【ショートショート】果たして二人の行く末はどうなるのだろうか
「先にお飲み物お伺いしましょうか?」
「…は、はい、じゃあウーロン茶でお願いします」
さきほどから僕の心臓は痛いほど波打っている。いよいよ彼女にあのことを伝えねばならない。
「お待たせ。遅くなってごめんなさい。会議が長引いてたしまって」
「いえいえいえ。大丈夫ですよ。僕もさっき着いたばかりですから」
冷や汗をおしぼりで拭う。時間がない。でもここは、焦らず確実に仕留めなければ。
よし、ここはSNSで話題になっているアレでゆっくりと…。
「思いもよりませんでした」
「えっ?」
思わずむせたウーロン茶がズボンにこぼれてしまい、大きなシミができてしまった。
お店に入って30分は経っただろう。
僕は完全に拘束されていた。
椅子に座らされ手足をロープでカッチガチに巻かれて。
「これはいったいどういう…」
「どうもこうもないわ」
「いや、意味が分からないんですが…」
しかし彼女は僕の話を無視して続ける。
「さあー、どこから責めようかなー。そこ?それとも…そ·こ?」
怪しげな仮面をつけた彼女は、今にも刺さるんじゃないかと思うぐらいの細い棒で、僕の体をつついてきた。
くそー。しくじった!入念に作戦を練ってきたというのに。
やっぱり彼女の方が一枚上手だったということだ。
…最高だ。
やはりマンネリ化してきたカップルには、SMプレーコースをおすすめするに限る。俺はモニターを見つめながらそう確信していた。
光悦の表情を浮かべる男と恥ずかしげにムチを振るっている女の部屋に向かう。終了の合図を告げるために。
「ご注文はいかがなさいますか?」
#たいらとショートショート
【643文字】
よろしければサポートを頂けると幸いです。 頂いたサポートは、自分や家族が幸せになれることやものに使わせていただきます。