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始まった。
朝が拓かれていく、アポロンによって。音のないファンファーレが耳に振動を伝え淡いオレンジのカーテンが波になり寄せてくる。
何も反射させない闇が包まれ光になるには漆黒を焼かねばならない。彼の右手は赤黒く焼け焦げている。翼の馬は主を護るため果敢に奔走する。

どれくらい待ったのだろう。 
日差しに照らされるビルの側面がゆっくりとアポロンの横顔になる。黄金が孔雀の羽を広げた。カッサンドラは詩を書きアドニスは一心不乱に赤い花を覗き込んでいる。彼はもう見えない。彼はもう見ない。
 
私は見ていた。
アポロンが夜の女神に抱かれぬために自らの両目を潰していたのを。まだ生ぬくい血に濡れた顔を拭いもせず微笑して駆け出すのを。瞼に残る滲んだ光の残骸。それだけを糧に。
漆黒たちは放心し慄きを止め棒立ちになっていた。媚びた目で仰臥しその太股を開いた。これからはひたすら千の夜を待つのだ蹄の音が聞こえるのをそれだけを。
すべてを肯定する光。彼の瞳の中で。
 
私もまだ行けるだろうか
ドアを開くとからだの重心が曲がって思える
ありがとう
芙蓉咲く夏の庭を忘れない
コンクリート スニーカー 色がない
無機質のなかの粒子達ただ眠っているだけだから
公園の砂場に託した砂時計は
鼓動に手を合わせ
滲むオレンジ色の
私の住む彼方へ

              (了)

アンビリーバーボーな薄給で働いているのでw他県の詩の勉強会に行く旅費の積立にさせていただきます。