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漫喫で「けらえいこ」に埋もれて死にたい

「あたしンチ」という漫画をご存知だろうか。
マンボウみたいな母にゆずとみかん。そしていかにも団塊世代な父。
ちょっと、というかかなり変わった母お手製のお弁当を持たされるみかんの苦悩や、ゆずが意外とモテるバナシ、無口な父が巻き起こすちょっとした騒動など、ほのぼのとしたタッチと丸みを帯びたキャラクターで描かれるその世界観が、小学校生活に少々疲れていた私にとっては癒しの一つになっていたと言っても過言ではない。

その昔、我が家は読売新聞を取っていた。
日曜日になるといつもの新聞に加えて、フリーペーパーみたいに挟まれてくるミニ新聞みたいなやつに「あたしンチ」が連載されていた。お父さんは家族の中では一番敬わなければならない存在なので、お父さんに先を越されていると

「よーみーたーいー」

とは言えない。なので

(うーーーーーーーーん、はーーーーやーーーーーーくーーーーーー)

と地団駄を心の中で踏みながら、その時間をやり過ごす。でも父はとっても優しいので、ほらよ、とその「あたしンチ」が載っている記事だけをよこしてくれた。優しい父め。ありがとうよ。

学校にて「新聞で自分の気になった記事を切り抜いて持ってくること」という宿題があった。その時自分が何の切り抜きを持っていったのかを忘れてしまったが、何処かの誰かさんが「あたしンチ」の漫画を持ってきていたらしく、それが教室の壁の目立つところに貼ってあった。
私はそれをもう何度も何度も家で読んだはずなのに、また貼ってある「あたしンチ」をじっくり読んでしまう。

何だろう。「あたしンチ」は人の目をついつい止めてしまう見えない力を秘めているのではないだろうか。あの丸っこいフォルム。見れば見るほどマンボウに見えてくる母。いや、あれは「サザエさん」の髪型をパクっているんじゃないかとも思えてくる。


一時街中や駅のポスターでいきなり「あたしンチ」の家族に会ってしまい頭の中で「♪じょおおねっつのあーかいーばーらー♩」という母の十八番が自動再生される。あっ、ちなみにアニメもやってたので、しっかりじっくり見てました。

あー、書いていたら読みたい。読みたくなってきてしまった。
あるギャグ漫画の単行本を集めていた時期があったけれど、漫画をコレクションするというのは地味にお金がかかるというもの。しかも収納スペースだってバカにならない。よって「あたしンチ」を大人買いするのは気が進まないので、もし読みたい場合は漫喫に限る。


でも漫喫は地味に高い。コスパは良いように見えて、人は意外とそこまで漫画をたくさん読めない。飲みものだって元を取ろうとしたらお腹がタプタプになってしまうもの。

生活カツカツな我が家から「あたしンチ」が読みたいがために、2000円ちょっとの出費は申し訳ない。

成人してすぐの私の夢は

「ビールのお風呂に溺れたい」だった。

だが今の夢は

「漫喫で、好きなだけ漫画の山に埋もれたい」

あーー誰かがうっかり落とした宝くじ拾って、それで2億円当選したりしないかな。

なんてずんの飯尾みたいなこと呟いてみるめがね。なのです。


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