実現条件〔引っ越しました〕

シャランラルーのオレンジに応募してたけど、三次で落ちた。
結局面接は開かれず、大物俳優の娘に決まったのだ。
よくあること。
でも。
よくありすぎる!
滞空戦隊カックウジャーのときは歌手の娘、闇のゼロゼロのときはお笑いの娘。
ただでさえ子供番組減ってる、女子枠は男子枠より少ない、アニメのが強い。
実写特別少女になるのは、めっちゃ狭き門なのだ。

だからいつも言ってるじゃないか
僕の力を借りなって

世界一美しい私の幼なじみ・楠木ユウが、甘い笑顔で私に囁く。

あんたに何が出来るのよ!

いつものように怒ろうとする私の目を、ユウは深ーく覗き込む。

ロレクイシマタ
ヨクダタイ

と囁いた、そのとたん!

虹色の輝きが辺りを満たした。

魔法ウェア、魔法スティック。
振るだけで何でも出てくる。
自分の真上でくるくる振ると、ウェアが七変化する!
本物の!
魔法少女!!
だあああああっ!!

だけど。

私は気づくのだ。
私に美形の幼なじみはいない。
ましてそいつが魔法を使えるなんて!
出来過ぎじゃん!!

何でまた気づくかなあ。
君はほんとはなりたくないんじゃないの?

ええそう。
なりたくない。
魔法でなったんじゃ意味ないもん。

わかったよ。

魔法は解かれ、私は再び普通の少女に戻る。
戻って九枚目の願書を書き始める。
私は知っている。
本当の私が死んでることを。
シャランラルーのオレンジに決まった私は嬉しくて局前の道に飛び出し、車にポンと跳ねられた。
死にたくない。
私は必死で願い、必死で願ったためにこうなったのだ。

私は繰り返す。
応募用紙を書き、オーディションを受け続ける日々を。
叶ったら死んでしまうので、決して合格はできない。
でもなりたい。
堂々巡りの輪を巡る。
巡り続ける。
永遠に。
ユウはそれを見守り続ける魔界の見届け人だ。
私が違う選択をするまで、ユウもこの堂々巡りの世界を離れられないのだ。

私は次のオーディションに応募する。
応募書類を書いている間に、前回の記憶が消えてゆく。
ユウは今度はどんな関係で現れるのだろう。
願わくは、私と仲良く……


それでも地球は回っている