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✲*゚2.片割れ

✲*゚2.片割れ

「あっつい……」

汗が止めどなく溢れてくる。
お気に入りのTシャツは既にぐっしょりと濡れ、肌に張り付いていて気持ちが悪い。

日差しはさらに強さを増して、俺の後頭部へと照りつける。くそっ、帽子も被ってくるべきだった。

ずいぶん登ってきたはずだが、さっきから辺りの様子が全然変わらない。ひたすら川沿いに北上してきたが、すでに上流の方だ。両岸には森が広がっており、蝉が忙しなく鳴いている。お前らも大変

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✲*゚1.泣きボクロ

✲*゚1.泣きボクロ

午前四時。

窓の外で鳥たちが鳴き始めた。
カーテンの隙間から、ゆっくりと白い光が差し込み始める。

机の上には飲みかけのペットボトル。パッケージはローソンの安いジャスミン茶だけど、中身はただの水道水。それから読みかけの文庫本と、描きかけのスケッチブック。どれもこれも中途半端。

部屋が明るくなるにつれて、それらの輪郭がはっきりしてくる。
あたしは布団の中から、段々と明るさを増していく自分の部

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