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とことん楽しむと世界は広がっていく

NYで初めて髪色を染めたことがありました。染めても茶髪くらいしか経験のなかった私が突然の、レインボーカラー。今回はそんな貴重な髪色になって過ごした数日間のお話です。


◆レインボーカラーのマッシュルーム

ヘアカラーをした理由は、お仕事でした。内容は、NYでは名の通ったヘアサロンの広告撮影。サロンに所属する各ヘアスタイリストに1人ずつモデルが割り当てられるというスタイルで、私の担当はオーストラリア人の陽気な男性でした。

彼との初顔合わせは撮影の2日前。この日は準備日として設けられており、撮影に向けそれぞれのモデルのヘアをカラーリングします。何の色に染められるのか知らずに行った私は、当日聞かされてびっくり。レインボーカラー…!?その日は1日がかりの作業になりました。

まずはブリーチで髪の色を抜く作業。黒髪の私は、1回では完全に脱色することができず、2回ほどすることに(これが後で大変なことになったのですが…)。

ブリーチを2回施した直後

このハイトーンの金髪もすごく格好良くて、ここから染めるのが勿体ないくらいでしたが、彼の腕の見せ所はここから。全体にグレーを入れ、さらに部分的に赤や緑、青などのカラーを入れながら細かい見え方を調整していきました。

そして、ついに夕方。綺麗なレインボーマッシュルームが出来上がり、彼も私も大満足。「じゃあ翌々日の撮影でね〜!」と嬉々として別れました。

◆臨機応変なNYの現場

さて1日空いて本番日…と書きたいところですが、なんとその中日なかびには別の仕事が入っていました…!

実はヘアカラー完了後すぐに、セルフで写真を撮って送るよう事務所に言われていました。それは翌日の撮影のため。
本当にこの髪色で大丈夫なのかをマネージャーに聞くと、どうやら明日のヘアスタイリストが黒髪のウィッグも用意してくれたらしく、全く問題ないとのこと。

そもそも、何色になるのか前日夕方までわからないモデルに決定を出すなんて中々ないことだと思うので、そういうNYの臨機応変な対応に驚いたのと(私はすごくハラハラしていたけど、マネージャーはけろっとしていた笑)、事情があっても自分を選んでくれたことがとっても嬉しかったです。

そんなやり取りをして迎えた翌日。この日は音楽ストリーミングサービスの広告撮影。
スタジオに到着し、かぶっていたキャップを取ると、ヘアスタイリストの女性が一言「とってもいいじゃない!」と。とりあえず他のクルーに見せようということになり、すぐにセットへ。フォトグラファーや監督たちも皆OKを出してくれました。

すごく柔軟な現場だな、、と半ば驚いていると、「実は照明に緑と赤を使いたくて、黒髪だと光を吸収してしまうから、どうしようかと悩んでいたところだったんだ。そのヘアカラーだとすごく助かるよ!」とフォトグラファーの彼がOKの理由を説明してくれました。

もしかしたら、本当にそういう事情もあったのかもしれませんが、わざわざ言葉にして伝えてくれたことで、私もそわそわとした気持ちを抱え続けることなく、安心して撮影に臨むことができました。そんな気遣いをさらっとしてくれた彼には、本当に感謝しています。

この日は踊ったり回ったり、とにかく音楽を聴きながら楽しんで動く!というテーマ。何度も踊って汗だくにはなったけれど、彼を筆頭とするあたたかいチームと仕事ができたお陰で、笑顔のあふれる1日になりました。

仕上がりはこちら。

そしてその翌日。ヘアサロンの撮影も無事に乗り切ることができました。

こちらは前日のスタジオ撮影とは打って変わって、極寒のロケ撮影。3月末というまだまだ寒いNYで、ジェットヒーターという強力な援護と(冬の極寒撮影にあると神様のように見えるアイテム!)、これまた担当ヘアスタイリストを筆頭とするあたたかく賑やかなチームのお陰で(ここのサロンの人たち、本当に陽気な人が多かった印象!笑)、こちらも楽しく撮影できました。

◆役得なピンチヒッター

大きな二つの仕事が終わり、あと数日で黒髪に戻る。そんな残りわずかなレインボーライフで、またもや撮影の機会がやってきました!

その日は休日で、住んでいたブルックリンから中心地のマンハッタンへと一人で遊びに出かけようと思っていた日。朝から早々と準備をして電車に揺られていました。

すると、以前仕事で一緒になったメイクアップアーティストの友人からメッセージが。

「今日何してる?もし空いてたらマンハッタンで撮影しない?」と。

実はテストシュートで呼んでいたモデルが時間になっても来なかったらしく(NYではこういうことが日常茶飯事だったな。。)、でもせっかく準備したから撮影したいとのことで、急遽モデルを探していたらしいのです。

「今、髪がレインボーなんだけど大丈夫?」と送ったら、全く問題ない!とのこと。ちょうどマンハッタンに向かっていたし、これも何かの縁だと思って引き受けることにしました。

おそらく当初イメージしていたのとは全く別物になってしまったんだろうけど、撮影は終始和やかに進み、私にとっても貴重なレインボーヘアの作品が増え、思わぬ収穫となりました。

そして何より嬉しかったのは、こうして出会ったクルーたちと、その後プライベートでも交流するような仲になったこと。NYで出会い、日本に帰国した今でもたまに会っては近況報告する。そんな繋がりが私にとっては他の何にも変え難い、とても大切なものになりました。


そして、この後さらにもう1本テストシュートをすることに。

こちらはまた別チーム。以前から知り合いだった方が繋いでくださり、スポーティなものが撮りたいという私の希望と、彼ら彼女らが撮りたいものを撮るという贅沢な撮影。レインボーカラーも活かしつつ、ウィッグを使ったものもあり、1日でまた全く違う作品たちが出来上がりました。

和気あいあいな撮影メンバー

◆面白そうなことに飛び込む

1つの仕事のために染めたヘアが、思わぬ形で使われたり、友人や面白いチームとの素敵な出会いがあったりと、様々な出来事を運んできてくれました。

その期間、わずか7日。体力的には中々ハードだったのかもしれませんが、当の私はそれよりも「面白いことがどんどんやってくる!」というポジティブな感情の方が勝っていたようで、疲れを感じたという印象が一切記憶に残っていません。レインボーカラーになることに驚きはしたけれど、抵抗なく受け入れて楽しんでいた自分を褒めてあげたいです。7日間限定カラーで予想以上の思い出ができました。

でも、実は弊害も。。黒を抜くために2回ブリーチしたことで、1ヶ月間は頭皮が焼けるように痛くなりました(アメリカは薬剤の量が多いらしく)。。加えて、髪は指が通らないくらいギシギシに。。

そんな状態で、またヘアカラー必須のオーディションが入ってしまったときには、マネージャーに頭皮の事情を話して、さすがに断りました。これ以上やったら頭が爆発してしまいそうな気がして笑。

そんなメリットデメリットのどちらも大きいレインボーヘアでしたが、相対的に見ると、やっぱりやってみて良かったなと思います(多分、どうしても嫌なら断ることもできたはず)。やって得るものの方が圧倒的に多かった。

自分に何が似合うのかは、やってみなければ絶対にわからないし、やらないまま終わったら、私はきっといつまでもうじうじ考え続けてしまう。

「やったら絶対に何かしらがプラスで返ってくる」

もはやそう思って物事を進めると、何でもプラスになるような気さえします。そんな飛び込む勇気を持つことの大切さも、このレインボーヘアが教えてくれたことの一つかもしれません。

貴重な写真の数々(もちろん自撮りもしたけど笑、しっかり作品としても残っていることが、後々見たときにすごく嬉しかった!)、そして素敵であたたかな人たちとの出会いがあった数日。あれがたった7日間で起こったんだと自分でも驚くくらい、濃密で楽しい時間でした。

たった一週間、されど一週間!
人生において貴重な時を過ごしました。

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