回転焼きwar〔せきぞう、さんに捧げる一作〕


ちょっと変わった記録をみつけた。
日記のようだった。


奴らは突然おそってきた。
丸いからだ。
ずっしりと餡。
私に隙間なく餡を詰めても、ああはならない、なれない。
丸いものだけが正当で、鯛の形の私は異端。
私は売り場を追い出された。

私は普段から人気がある。
でもみんな、回転焼きたちの顔色を窺う。
今川焼き。
太鼓焼き。
大判焼き。
御座候。
名前は変わっても作りは一つ。
私だけが違う。
回転焼きたちは異端を許さない。
だから私はこうして、売り場から放逐されたのだ。
でも世界は、私を見捨てなかった。
かわいい魚のお菓子を守れ!
回転焼き屋台の若い連中までもが私の味方についてくれ、フランスでは、クロワッサン鯛焼きというものさえ売り出された。
日本のたこ焼き屋『シルバーオクトパス』もクロワッサン鯛焼きを扱い始めた。

結局私はそこから復権し、昔のように鉄板で焼かれるようになった。
回転焼きたちも無くなったわけではなく、みな各々に商いがある。
でも私は忘れない。
ある日突然私は追い立てられ、商品価値を奪われたのだ。
この仇は、いつか、いつかきっと・・・


文章はここで途切れていた。


それでも地球は回っている