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「禁忌のアリス」第二話 真っ赤な血の味の紅茶


#創作大賞2023  

第二話 真っ赤な血の味の紅茶

愛とはなんだろうか、もうわからなくなってしまった。
彼はベランダから落ちた後、どうなってしまったのだろうか。
この不思議な世界に一緒に落ちてしまったのだろうか。
でも、奥さんに話しかけたあの言葉を思い出した。
頭の隅にいつまでもはりついたままに、なっている。
「俺は、誘われたんだ、だから違うんだ!
助けてくれ!」
誘ってなんかいない。
でも当時の記憶を思い出そうとしても、霧がかかっているかのように思い出せない。
違うとはなんだろうか。
誤解だといいたいのだろうか。
誤解が解けたら奥さんと仲良くするのだろうか?
助けてくれとは、私は含まれていないのだろうか?
でも、ベランダで私に手を伸ばして助けようとしてくれた。
思考がぐるぐるした。

彼しか知らない、ただ好きなのは彼だけだったと思う。
でも、彼は私を愛してなどいなかった。
だから泣かない。
激しい怒りがこみあげてくるのを落ち着かせる。

「ハァ・・・」
深いため息が漏れる。
洋服は血まみれだった。
タコのお化けの後は、ゴブリンや蝙蝠などの奇妙な生き物たちに襲われ続けたからだ。

アリス「疲れたわ」
ウナギ「あそこにテイーポットがあります。お菓子もありますね。」
なんにもなかった草原にポツンとテーブルと2脚の椅子、お菓子にティーポットがボォンと現れた。
アリス「さっきみたいに大きくなったりしない?」
アリスはウナギの出したキノコを食べて大きくなって化け物を倒したばかりだった。
ウナギ「大丈夫だと思いますよ?」
アリス「思います、ね?」

ためらいもせず椅子に座り、温かい紅茶を入れ飲む。
真っ赤な紅茶で変な味が、するだろうと思った。
予想通り、血の味がした。
鉄剤のような栄養ドリンクのような味だった。
フルーツやクッキーの盛り合わせを用意されていた。
アリスは、ほおばって食べた。
クッキーはどこかなつかしいクッキーのおいしい味だった。

ウナギは私の目をまんまるした目でじっとみる。
ウナギ「アリスの心は凍っていますね」
アリス「欠如しているわ。だって、酷いことがあったんだもの。」
ウナギ「空虚にも見えます、目を開けれるといいですが。」
アリス「たしかに私は今、片目しかないわ、包帯ぐるぐるよ。」
ウナギ「視野が広く成ればいいのにという意味です。」
アリス「わ、私の視野が狭いっていいたいの?!」
ウナギ「わっ!怒らせるつもりじゃないですっ。」

ウナギはどぎまぎ慌てている。
これ以上、怒っても仕方がないなと思った。
だから、落ち着いて紅茶を飲み干した。
そして、ゆっくりとウナギに聞いた。
「どうして私はこの不思議の国に来たの?」
ウナギ「女王陛下がアリスを処刑するためです」
アリス「え?じゃあ、女王陛下のところにいったら、私は殺されちゃうじゃない」
ウナギ「死ぬとは決まってません、それに女王陛下はお困りの様子で・・・
とにかく会って話をしたいとのこです」
アリス「・・・?・・・ワケありってことね、いいわ、いくところもないし行ってみましょう。」

ウナギはいろいろな生き物と遭遇した。
私を殺そうとするものと出合って、逃げたり殺したりした。

私たちは女王陛下の元へ向かう。

私は思った。
元の世界に戻ったら、処罰されてしまうのだろうか。
彼はどうなるのだろう。
彼のしたことも許されたことではない。
でも、きっと彼がまた私を騙しても、奥さんに言い訳を並べて仲良くしても、私は彼を許してしまうだろう。
愚かなことに。
でも、きっとそうしてしまう。
そう判ると、自分が自分を嫌いになって、嫌になりそうだった。

イライラする私にウナギが話しかける。
ウナギ「嫌いな自分を許して自由にしてあげて。」
アリス「できない。私は私が嫌いだもの。」
アリスは夜空の月の下でキラキラと美しく照らされていた。

三話へ続く


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第3話 女王陛下の困りごと


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