日舞ずっこけお稽古道中

日舞のお稽古が始まり、先日で六回目となった。

第一回目は扇子の開き方や持ち方もままならない、振りに関しても体がガッチガチ、手と足が同時に出てしまう始末、先生は優しく苦笑い。間違いなく先生を困惑させている。仕様がないのでわたしも一緒に力なく「たはっ」と笑うしかない。それでもひとつひとつ丁寧に指導してくださるので、血眼で先生の踊りを見る。お稽古は35分の待った無し一本勝負なのだ。家路に着いてからも繰り返し復習してみる。合ってるのか合ってないのかさえもわからないのだが。

第二回目も、第三回目もそんなかんじだった。

これは長い旅路になる・・空を仰ぎ見て、小石を蹴っ飛ばしたい気分だ。

しかしそんな調子だと自分が面白くないので、ずぶの素人が最初から完璧にできるわけはないのだから、ここはひとつ、頭を空っぽにして、出来ても出来なくても先生の踊りについていこうではないかと、振りを先先まで進めてもらうことにした。ディテールは後からや。

するとどうであろう。曲調が変わり、軽快なテンポになり、威勢の良い振りが始まった。捩り鉢巻きなんて振りが出てきたら、調子に乗って小躍りしたい気分だ。水を得た魚のごとく、体は軽やかになっていくではないか。

それまで頭を抱えてらっしゃった先生も、振り向くと、「もう一度いっちゃう?」とノリノリの笑顔である。先生がノッてきた。

先が見えなかった霞が消えていくように、目の前がうっすらと開けてくるようだった。

「とても楽しいです!」と満面の笑みを先生に向けると、「そうでしょ、楽しいのが一番よね!」と二人で笑い合った。

先生と一緒にめでたく花火でも打ち上げたい気分だが、いやしかし調子に乗りすぎるのも禁物である。まだまだ長い旅路、今始まったばかりなのだ。

ずっこけお稽古道中はつづく。






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