瑕疵婚 前段3

エリュス・ゼエを生んだことで、私の周囲は賞賛と疑念真っ二つに分かれた。
賞賛は文字通り快挙の扱いで、疑念はなぜ“私が”産んだのだ、という意味合いだった。
男児が要るんでしょ?
ありがたがったらいいじゃない。
なぜ私が、は、お義姉様が石女だからじゃない。
有識者会議は女王は望まないのだし、ありがとうございますで良いでしょう?
違うの?

結局私は妊娠しやすいだけの話なんだよね…

それにしても、私はもっと喜ばれるかと思ったのに、何なのこの不評ぶり。
継承者名の“リュス”をつけたから?
それとも私が産んだから?

あんたが産んだからだよ。

悪友たちがわらう。

あたしの知り合いで、あんた大嫌いって言ってはばからない人いる。
野心丸見えだって。

野心って何よ。

野心でしょ。
“ご生母様”?


ご生母。
そ…れ……は………


なりたくないと言ったら嘘になる。
だって私何度妊娠したと思ってるのよ。
使い捨てにされなかったのは、ほんとに自分なりに頑張ったからだわ。
その努力、けつじつさせたいって思うのは当たり前でしょう??


だけど…


ルティ・エイレは実は賢い。
見た目で損をしてるだけだ。
うちのティエとモアナは上品に見える。
そこで得をしてるだけ。
泥遊びするルティ。
何でもさわってみるルティ。
みみずも亀もさわれるルティを、エヌレヌの姫が恥じさえしなければ、もっと人気は出たのだ。
私が母なら絶対そこを売りにしたわ…

でも私はルティの母ではなく、ティエとモアナとエリュス・ゼエの母なのだ。
そしてうかうかしているうちに、ティエは適齢期になっていた。
実はこここそが正念場だったのだ。


それでも地球は回っている