考えない時間を追い風に
モデル業を始めてからこれまで、幾度となく大きな変化があったなと感じています。それは決していいものだけではなく、時にはどうしたらいいかわからなくて逃げ出したくなることもありました。そんなものにどう対処していたのか、今回は体型やメンタル面を中心に振り返ります。
◆365日キープする仕事
モデルは常に体型や肌のコンディションをベストな状態で維持しなければいけません。なぜなら、オーディションや仕事は何の前触れもなく、突然入ってくるからです。
何ヶ月後に〇〇のオーディションがあるからそれに向けて頑張ろう!なんてことができるのは、せいぜい開催時期が決まっているコレクション(ショー)くらい。大半の仕事は、「1ヶ月後に本番日で、明日がオーディションです」と、前日の、しかも夕方に言われることばかりです。前日に言われて準備できることなんて、浮腫みや肌荒れしないよう食生活を気にかけることくらい。もしその時点で理想の体型になれていなくても、ニキビができて肌荒れしていても、その時の自分で勝負するしかありません。だからこそ、自分がいかに常日頃から整っているかが大切になります。
はじめたての頃は、まずその「整っている」状態に自分を持っていくことが大変でした。そもそも普通の人間がモデル体型になることでも大変なのに…。モデルをやっていると、最初から痩せてたんでしょ、モデルに向いてる人って元が全然違うよねと見られることも多くあります。確かに、昔から痩せ型ではありました。骨格という意味ではポテンシャルもあったかもしれません。それでも、モデル体型とただの痩せ型とでは大きな違いがあるのです。
◆痩せ型からモデル体型へ
モデルを目指す前の私は、運動が大好き、代謝が良くて、舞台女優になるためにダンススタジオに週7で通っていました。大学でコンテンポラリーダンスを学び、合間にバイトをしながら夜はバレエやジャズ、シアターダンスのレッスンを1日に何回も受けるのが当たり前の、超アクティブ…というか、超熱中型の人間でした。
お陰さまで足の筋肉は発達しており、ふくらはぎはもちろん、太ももは結構な張り出し具合でした。途中まで間違った体の使い方をしていたこともあり、通常ダンスをやっている人よりも変な筋肉のつき方をしていたことも、より太く見えた原因かもしれません。
そんなダンス大好き人間が突如モデルを目指すことになり、まず最初に立ちはだかった壁が「体型」でした。自分は痩せ型ではあるけれど、太ももは前に張り出しているし、ヒップは事務所に入った後も言われ続けるくらい、当時理想とされていたスタイルの基準を満たしていませんでした。
1週間に一度は事務所に行って採寸をする時期もありました。その際、浮腫みの「む」の字も気にしていなかった私は、前日にラーメンを食べて、翌日見事に太ももが1cm以上太くなるという恐ろしい結果を叩き出したこともあります。さすがにその時は"やってしまった…!"と猛省し、そこからは「1年間でラーメンを食べていいのは1回だけ」と、しばらく極端なルールの下に生活していました。
恐らくポテンシャルを買ってもらって所属できたものの、本当の意味でモデルになることは、思った以上に大変でした。所属したからといって急に完成されるわけでもなし、最初から仕事をとれるわけでもないことを思い知らされたのです。
そこからは、痩せるためにとにかくがむしゃらに試す日々でした。パーソナルトレーニングに通ったり、セルライト除去のためエステに行ってみたり、ホットピラティスで筋膜を剥がしてみたり、小さいサイズのスキニーデニムを無理矢理履いてみたり(この身長で22inchを履いた時は、さすがに体が悲鳴を上げました…)、炭水化物抜きの食生活をしたり、逆にうどんダイエットをしてみたり。今となってはどの行動が響いていたのか、もはややってきたもの全ての結果なのか…さっぱりわかりませんが、なんとか見られる形になったのは、始めて3年以上経ってからだったと記憶しています。
またその少し前に、ビューティー(顔の寄り)の仕事が増えたことも大きく関係していました。束の間、体型について考える時間が減ったことで、「自分はダメだ…」と過度に自信をなくす状態を防ぐことができた上、撮影で人に見られる機会が増えたことで、体つきが徐々に整っていくのを感じました。
上手くいかないことに対して「なんで?なんで?」と落ち込むより、やることやってるし!と思って別のことに集中するくらいが、私には合っていました。
◆誰よりも自分を知る
なんとなく形になった体型を、今度は維持する期間に入りました。特に過度なダイエットをすることはありません。けれど、数年かけて自然と作り上げてきた太らないための習慣が、きちんと私を律してくれていました(詳しくは以前書いたこちらの記事で)。
人様のことはわからないけれど、自分の体はこれをしたら浮腫む、こういう物を食べたら吹き出物が出やすい、運動はこれくらいがベスト、などなど。体に叩き込まれたその感覚が、土台となって私を支えてくれていたのです。
こうして維持されてきた体型は、中々悪くないものでした。けれど、やはりオーディション会場や現場で他のモデルを見ると、私ももっとこうだったらいいな…という気持ちが芽生えることもあります。モデルを続けているうちは、ずっと生まれ続けてしまう感情かもしれません。
でも、身長や骨格でどうしようもない部分は絶対にある。だからこそ、いい部分を生かしながら頑張るしかない、自分の良さが必ずどこかでハマる瞬間があると思って過ごすしかありません。そうじゃないと、私はすぐに落ち込んじゃう笑
そこからまたしばらくして、あんなにヒップを減らせと言われ続けてきた私も、年齢とともに色々な部分が痩せていき、今度はいかに減らさないかという時期に入ってきてました。減らす→維持→減りすぎ回避(今ここ)という感じです。また難しそうなステージに入りました。私にできるのか…?
◆考えないことで前向きになる
ここまでやってきて思うのは、モデルって自分の体と真摯に向き合って過ごすプロだなということ。しかも一度土台を作ったら終わりではなくて、やってくる変化に対応しながら、少しずつ手を入れて調整していかなきゃいけない。
ずっと変わらなければいい、安定していたい…そう思う時もありますが、変化による発見や生まれる気持ち、関係性などで再び自分の中に新しい風が吹くと、それもまた嬉しかったりして。崩れていくもの、新たに得るものを同時に見ながら、そこに自分の気持ちの折り合いをつけながら(これが難しいんだけど、、!)続けていく必要があるんだと思っています。
変化の時期は、今まで通りにいかないことばかりで、自分が悪いのか?何も成果が得られていないのでは?これからどうなる?と不安に思うこともたくさんあります。だけどそこを越えると、また景色が変わっていくんじゃないか…近頃はそんなふうに思えるようになりました。今は永遠に感じられる数ヶ月も、人生で見たらほんの一瞬です。
だから、何かをやる上で目標を立てることももちろん大切だけれど、続けること自体を目標にしたっていいんじゃないかと…これは正しく、私自身に対する声掛けでもあるのですが。上手くいかないことや、目標が定まらないことに焦ったり悩んだりして心が揺らぐよりは、やれることをやりながら、まずは進み続けてみたらいいんじゃないかと思います。持続することって、それだけで本当に体力のいる、凄いことです。
考えるのももちろん大事。だけど、時には考えすぎないのも一つの手。
noteも久しぶりの更新になってしまいましたが、できる限り書き続けてみて、この先に何があるのか、はたまた…とにかく楽しんで更新していきたいと思います!
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