決心〔じゅんみはさんに捧げる一作。大変お待たせしました〕


秀一郎は夫の父だ。
りんとした美丈夫で、英の父親じゃなかったら、ちょっと悪心起こしたくなるほどの・・・
コホン。
そんなわけで私は長らく秀サマと呼んできたのだが・・・
秀サマそろそろ末期となった。
お兄様のお年を超したと喜んでらしたのに。
僕は鬼子だから家族の病にはかからないんだよ、までおっしゃるようになってたのに。
余命三ヶ月か、もっと短い。
お医者様の宣告を聞いたら、秀サマ絶対落ち込んでしまう・・・
英と樹(いつき)と私は、話し合って決めた。
病名は明かさない。
ひたすら熱の出る病、ちょっと咳の出る病。
病名はトリスタス・タチバナ・シンドローム。
TTS。
解熱剤は使ってかまわない。

AIにも言い含めてあったので、秀サマはさいごまで、ご自身をTTSだと信じてくださった。


葬儀後樹が一人で泣いていたので、どうしたのって聞いたら、

お祖父ちゃん。
わかってたみたい。

小さなメモを見せてきた。
それにはこうあった。

英。
翔子さん。
樹。

わかってたけど気楽だったよ。
ありがとうな。

私は突っ伏して号泣した。



次は英の番なのか。
いつか樹もかかるのか。
英がちょっと泣き笑いで言う。

次はどんな病名にする?

僕は正直にいってほしい。

ああ、うちの男子たち。
私の愛する男子たち。
いいえ、あなたがたはかからない。
私が治療法見出すわ。
私明日から医学生。
絶対間に合わせてみせるから。
秀サマもきっと見守っててくれる。
泣くのは今日までよ。





テーマは「大切な人(家族や友達や周りの人達)だからこそ、嘘をつく。嘘だって笑顔や幸せになるんだよ」。
許される嘘、ものすごく難しかったです。

それでも地球は回っている