ハヌマンラングール


俺らは神の使い
裸猿どもはありがたがって
飯くれたり
果物、水も
くれるのが当たり前
当たり前だよな?
俺らの住まう山に入ってくんな
えっ?
食いもんだけ置いてとっとと帰れ!
邪魔だ邪魔だ邪魔だ!

蹴り飛ばしたら走って逃げやがった

おもしれえ

何人かで
競い合うように蹴りを始めた

じじい
ばばあ
がき
旅行者

ターンって飛んでって相手の体の上で一回転して蹴るとか

楽しい

若い女も蹴り放題だ



アノイという若い猿が、蹴ったこどもが死んだ
裸猿の態度が変わった
飯が置かれなくなった
細長い棒を持った奴らが山にうろうろするようになった
あれを振りかぶるのではなく目に当てる
すると棒の先が光る
すげえ音
棒の先にいた仲間が吹っ飛ぶ
吹っ飛んだ奴はキイキイいうまもなく動かなくなったり
キイキイいってから動かなくなったり
赤い、厭なにおいの水だらけになって動かなくなる
仲間が減って
俺らは山奥へ引っ込んだけど
裸猿は奥へ奥へと入り込んできた
飯もくれないからなんか探さなきゃいけねえ
シサはこどもうんだばかりで、あんまり動けないからそのぶんも俺がいく
木の実でも野菜でもいい
ひもじいなんて初めてだ

わき水まで来ただけで息が上がり、少し休んだ
急がなきゃ
まて
裸猿の匂いだ
俺より奥、え? 

シサたちのほう…??


振り向いた俺の耳に、ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! と、幾度もあの音が響いた!

キイイッ!
キイッ

シサの声と、

もっと小さな猿の声。

俺の子…

怒りがこみ上げる
とめどなく、激しく
裸猿の分際でえっ!
とって返す
棒が幾つも俺をねらってる
構わない
突っ込んで、二、三人突き飛ばしたところで直撃を食らった

顔半分

吹き飛んで


後は何もわからなくなった


神は言う

先に手を出したのはおまえたちだと

でも神よ

奴らはシサを

子を


アノイが蹴った子の親も

こんな思いをしたのだろうか?


俺には

わからねえ

それでも地球は回っている