最も普及している動画ファイルのフォーマットとしてファイルを出力できる点にあります。つまり再生環境のOSやブラウザからの影響を受けないので、一般的な動画広告のアドネットワークでクリエイティブとして利用することが出来たり、YouTubeなどでもそのまま使うことができるのです。
また特許技術であるスクリプトにおいて、簡単に動画の内容を自動編集できるという点は他に類を見ないものです。他のJavascriptなどを用いたソリューションでは、動画ファイルにおいて1フレーム単位での描画のコントロール、また音声ファイルなどをコントロールすることは難しいため、思った通りに再生されるクリエイティブを作ることが出来るのはPRISMだけの利点だと考えています。

開発の苦労や課題解決方法

荒木:AMNのAPは、他にないシステムで独自性が高いので、自分たちでどう作っていくか決めていく必要があります。それは楽しくもあり、難しくもあります。
Ver.1では、PHP + CodeIgniterを用いて構築していましたが、Ver.2ではアーキテクチャーから見直しを行い、バックエンドはNode.js、フロントエンドはReact + Reduxという基本構成で、一部を除いてスクラッチから開発しています。
「アンバサダーマーケティング」のためのサービスは、他に類を見ないものであり、仕様の一つ一つに関して社内の知見を基に、ヒヤリングとディスカッションを積み重ねながら地道な作業を行ってきました。
アジャイル開発の手法を導入していて、開発途中でもフィードバックを受けて柔軟に仕様変更を行ってきたため、今では良い意味で、初期に目指していたものとは異なるサービスになっています。中には無駄になってしまった実装もありますが、結果的にニーズを汲み取れるサービスに進化していきました。

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 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役社長  荒木 哲也
 2018年にAMNへ入社。
 豊富な技術開発の経験を活かしCTOとしてAMNのサービスの開発・保守、
 技術戦略の策定、技術部のマネジメント、エンジニア採用などを行う。
 2022年 同社代表取締役就任。  

―PRISMはどうですか?

中沢:実はPRISMの開発経緯としては、最初から“こういったものを開発しよう”と始まったプロジェクトではないのです。
ある病院からの依頼で『健康診断結果を動画で作りたい』という相談があり、もともとweb系とメディア系の両方の仕事に携わっていたので、これは受託できるのではないかと思ったのが始まりです。

―誕生秘話ですね。

中沢:そうですね。そこから健康診断のシステム専用に仕組みを作ったのですが、これはどんどん汎用ができるのではないかと思い、簡単なプログラムを書くことで素材を組み合わせて動画が出来上がる仕組みにしていきました。そして、ソリューションで販売できる形まで持っていき、PRISMという名前をつけました。

荒木:プリズムの名前の由来ってなんですか?

中沢:ガラスを組み合わせ三角形に張り合わせたところに一つの光を通すと、色が分解されたり違う色になって出てくる、いわゆるプリズムってありますよね。それにかけて、データを入れるといろんなもの(映像)に化けて出てくるという意味を持たせました。
動画の再生ボタンの形も三角形ですし、PRISMのロゴも三角形を組み合わせたものにしているのです。
また、PR(プロモーション)とISM(主義)を組み合わせたソリューション、という意味を持たせたいという思いもあって、この名前になりました。

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■技術部として、いま思う課題とは

荒木:APというユニークかつ、高い技術を用いたシステムに関し、利点や素晴らしさを社内外に向けてもっと認知・理解してもらう必要性を感じています。このシステムが実現出来ることを、もっとクライアントに理解し評価して頂くことで、技術力の裏付けを通して更に業績を上げていけるという確信を、社員にも持ってもらえるようにしていきたいです。

中沢:我々の仕事はセールスのチームに武器を与えるという思考が大事だと思っていて、より強い武器を渡すことで自信をもって戦ってくれる、みたいなことが理想です。その部分が技術の果たす役割かなと思いますし、技術がないと戦えないな、とみんなが思ってくれたらいいなと。
といっても、PRISMには問題点や課題が色々なところに存在していて、例えば動画のレンダリングが遅いとか、UI的なことや、そういうところに課題を感じています。

―課題の解決に向けてどのようなことを計画されていますか?

荒木:技術戦略を打ち立て、事業計画に連動して売り上げにつながるものを技術部主導で出来ないか、ということを考えています。
自社サービスの開発に専念できる会社はそれほど多くはないと思いますし、それが行えるということは、エンジニアの関与により会社の業績を上げることも可能だということです。また、当社は新規サービスを開発する機会も多くあります。
プログラミングに取り組むだけでなく、ビジネス視点でもサービスに関わりを持つことで、エンジニアやチームの成長、そして事業への貢献をしていきたいです。

中沢:今までクリエという枠の中で技術は私1人しかいないため実現できなかったことが、AMNグループとして必要なものを一緒にみんなで作ろうといった体制になっていくと、もっとやりやすくなるのかな、と考えています。
また、課題である動画のレンダリングに関しては、ゲームのエンジンを扱うと速くなるのでは、というアイディアがあります。そのため、ゲームのエンジンを理解しているエンジニアの方に入社して頂いて、一緒に解決していきたいですね。

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株式会社クリエ・ジャパン CTO 中沢 宏
2014年にクリエ・ジャパンに入社。
CTOとして、特許技術である同社のパーソナライズド動画生成エンジン「PRISM」の開発・運用保守を一手に引き受けている。

システムの未来

荒木:APやDP(DIGITAL PANDA:デジタルパンダ、グループ会社popteamの基幹システム)では外部連携を視野にAPIを用意しています。今後はAPIを公開することにより、社内で開発したサービスと他社サービスとの連携を容易にし、当社ユーザーだけでなく、様々な人に当社のサービスを利用してもらいたいと考えています。 

中沢:まず、PRISMの動画生成のコストが安くなると思っています。これは単純にインフラ環境や、それを取り巻くサービスがCloud技術によって安くなるからです。我々はAWSやGCPをもっと研究し、日々コストを下げるための勉強や努力を続けないといけません。
また、インフラと同時に成長しているDeepLeaningなどの活用に合わせて、動画の自動編集なども研究開発に取り組むべき分野だと思っています。今まで人が行っていたテロップ挿入作業や、趣味嗜好に合わせた広告提供など、PRISMとAI分野の組み合わせによって今までにない映像価値を提供できると信じています。

*後編【働き方編】はこちらからどうぞ!


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