ピッチャー〔若葉都様。感謝を込めて１〕

さな、ピッチャーなんだ。
ゆまがぽつっと言った。
さなちゃんいいじゃん。
球速いし。
でもさ。
試合では私に投げろって。
監督。
なんで・・・って言いかけて、私は黙った。
肉体性別が男だからだ。
女性ホルモン投与は、子供時代は始められない。
うちの子は、監督にとっては『男児』なのだ。

試合。
さなちゃんがベンチにいる。
声出して。
声出して。
いいプレイには声援を。
敵にはヤジを。
監督指示で伝令にいき、バットを拾って戻り・・・

タイム！

うちの子がマウンドを降りてきて、監督の前に立った。

腕限界です。
さなと替わりたい。

滝藤！

さなと変えてください！

ゆまずるい(笑)。
こういう時だけ男の顔する(笑)。

ついに監督は折れた。

ピッチャー滝藤に代わって池谷！

さなちゃんはきれいに抑えた。
私は全員にアイスをおごった。
めっちゃ懐が痛かった。