ずっこけPTA本部役員選出


毎年PTAの本部役員選出の時期になると、周囲がそわそわしだす。
年々免除者が増え、次年度の対象者は数人で、そのうちの一人が自分であると知っていたので、選出現場へ向かった。
委任状を提出し欠席して、誰かにクジを引かれて当たるとか、そんなの、いやだ。どうせ当たるなら、この手で引きたい・・!
もう心の中は、本部役員になった体でシミュレーションしていた。まあ、実際になっても、いろんな保護者や先生、学校のこと知れるからいいか、という境地にまで至っていた。

体育館に到着すると、前の方にずらりと並ぶ役員の方々。20人くらいいただろう。
そしてクジを引く対象者が座る椅子が並べられ、そこには誰一人も座っていなかった。
え!
どうやら対象者4人のうち、のこのこと出席をしたのは私だけで、後の方は欠席。つまり、数十人の役員にじっと見られながら、一人でくじ引きをしなければいけないのだ。
地獄!
隣に同じクラスの保護者のママさんが座り、彼女は対象者ではないのだが来てしまったのだと言う。
事情を話すと、キラキラとした目で「じゃあ、私見守りますっ!」と応援メッセージをくれた。他にも「なぜか来ちゃった」ママさん数人が後ろで、息をのんで見守ってくれている。「なんか、見てるこっちの方が緊張しちゃう!」と妙な盛り上がりを背後から受けながら、私は生唾を飲み込みながらその時を待った。

正面に役員20人近くが横一列で真顔で座っており、それに対して一人だけポツンと座っている自分が、無性におかしく思えてくる。なんか裁判みたいだし。これはコントなの、現実なの、ねえ、誰か教えて。
役員の一人が割り箸4本が入った筒を持って、申し訳なさそうに近づいてきた。ちょっと苦笑いだ。「では、引いていただけますか?赤い丸印が当たり、ということになります」
途端に周囲がざわつく。今まさに半笑いでクジを引こうとしてる私を、みんな息をのんで見ている。もう、なんならみんなも半笑いだ。静まり返った体育館。
「えいや!」
割り箸を引くと、赤い丸印はなかった。
その瞬間、「おおおおおお!」と静かに歓声が上がった。
後ろを振り返ると、見守ってくれていたママさんたちが笑顔で拍手していた。この一体感、なに。
安堵も束の間、補欠のクジも引かねばならなかった。今度は3分の1。
何も考えずまた「えいや!」と引くと、今度も空クジ。
また場内で「おおおおおお」と、どよめき。
これは一体、何の儀式なんだろう。

その後無事に役員が決まり、うちの学年の選出は終わった。そしてなぜだか拍手で見送られた。こんなに照れながら後にする選出も人生の中ではなかなかない。

帰り道、虹を見た。






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