瑕疵婚 前段1


エリュクスの王を継ぐのはマリュスで、わが夫ノリュスではない。
そのことに気づいたのは、すでに婚儀が整ってからだった。
カラダで攻めた。
私を手放せなくなるように。
父、母はとても心配したけれど、私はやりおおせると思っていた。
“気品”にも気を配った。
何度も何度も映像を見て、母女王の立ち居振る舞いを、まねてまねてまねつくした。
母女王は民間から入られた。
きっと私の味方になってくださると思っていた。
なのに、初めてお目にかかった時、母君は私を直視しなかった。

最近猿が人里を襲っているそうですね。

どういう意味?
どういう意味よ!

高位女官があとで教えてくれた。

畏れながら母女王様におかれましては姫様を、愛しくされておられません。

ショックだった。

マリュス太子はマリュス太子で、エヌレヌの貴族の娘を娶りたいとだだをこね、七年越し、エヌレヌ側が根負けして、受諾したのがこの秋だ。
私はその間に二度出産したが、二人とも女児だった。
正式に閨に入る前に三回△△している。
もったいないことしてしまった。
だから二女は本当は…

エヌレヌの姫が懐妊した。
おのこだという噂を聞いた。
高位女官が手配してくれて、エヌレヌの姫は外遊中に流産した。
本当におのこだった。
笑う。

さらに四年。
エヌレヌの姫がやっと再懐妊したものの、産んだのは女児。
うちの姫たちより器量も知性も劣る感じで、私はひそかに悦に入っている。
けれど所詮私たちはどちらも姫腹。
このままいけばマリュス太子のあとは、継ぐべきおのこがいな…いる。
わが夫、ノリュスがいる…
さらにこいつ、私に肉で籠絡されるだけあって、実はあちこちで火遊びしてる。
そういう女に男児ができたらどうするんだろう。
病気も怖い。
ほんっとさいってーのバカ男選んでしまった…


それでも地球は回っている