ごめんなさい。でも書かずにはいられなかった

芦名。〔もちろんフィクションです〕



芦名はね
これからの宝です
大事にしていかないと

“天皇”とプロデューサーが話している。

星ちゃんだけですかあ?
あたしはあ?

新しい店の女将役のかたが、甘えた声を出すが、お二人は愛想笑いしかしていない。
“天皇”の視線がねっとり私を捉える。
身が震える。

何をされるわけではない。
可愛がられるだけだ。
しかも家族ぐるみ。
国民的アイドルだった奥様は、今もさばさばと、かわいらしい。
なのに。
“天皇”家に遊びに行くのもつらい。
取り込まれる感じ。

Tセウス。
のびのびやれた。
T内君はチャラいけど、あっさりいなしていいし、あとも引かない。
逆にTセウス終わるのが怖い。
新しいシリーズに入ったら、きっとまた…

星ちゃん!

「kてまり」女将だ。
何でこんなとこで遭う??


引っ張ってこられるようにお茶する。
私ハーブティー。
女将役さんは日本茶だって。
ここ、いろいろ置いてるんだね。

何で“天皇”にすり寄ったげないの。
チャンスじゃん。

チャンス…ですか?

チャンスだよう。
T本幸子なんてちょい犯人役からみるみるレギュラー入りだったじゃん。
雑誌記者おいしいじゃん。
設定も盛り盛り。
視聴率下がってきたとはいえ、まだまだあの人“天皇”だし。
ひっついといて損はないって!

損…
得…
損得。
お芝居の世界ってそういうもの?
私。
ちょっと疲れてる。
2、3シーズンご一緒しただけなのに。
相棒の人は平気なんだろうか。
ヒマか?の人は。
鑑識さんやめてったし、刑事さんは亡くなったし、捜査一課はトリオからコンビに変わった…

みんなみんな去ってゆく。
あの番組はそういう番組だ。
でも2、3シーズンのご愛顧で、卒業って言わせていただけるのか。
事務所の立場、悪くならないだろか。
私…


表で誰かがドアを叩いてる。
騒がれるとここが、私の住まいだと知れてしまう。
やめて、あら、マネージャー。
マネージャーが騒いでどうするのよ。
ドアロック解除のボタンを押す。
押すが、反応しない。
何で。
玄関行って鍵外そうとしても、ロック回らない。
レバーも下ろせない、というか、レバー、手指が『すり抜ける』。
これって。
もしかして…



室内を。
振り返る。


ドアの外では管理人さんの声がしている。


鍵持ってきました鍵。何も起きてませんよね!?



私は見る。
私を。
鴨居に渡したベルトを。
彼女は縊死した。
彼女は。



私だ。


それでも地球は回っている