キマジメの夏


生田目(ナバタメ)が読めない人けっこういて、生真面目(キマジメ)くん呼びされてるあたしの彼氏。
私はナバって呼んだり、下の名からヒデって呼んだり。
野球部エースで四番。
背も高い、顔もいい。
これで極端なキマジメさえ治ればねえ・・・なんて思ってるうちに、うちの学校、今年も甲子園キメた。

お祝いに、ブラバン部~あたしも所属してるノダ!~、演奏曲目増やすってがんばってるよ。

って伝えたんだけど、その日から、ヒデはどんどん気難しい顔に。

何でよ!

練習帰りの泥だらけの顔が、グランド横で膨れた。

Xジャパンの曲やるだろ。

え?
ああ、紅?

あんな金髪長髪の奴らの曲やだ。
それにあの、真っ赤っかの髪のやつ、あれもきっとワルなんだろ?

あたしは言葉を失った。
キマジメなのはこいつのいいとこだと思ってた。
けど・・・


結局うちのブラバンは、曲目から紅を外した。



決勝まで行った。
競り合って負けた。
相手チームのブラバンは、最後の最後に紅を演奏(や)った。
ヒデの最後の一球はすっぽ抜けで。

ああ。
HIDE。

ヒデ。
HIDEはもう死んじゃってるけど、めっちゃ赤髪だったけど、とってもとっても熱い、いい人だったんだよ・・・



あたしはもう、ヒデとつきあってない。
今はNKT、ノー・カレシ・タイムだけど、次のカレはぜったい、柔らか頭を選ぶつもり。
風はすっかりもう秋色だ。



それでも地球は回っている