生きる。


我が家には16才の雑種の犬、くーちゃんがいる。人間で言うと、100歳くらいになるのだろうか?

年の割には元気で、去年までは散歩中に軽やかに走ったりするほどだったのだが、急激に老化が進み、目は白内障になり、認知症の動きも見られるようになってきた。

そして突然、歩行もままならず、介護しなければいけない状態までなってしまったのである。


赤ん坊がそのまま大きくなったような、大変人懐っこい犬で、いつも人間を見る時の表情は何か言葉を発するような気配があった。

「ぼく、ここにいてますけど?」

「散歩そろそろ行きましょか!」

「お腹すきましてん」

といった具合に、アフレコが大変似合う犬なのだ。


でも臆病で怖がり、散歩中は気の合わない犬ばかりで吠えまくるので、毎度バトルになり、犬が苦手なわたしにとっては必死のパッチであった。リードを短く持ち、緊張しながら散歩していたことが、今となっては遠い記憶になっている。


くーちゃんの鳴き声をここずっと聞いていない。吠えることもできなくなってきている。食欲も体重も減り、今年の春に猫の「みかん」が20歳で老衰で亡くなったばかりである。ああ、くーちゃんもとうとうか、、と家族皆が覚悟した。


しばらくして、少しずつ体調が良くなってきた。

それから、である。

もうほとんど歩行困難であった状態が、足を引きずりながらも必死で歩き出し、散歩も少しの距離なら行けるようになり、何と言っても、餌を食べる時のがっつき具合が全盛期を彷彿とさせた。

くーちゃんの目に生命力が戻り、足を震わせながらも、しっかりと歩こうという意思に満ち溢れている。

くーちゃん、まさかの大復活を遂げたのだ。

今では何事もなかったかのように、庭の日向でくつろいでいる。

金木犀のあの甘い香りが漂い、庭の紅葉が色づきはじめた。





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