あとは神のみぞ知る〔蒸しエビさんに捧げる一作〕

めっちゃ走ったけど、どうしても洋介を抜けない。
女子単独連続1位でも、男子7位の洋介を抜けない。
恋人?
だから何?
あたしはあたしで本物の成果を得たいんだ!!
言いながら校舎階段にさしかかり、足滑らせる私を、支えようと手伸ばした洋介も一緒に・・・!

うーん。
あちこち痛い。
骨は折れてない。
捻挫もな、い・・・

足が違う。
手が違う。
胸がない。
いやあるけど、硬い、強い、引き締まった・・・

アレもある!!

ぎょっとして洋介を見ると、ウエア越しにおっぱいを、あたしのおっぱいを掴んでいた!

ヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイ!

叫んでその手をもぎ離す。
そのさまを保健の先生に見咎められた。

こら吉森!
女の子に掴みかかっちゃいかーん!

咎めたものの何かおかしいと思ったらしい。
あたしはわっと泣き出した。
吉森洋介の姿のままで。


吉森家。
夕食後。
あたしは洋介の部屋で茫然としてる。
夕飯のカレーはおいしかった。
洋介のままはあたしの前では彼を

洋介さん

って呼ぶのに、実際の呼び方は

洋ちゃん

で、ぱぱさんにいたっては

ボクチャン

と呼んでいたのにはびっくりした。
けどそんなことでびっくりはしていられない。
何せ男の子の体の中にいるのだ。
大きいのはまだしも、小さいのは支えないとどこへ飛ぶかわからないのだ。
まだキスもしてない相手のそれを支える・・・
衝撃だった。
この手で触ってしまった!!
キャーーーっ!

まてまて。
向こうは拭くのだ。
その部分を、拭く。
いやいや。
ウォシュレットを使うときの、当たり所による・・・
いやいやいやいや。
かっと頬が赤くなった。
あと。
帰宅途中。
強風でふわってまくれあがった女子大生のパラシュートスカート。
太腿までしかみえなかったのに、そこにいきなり視線釘付けになって、血が、わってソコに集まって・・・
あたし貧血になるかと思った・・・

男って!!!


第三階段にはね、もともといろんな伝説あって

不意に保健の先生の言葉が甦った。

いちばんシンプルなのが、

午後四時、男女で落ちると

ってやつ。
あなたたちのはそれっぽいね。

そんなしょっちゅうあるんですか!?

けっこうある。
これは解き方も簡単で


朝八時に尚人(なおと)神社の石段を落ちる、か。
怖すぎる。
四時の第三階段だけでも死にそうだったのに、石段って・・・
でもやらなきゃ、あたしずっと洋介だ・・・


夢を見た。
笠木奈緒子が洋介にコクってた。
そして洋介は言っていた。
ごめん俺、好きな人いるから・・・


肉体の記憶だろうか。
でも洋介のそれ、奈緒子に対して反応してなかった・・・・・


朝練あるって言って、早めに家を出た。
朝の勃起は痛かった。
それでもあと40分の辛抱。
男は男なりに大変で。
男なりに誠実で。


尚人神社の表鳥居に洋介、もとい、洋介入りのあたしがいた。
よおって上げた手、弱くしても、やっぱ男の仕草だ。
あと少しの辛抱。
万一もとに戻れなくても、コイツ誠実ってわかったし、私はけっこう幸せ者なのかもだ。


黙ったまま、あたしたちは鳥居をくぐった。
あとは神のみぞ知る。

それでも地球は回っている